ページ番号1001953 更新日 平成30年2月16日

FLNGflng
英語表記
Floating Liquefied Natural Gas
分野
その他

 広義には洋上におけるLNGの液化設備および再ガス化設備全般を差す。狭義には洋上にて液化・貯蔵・出荷を行うLNG-FPSO(Floating Production, Storage and Off-loading system)を差すこともある。
 LNG-FPSOでは、LNG貯蔵能力を有する船もしくはバージ上で、海洋ガス田から生産された天然ガスの不純物除去および液化を行いLNGを生産・貯蔵し、輸送用のLNG船へLNGを出荷する。陸上に液化プラントを建設する場合と比較して、海洋ガス田から陸上までの海底パイプライン敷設を削減できることや、沿岸部の開発を伴わないため環境負荷を低減できること、ガス田開発とは異なる国や地域で
LNG-FPSOを建造して現地へ曳航できるため労働者確保が比較的容易であること等の利点を有する。また、液化プラントの移動が可能なため、従来は開発対象とならなかった中小規模の海洋ガス田(3兆立方フィート以下)の開発手段としても有力視される。対象となり得る中小ガス田は、アジア・太平洋地域にも数多く存在している。現時点ではLNG-FPSOは構想・開発途上で、実例はない。石油やLPGのFPSOが既に実用化されているのに対して、洋上の揺れ環境下における不純物除去や液化、また約-160℃の極低温であるLNGのLNG船への出荷などを安全かつ確実に行うことが開発課題として挙げられる。液化については、陸上基地で主流のプロパン予冷混合冷媒(C3MR:Propane Pre-Cooled Mixed Refrigerant)方式ではなく、予冷にも混合冷媒を用いてプロパンの保有量を低減して安全性を高めたDMR(Dual Mixed Refrigerant)方式や、冷媒に不活性ガスである窒素のみを用いる窒素エキスパンダー方式などを採用し、安全性向上とともに機器数削減により限られた甲板上スペースを有効利用することが検討されている。また、気象海象条件が荒れた場合の停止・起動が容易な方式であることも、操業期間中全体での生産性向上に寄与する。貯蔵設備に対しては、生産中に任意の液位での貯蔵が必須であることから、船体の揺れとLNG液面の揺れが同調してタンク内壁に過大圧がかかるスロッシングを防止することが必要となる。出荷についてはLNG船を横付けし、ローディングアームを介して行う方式が現時点では主流であるが、気象海象条件の厳しい海域での適用に向け、LNGフレキシブルホース等によるタンデム出荷に向けた開発が進められる。
 広義のFLNGでは、洋上での再ガス化設備を含むが、FSRU(Floating Storage and Re-gasification Unit)やSRV(Shuttle and Re-gasification Vessel)がある。FSRUでは再ガス化装置を搭載し、LNG貯蔵能力を有する船を洋上で固定し、他のLNG船からLNGを受け入れる。FSRUにて再ガス化した天然ガスを、陸上のパイプラインへ送り出す。SRVは他のLNG船からのLNG移送は行わず、液化基地で搭載したLNGを受け入れ地点まで輸送し、甲板上で再ガス化して陸上のパイプラインへガスを送り出す。アメリカ、イギリス、ブラジル、アルゼンチンで実例がある。陸上に受入基地を建設する場合と比較して、沿岸部の造成費用の削減や環境負荷低減といった利点の他、中古のLNG船をFSRUやSRVに改造することで工期削減やコスト低減の利点もあり、今後も同手法によるLNG受入は増えることが見込まれる。

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(大野 泰伸、2009年5月)