ページ番号1001962 更新日 平成30年2月16日

Institut Francais du Petroleinstitut francais du petrole
英語表記
Institut Francais du Petrole
略語
IFP
分野
組織

フランス国営石油研究所。
石油エネルギーに関する技術革新のため研究開発、専門家の養成、情報の収集・提供を行う非営利団体として設立され、IFP と略称される。1973 年以後はフランスのエネルギー資源確保を第一次的な目的とし、埋蔵量確保のための新地域の調査、原油回収率の向上、深海・北極海など限界地域や重質油、タール・サンド、オイル・シェールなどの技術的・経済的な開発・研究に重点を置いている。研究開発部門として探鉱・開発、精製、石油化学、応用化学と石油産業全般にわたっている。
(旧用語辞典より)

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 1944年にIFP(Institut Francais du Petrole:以下「IFP」)はフランス石油産業の技術向上のため研究・開発とエンジニアの訓練を行う研究・開発・教育訓練機関として設立された。このため、大きく研究・開発部門と教育訓練部門に分かれている。 
 現在、IFPのミッションは拡大し、環境・輸送・エネルギー分野におけるより効率的・経済的・清浄(クリーン)かつ持続可能な素材と技術の開発を目的としている。IFPは、長期的観点から公共部門での人材育成と産業に対する革新的技術の提供をめざしている。
 IFPの全人員は1,745名で、1,067名が研究者(管理職、技術者)であり、管理者レベルの技術者の概ね半数については博士号を有している。

1.研究・開発部門
(1)Technology Business Units
 研究・開発では、下記の3つのTechnology Business Unitsが、研究開発プログラムを策定し、実行している。また、このUnitで産業への技術適用可能性について調整
している。
・探鉱―生産
・精製―石油化学
・駆動系(自動車等)のエンジニアリング
(2)Research Divisions
 現在、IFPにはResearch Divisionが11グループあり全グループが結集して、専門的科学技術を発揮できる体制になっている。高度な科学的技術水準と研究結果の質とその維持を保証している。また以下の広い分野のバランスについても保証している(IFPではその豊富な人材から、地質・地化学、物探、油層工学、精製エンジニアリングにおいて、実際の研究・開発業務をin-houseで行うこともあるが、主として外部(国内、国外の石油、自動車業界等)との共同研究という形をとる場合が多い)。
・基礎的技術と技術の適用
・経験的アプローチとモデル化
・内的・外的パートナーシップの実施作業
 IFPの強みはこの統合的構造のもとで産業をにらんだ実用的研究と基礎的研究を結びつけられるところにある。IFPはエネルギー・輸送・環境の分野において世界でも有数の研究開発センターである。IFPはその組織の性格上から特許取得を志向しており、現在までに4万を超える特許をフランスおよび世界で得ている。そのうち、1万2,652の特許については現在も効力のある特許となっている。この特許の活用はIFPの子会社ISIS(International du Services Industriels etScientifiques)が持ち株会社となっている各分野の専門企業(Technip、CGG、Geoservice等)の活動を通じて関係業界で活用されている。現在、IFPは、以下の五つの戦略的研究を優先事項として実施中である。
(1) 温室効果ガスに対抗するCO2の捕捉・輸送と地下貯蔵
(2) バイオマス、天然ガス、石炭そして水素を対象とした輸送燃料の多様化
(3) 省エネで環境に優しい自動車の開発
(4) 化学・精製技術を用い大容量の環境に優しい輸送燃料と合成化学製品の生産
(5) 石油・ガスの未開発埋蔵量の探鉱と開発のために必要な発明と技術の提供(より遠く、より深く、より効率的、より長期に利用可能な)
 このうち、(5)についての最近の主な研究状況として、以下の事項が挙げられている。
・中東型の断層(ネットワーク)対象のキャラクタライゼーションの実施
・Totalと協力したアンゴラ大水深鉱区Girassolのモニタリングスタディー
・Schlumbergerの協力で生産予想に関する油田の不確実性管理のためのソフトウェア(Cougar)を販売
・CO2の封入ケースも含んだ非在来型油田の開発シミュレーション開発
・Totalと協力してで地下5,000m以深の掘削による生産性向上のための研究(アルジェリアのSonatrachのBerkine basinの評価にも使用)

2.教育・訓練
 IFP は、IFP School ( ENSPM Formation Industrie:Ecole Nationale Superieure du Petrole et des Moteurs=1954年設立。以下「スクール」)において石油・ガス産業及び自動車産業に関し、理・工学系卒業者を対象とした専門教育・訓練を実施している。
 スクールの教育・訓練実施体制は、常勤の教授が40名、講師が400名(関連産業界から派遣)、他に100名以上のIFPの研究エンジニアとなっている。学生は、1955年~1985年117~154人という状況から、近年は、1995年304人、2005年524人と急増している。このうち約50%が外国人で40カ国以上から参加している。また、50~70におよぶ企業(BP 、Cepsa 、Eni 、ExxonMobil、NIOC、PDVSA、Pemex、Petrobras、Repsol YPF、Shell、Schlumberger、Saudi Aramco、Sonatrach、Total、Valero、他化学、自動車会社)が学生の60~80%を派遣または研究に補助を行うことにより助成しているとのことである。
 プログラムは、フランス国内、国外で以下のように実施されている。
(1)フランス国内
・修士号特別プログラム18(内8は英語)
 毎年450名の卒業生(Industry Oriented( 英語あり)370名、 Research Oriented 80名(仏語のみ))を出している。プログラムにより若干異なるが探鉱、石油工学、プロジェクト開発、精製、石油化学、内燃機関、経営学、石油経済学に関する講義を行っている。
・博士号取得プログラム
 150名の博士履修生受け入れが可能な施設を有している。現在、55名が受講中である。また、60年の歴史での博士論文は1,000にも及んでいる。
・対外セミナー
 企業等に就業中の技術者に対し、教育・訓練のために毎年1,000コースを実施している。
(2)海外
・インターナショナルプログラム
 スクールとパートナーシップを結んだ国(アルジェリア、アンゴラ、イラン、ナイジェリア、マレーシア、ロシア)で、毎年100名程度の受講生を対象に実施している。
・大学との提携
 スクールは、米国(Colorado, Oklahoma, Texas A&M等)、英国(Imperial)、ロシア、カナダ、ノルウェー、フランスの多くの大学とも提携し、スクールと提携大学双方のディグリー(学位)が得られるジョイントプログラム等を行っている。
 上記のプログラム修了者の就職率はほぼ100%で、毎年50カ国の80を超える企業に就職している。この結果、現在では100カ国を超える国に1万1,000人の卒業生による人材ネットワークを築いている。

3.情報提供サービス
 IFPは、エコノミクス・技術・科学分野の第一級の情報を政策決定者、科学コミュニティ等に提供するためにインフォメーションセンター(図書館)を設置している。8万冊の蔵書と1,100の定期刊行誌の閲覧が可能となっている。最新の研究開発についてはその概要を適宜紹介するため、オンラインあるいはCD-ROMによるデータ提供も実施。205の出版物、国際科学ジャーナル152は上記ISISのデータベース上に公開されている。この他、Oil & Gas Science and Technologyを隔月誌として発刊している。

4.運営経費
 IFP全体の運営経費は2億9,940万ユーロで内訳は、国家予算から1億6,750万ユーロ、ソフトウェア等の売上げ収入および特許料から9,840万ユーロ、子会社等(Technip等)の配当から2,660万ユーロとなっている。国家予算については、消費税の石油製品(軽油、ディーゼル、ガソリン)に係る税金の一部が充てられている。

5.管理組織
 スクールの管理組織は、以下のように、Board of Directors → Advisory Board → Executive Committeeとなっており、アドバイザリーグループとしてScientificBoardを有している。
・Board of Directors:14名
 関係業界代表 9名(Total、Shell、Gaz de France、CGG-Veritas)とIFP社内代表 2名および政府代表3名(産業省、大蔵省、教育省)で構成されている。
・Advisory Board:17名
 産業代表9名(Shell、Total 2名、Gaz de France、Schlumberger、CEPSA、BP、Technip、ルノー)と有名大学および研究機関代表の4名ならびに卒業生代表の4名(シーメンス、プジョー、Total、Essoで勤務中)で構成されている。
・Executive Committee:13名
 General Managementが3名(Chairman&CEO、執行副社長 2名)、Business UnitsのDirector 5名(探鉱・生産担当、精製化学担当、エンジニアリング担当、教育・訓練担当、産業開発担当)およびExecutive Member 5名(HR・科学・金融・Lyon部署・戦略的使用(deployment)担当)により構成されている。
・アドバイザリーグループとしてScientific Board:15名
 フランスを筆頭に英国、ノルウェー、イタリア、ベルギー、オランダ、米国、ドイツの大学教授他教育訓練機関関係者によって構成され、研究開発プログラムの策定や実施状況について学術的見地から助言が行われている。

もっと石油を、もっとガスを、そのためにもっと熟練技術者を
(石油・天然ガスレビュー、2008.5 Vol.42 No.3)


(池ヶ谷 清貴、2009年11月)