国際石油会社と国営石油会社の協調 ~ TotalとQPIの事例 ~
レポートID | 1003998 |
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作成日 | 2010-04-26 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
分野 | 企業基礎情報 |
著者 | |
著者直接入力 | 宮本 善文 |
年度 | 2010 |
Vol | 0 |
No | 0 |
ページ数 | |
抽出データ | < 短 報 >更新日:2010/04/26 調査部:宮本善文 フランスの大手石油会社(Total)とカタールの国営石油会社の海外投資会社(QPI)が、ジョイントベンチャーを組成し、アフリカの上流事業などを実施することになった。 ・国際石油会社と国営石油会社の協調 ~ TotalとQPIの事例 ~ ・ 過去、国際石油会社が産油国の国営石油会社と組み、その国で操業するケースはいくつか存在するが、第三国に投資するものは珍しい。 ・ 産油国の国営石油会社は、ポートフォーリオの分散と、自国の若者に知識と技術を習得させようとしている。 1. はじめに 2010年3月下旬、石油業界紙はTotalとQatar Petroleum International (QPI)が戦略的パートナーになるとした覚書(MOU)を締結した、と報じた。QPIはこれまで10件以上のMOUを国際石油会社(IOC)などと締結しているので(末尾の表参照)、同じような覚書が増えただけなのか、あるいは、Totalと強い絆で結ばれたのかについて現段階で判断することは難しいが、国営石油会社(NOC)と国際石油会社との関係を考える上で参考になると思われるので、レポートする。 MOU: Memorandum of Understanding IOC: NOC: National Oil Company International Oil Company 2.覚書の内容 TotalとQPIはプレス発表をしていない(2009年4月20日現在)が、複数の報道は以下の内容を伝えている。 ・ MOUに調印したのは、TotalのCEOのChristophe De Margerie氏と、カタールの特命担- 1 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 桝蜷b(Minister of State for Energy)のMohamed bin Saleh al-Sada氏(注)1。首相兼外相のHamad Bin Jassim Bin Jabr Al-Thaniが同席している。 ・ TotalとQPIはjoint ventureを設立する。(注: 1つの鉱区において別個に権益を保有するのではなく、両者が出資する会社が権益を保有するものと想定される。) ・ アフリカ(特に西アフリカ)における石油、ガス、石油化学、精製事業での機会を探す。 ・ 石油上流事業は探鉱案件でなく、生産案件。 ・ 投下資金額、資金負担割合などの情報は明確にされなかった。 .MOUを締結する目的 3QPIとTotalは、MOUを締結する目的を発表していないが、以下のような目的があると考えられる。 1) QPI (QPIは、国営石油会社 Qatar Petroleumの海外投資会社として、2005年9月に設立された。設立目的は、ポートフォーリオを分散、すなわち、カタールのガス事業だけでなく、海外において石油・ガスの上流、中流、下流の全部門に進出することである。また、カタール人を育成し、知識・技術力を獲得することも課題となっている。QPIはこれまで締結したMOUをみると、地域を限定したり、下流事業を実施するためのMOUが多い。(末尾の表参照) Totalとアフリカの上流事業を実施した背景として、①既にTotalとQPIはLNG事業、パイプライン事業、精製事業などで関係があることに加え、②2008年4月に、Totalが所有していたモーリタニアの探鉱鉱区の権益20%をQPIにファームアウトして共同で探鉱事業を実施していることがあげられる。 1 (注)Abdullah Bin Hamad Al-Attiyah副首相兼エネルギー・工業相の職名は、「Minister of Energy and Industry」。Mohamed bin Saleh al-Sada氏のそれは、「Minister of State for Energy and Industry」。 http://www.mei.gov.qa/portal/page?_pageid=36,250133&_dad=portal&_schema=PORTAL なお、これまでのMOUと違い、今回のMOU調印式にはAbdullah Bin Hamad Al-Attiyah副首相兼エネルギー・工業相が同席、あるいは調印していないことに注目。 - 2 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 2) Total Totalの究極の目的は、カタールの埋蔵量にアクセスすることであると考えられる。カタールではガス開発が一時停止(モラトリアム)されているが、同社はモラトリアム解除後を念頭においているはずである。 Totalのイラクとイランにおける事業は、成果が上がっていない。イラクの入札ラウンド(2009年12月実施)では、4鉱区に応札したが落札できたのは1鉱区(それもノンオペレーター)だけである。また、イランではガスプロジェクトを追求していたが、国際的なイラン制裁問題があるので、投資できない状況にある。 以下のとおり、コンゴ共和国のプロジェクトを実施すると想定される。 .カタールとコンゴ共和国の関係 42010年3月28日、カタールの首長(emir)であるSheikh Hamad bin Khalifa al-Thaniはコンゴ共和国の首都ブラザビルを公式訪問し、協力に関する5つの書類に調印した。その中には、コンゴ国営石油会社(SNPC)とQPIの戦略的協力関係に係るMOUが含まれている。 同席したカタールの特命担当大臣(Minister of State for Energy)である Mohammad al-Sada は、「QPIは既にモーリタニアの探鉱事業をTotalと実施しているし、アルジェリアの石化事業を検討している。次のステップは、QPIとTotalがコンゴのプロジェクトに調印することだ。さらにアフリカ全土でプロジェクトを検討する」---と発言している。 なお、カタールとコンゴ共和国が国交を樹立したのは2000年4月であり、カタールの首長が訪問したのは今回が初めてである。 鉱区の権益を売買して移転するには、その国の承認が必要である。その意味で、国と国と- 3 - .日本政府、日本企業へのインプリケーション TotalとQPIの案件から、我々は2つのことを学べると思われる。 51)ホスト国への挨拶 (Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 フ関係が重要である。上記ケースでは、カタールの首長がコンゴ共和国を訪問して露払いをしたと考えることができる。 日本の会社がアフリカなどでファームインする方法で権益を取得する際には、日本の政治家あるいは高官がその国を訪問すると、スムーズに政府承認を取り付けることができる可能性が高くなると考えられる。 (2) NOCとパートナーになる意義 石油会社が探鉱・開発事業を実施する場合、1社で実施せず、どこかの会社と組むことになる。どこの会社と組むかが問題だが、NOC と組むメリットは、その国との関係を強化できることである。たとえば、A国で鉱区を保有しているX社が、A国のNOCとジョイントベンチャーを組んで人材を育成することに貢献することで、同国にとってX社が不可欠の存在になるようにすれば、X社がA国で保有する鉱区期限の延長の承認をとり易くなる。- 4 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 年月 相手 目的 出典2007/5 チュニジア政府 チュニジアとスリランカで製油所建設 2007/5 Occidental 及びパナパナマでの製油所建設 マ政府 2007 Total 2007/6 Shell 中国とカザフスタンの事業 2007/10 MOL (ハンガリー) 中央・東欧州、CIS、北アフリカ、中東での事業 2007/11 三井物産 日本と他の東アジアにおける事業 2007/11 伊藤忠商事 海外における石油ガス上流開発、新エネルギー事業、石油化学事業 2007/12 ConocoPhillips カタール以外でのエネルギー事業 1 2 1 3 4 5 6 7 2007/12 PetroVietnam ベトナムでのガス事業 1,8 2008/1 Gaz de France E&P, LNG, ガス貯蔵設備、下流事9 業 2008/4 Eni 石油・ガスの上流と下流の国際的事10,112008/6 PetroChina 及び 中国における製油所・石油化学プラ11 業 12 13 Shell ントの建設、販売 2009/3 Oman Oil Company グローバルの機会追求 2010/3 Total 表: Qatar Petroleum InternationalがMOU等を締結した事例 出典: 1 Qatar Petroleumの年次報告書(2007年) 2 Mist News(2007/5/16) - 5 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 uイラク:石油開発を巡る最近の動向」 (2010/3/18) 猪原渉 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=1003_b01_inohara_Iraq.pdf&id=3535 3 International Oil Daily(2007/6/15) 4 International Gas Report(2007/10/22) 5 International Oil Daily(2007/11/5) 6 伊藤忠商事プレス発表(2007/11/12) 7 Business Wire(2007/12/11) 8 Euromoney (2008/1/8) 9 International Gas Report(2008/01/28) 10 Platts Oilgram News(2008/4/22) 11 Qatar Petroleumの年次報告書(2008年) 12 Oman Oil Companyのプレス発表(2009/3/8) 13 IHS Global Insight Daily Analysis (2009/3/28)他 の他参考文献 そ- 6 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 |
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