ページ番号1005932 更新日 平成30年2月16日

【技術センターだより】メキシコ国営石油会社(PEMEX)との共同研究の現状

レポート属性
レポートID 1005932
作成日 2001-05-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 技術企業
著者
著者直接入力 石油開発技術センター 不均質炭酸塩岩油層研究プロジェクトチーム 砂岩油層開発最適化研究プロジェクトチーム 地質・探査研究室
年度 2001
Vol 34
No 3
ページ数
抽出データ 技術センターだよりメキシコ国営石油会社(PEMEX)との共同研究の現状石油開発技術センター不均質炭酸塩岩油層研究プロジェクトチーム*砂岩油層開発最適化研究プロジェクトチーム地質・探査研究室石油公団では,1999年よりメキシコ南部のセレステ盆地のカクタス,ニスペロ,リオヌボエ油田及びチコンテペック盆地のアグアフリア,コアぺチャカ,タヒン油田における最適な生産開発計画の検討に資する油層モデル構築を目指してPEMEXと共同研究を実施している。セレステ盆地のカクタス油田群を対象にした研究では,検層カーブの波形解析等を行い,又生産データ等動的データも考慮して新たに地質学的モデルを作成した。そのモデルを基に対象フラクチャー型油層の生産履歴を再現できる油層モデルの構築作業を終了している。現在は油層シミュレーションと地質学的モデリング作業間でフィードバックを行いつつ,ガス攻法等EOR適用性検討用の油層モデル構築作業に着手している。本研究を通じて,フラクチャー型炭酸塩岩油層に対する評価技術の確立を目指している。一方,チコンテペック盆地のアグアフリア油田他を対象とした研究では,三次元地震探査データ,坑井データを用いてタービダイト砂岩に対する地質学的・堆積学的モデリング作業と地球統計学手法による貯留層物性モデル構築作業を終了しており,現在は研究対象地域での最適な開発方法の検討に資するための油層モデル構築作業に着手している。この研究成果は,今後タービダイト砂岩貯留層の地質・油層評価への貢献が期待されている。1.はじめに1999年8月末からTRCでは,PEMEX E&Pが操業するメキシコ陸上の油田群を研究対象に次の2つの研究プロジェクトを進めております。①カクタス,ニスペロ,リオヌエボ油田中下部白亜紀炭酸塩岩層の油層モデリング(“Reservoir Modeling for Middle and LowerCretaceous Carbonate of Cactus, Nispero*本稿は,不均質炭酸塩岩油層研究プロジェクトチーム牟田卓矢(E-mail:muta-t@jnoc.go.jp),砂岩油層開発最適化研究プロジェクトチーム 高野 修(E-mail:takano-o@jnoc.go.jp)山本浩士(yamamt-hr@jnoc.go.jp),地質・探査研究室 辻 喜弘(E-mail:tsuji-y@jnoc.go.jp)が担当した。and Rio Nuevo Fields”,以下「カクタス・プロジェクト」)②チコンテペック堆積盆アグアフリア?コアぺチャカ?タヒン地域の地球統計学モデリング(“Geostatistical Modeling of ChicontepecReservoir: Agua Fria, Coapechaca and TajinAreas”,以下「チコンテペック・プロジェクト」)この研究プロジェクトが発足するに至った端緒は,1995年11月の石油公団小松前総裁のPEMEX及びエネルギー資源省訪問にあります。その後,1996年からはPEMEX技術者のTRC海外技術者訓練事業への参加が始まり,石油公団とPEMEXとの人的交流の中で,共同研究実施についての基本合意がなされました。一方,現在実施中の2つの共同研究に先駆け石油/天然ガス レビュー ’01・5―122―}1 PEMEX/JNOC共同研究プロジェクトて,1998年2月にIMP(PEMEX傘下のメキシコ石油研究所)とTRCの間でタンピコ地域における電磁探査(TDEM)法共同実験実施の契約が調印され,現地実験を実施するとともに1999年2月まで共同研究が実施されています。PEMEXとの関係におきましては,1998年11月17日に石油公団とPEMEX E&Pの代表により契約期間5年間の技術協力包括協定が締結され,この包括協定の下で個別研究テーマの協議が始まりました。この協議の中でPEMEXE&P側は2油田群を候補として提示し,同年12月にTRC研究者が両油田を訪問し,データ閲覧及び現場技術者との意見交換を行いました。その結果,両油田群の技術課題はTRCで実施中の研究テーマに一致する部分が多く,また共同研究を実施するに必要なデータも存在することが確認できましたので,さらに具体的な共同研究内容,プロジェクト協定書に関する協議を続け1999年8月31日にメキシコシティのPEMEX本社において,PEMEXE&P技術代表であるDr. Guillermo C. Dominguez Vargasと島村TRC前所長の出席により,共同研究実施に係るプロジェクト協定が締結され,現在実施中の2つの研究プロジェクトが正式に開始されました。両研究プロジェクトともに本年7月末には現契約に基づく研究を終了する予定であり,現在,最終的な研究段階に来ております。以下に両研究プロジェクトの現況を紹介します。2.カクタスプロジェクト(cid:0)地質概況研究対象であるカクタス油田群はメキシコ南部タバスコ州の都市Villahermosaから30km南西にあり,200km2に及ぶ規模を持っています(図2)。これら油田群は,地質学的にはメキシコ南部のセレステ堆積盆地に位置しています。セレステ堆積盆地には数多くの油ガス田が存在しており,可採埋蔵量はメキシコ全地域の約7割にまで達します。この地域では,ジュラ紀前期のメキシコ湾のリフティングを伴うユカタン―123―石油/天然ガス レビュー ’01・5}2 カクタスプロジェクトの研究対象地域位置図図3 原油/水累計生産量分布ブロックの南方への移動に伴って堆積が始まりました。中期ジュラ紀には岩塩層が堆積し,後期ジュラ紀にこの地域の根源岩が堆積しています。白亜紀の堆積物は浅海成プラットホーム堆積物と崖錘堆積物であり石灰岩とドロマイトからなりますが,これらがこの地域の主要な貯留岩となっています。白亜紀中期にリフトシステムの断層が再活動するとともに,ジュラ紀に堆積した岩塩の上昇が始まり,この地域はしばしば陸化し,天水の影響によってドロマイト化作用が促進されたと考えられています。白亜紀後期から古第三紀へかけては圧縮応力場の環境に置かれ,岩塩の上昇とも相俟って構造が形成されました。また,断層・フラクチャーも発達して,緻密なドロマイトがフラクチャー型貯留岩となり現在に至っています。カクタス油田群はカクタス油田,ニスペロ油田及びリオヌエボ油田に分かれますが,この3油田は断層によって分断されています。(cid:0)生産開発概況セレステ堆積盆地では,カクタス油田の南隣にあるシティオグランデ油田の中生界炭酸塩岩からの原油の発見が1972年にあり,それに引き続いて同年カクタス油田が発見されました。これらの発見は,セレステ堆積盆地の中生界の炭酸塩岩を貯留岩とする油田の膨大な原油の発見に繋がり,メキシコが大産油国になるきっかけとなりました。ニスペロ油田は1974年,リオヌエボ油田は1975年に生産開始されています。原始埋蔵量は3油田合計で約28億bblです。既に115坑井が掘削され,現在も27坑井が生産中です。平均生産量(1998年12月)は石油17,250b/dとガス3270万scf/dで,累計生産は1998年1月初め現在,石油503百万bblとガス992,000百万scfです。1980年前後のピーク時の生産量は,カクタス・ニスペロ・リオヌエボ油田各々12.6,6.9,4.1万b/d,計約24万b/dに達していました。カクタスとニスペロ各フィールドではドロマイト層の圧力低下を止めるために,1980年2月と1981年6月に水圧入プロジェクトが開始されました。しかしながら,早期に圧入水が生産井にまで達し,水圧入は1983年に中断されました。水圧入の中断後も油層圧力と原油生産レートは回復せず,ガス攻法等EOR技術の適用が必要とされています。本フィールドの各坑井における相対的な累計原油・水生産量を図3に示しましたが,累計水生産量の高い坑井は必ずしも水圧入井の近傍にないことから,複雑な貯留層の性状変化が推定されます。(cid:0)共同研究の概況本共同研究対象であるカクタス油田群でのこれまでの生産履歴やコア,検層データから判断すると,これら油田の主要油層はフラクチャー型と考えられます。窒素或いは炭酸ガス圧入等石油/天然ガス レビュー ’01・5―124―フEORによる再活性化が検討され,そのための油層モデル構築が課題となっていました。このような状況を受け,フラクチャー型炭酸塩岩油層に対する既存手法の適用性検討及び改良により,同型の炭酸塩岩油層に対するモデル構築技術を向上させることを目的として,PEMEXと石油公団によるカクタスプロジェクトが開始されました。本スタディでは,ガス圧入を含む将来予測が可能な多成分型油層シミュレーションモデル構築作業を行っていますが,これまでにPEMEX E&Pの技術者を随時TRCに招き,共同でスタディを実施してきました。以下,成果概要を解説します。(3?1)地質学的解析本地域の白亜系は主に石灰岩からなる上部とドロマイトが卓越する中・下部に2分されます。上部白亜系は泥質な石灰岩層とその中に挟まれて存在する多孔質なcalcareniteからなります。Calcareniteは,粒子間孔隙が発達し,貯留層を形成しています。一方,中・下部白亜系はドロマイト化を被り,最上部の礁性堆積物を除き大変緻密で初生組織の認められない塊状のドロマイトが卓越します。礁性堆積物は厚歯二枚貝(rudist)を特徴的に含み,粒子などの一部が溶けた溶解孔隙を有しますが,主要貯留層である緻密なドロマイトはフラクチャーを唯一の孔隙システムとして生産に寄与しています(図4)。対象油田地域の層序はこれまで不明確でしたが,地層対比に検層カーブ(GR)の波形解析を適用し新たに10枚のレイヤーに区分しました。また,断層の解釈にあたり,既存の2次元震探断面はデータが古く,品質が良くないため,新しい層序区分に基づく深度構造図・等層厚図と表層の地形図から北西?南東方向の構造・断図4 中・下部白亜系フラクチャードロマイト―125―石油/天然ガス レビュー ’01・5orehole Image)検層記録の解析と岩石中のフラクチャーのフラクタル解析により,フラクチャーの産状と密度分布についての検討を試みました。その結果,UBI検層記録でのフラクチャー出現深度と密度-孔隙の検層記録から求められたドロマイトの割合が比較的良く相関し,また,フラクチャーの方向性には構造・断層トレンドとの関連が認められました(図6)。また,薄片・コア・露頭のフラクチャー密度はほぼ同一のフラクタル係数を示しました。これらの関係を総合的に解釈し,生産データ・流体特性などともにシミュレーションモデルに組み込むことにしています。図5 主要断層図(Top San Felipe)層トレンドを読み取っています(図5)。断層の推定に際しては,生産挙動の特徴も考慮しています。また,フラクチャーの分布形態が油層特性を支配するとの判断から,UBI(Ultrasonic(3?2)油層工学的検討新たに区分したレイヤーを基に,坑井生産テストデータを解析しましたが,その結果,貯留岩に二重孔隙の存在が予想される坑井と,フラクチャーや断層に支配された貯留岩を示す坑井石油/天然ガス レビュー ’01・5―126―図6 UBI検層記録解析}7 坑井試験解析図8 PVT解析が認められることが明らかになりました(図7)。14の井戸からの原油のPVTテストの結果を検討したところ,グルーピングが可能であることが明らかになりました(図8)。このことは,油田の中で同じ原油がどのような分布をしているのかを推定することの助けになります。いくつかの坑井では,ドロマイト貯留層の原油には飽和圧力が深度に係わらず約320kg/cm2に集中するグループがあり,これらが同一の原油である可能性,すなわち,貯留層に連続性がある可能性を示しています。それに対して,calcarenite層では,ほぼ同一の深度でも異なった飽和圧力を示し,油層が区切られていることが読み取れます。さらには,ニスペロ油田での例に見られますが(図9),原油生産と水圧入に伴う坑井圧力―127―石油/天然ガス レビュー ’01・5}9 坑井圧力と生産水の塩分濃度の変化パターンが,近傍の坑井グループ間で異なる場合がありました。また,生産される水の塩分濃度が坑井グループ間毎で異なり,それらの水の起源が場所により異なることを示しています。これらのデータは,貯留層が不連続であることを表し,坑井グループの間に断層が存在する可能性を示唆しています。今回新たに作成した地質学的モデルを基に,上に述べた検証結果を受けて,生産挙動のヒストリーマッチングを行い,油層モデルのプロトタイプを構築しました。今後,地質学的モデリング作業との間でフィードバックを得ながら油層シミュレーションを繰り返し行い,ガス攻法等EOR適用性を検討するため油層モデルを改良していく予定です。3.チコンテペックプロジェクト三紀における圧縮応力による東シエラマドレ山脈の上昇に伴い,山脈と逆断層によって境された前縁盆地として発生しました。この堆積盆を埋積した堆積物は堆積盆西側の東シエラマドレ山脈から供給された海底扇状地タービダイト砂岩からなり,これまでの堆積学的研究によれば,チコンテペック堆積盆の西縁沿いに複数の砕屑物供給経路があり,この供給経路ごとに海底扇状地が形成されていたことが明らかになっています(図11)。研究対象地域であるアグアフリア?コアペチャカ?タヒン地域は,チコンテペック堆積盆の南部に位置し(図10),これらの海底扇状地群の内の一つの堆積域に含まれます。アグアフリア?コアペチャカ?タヒン地域では古第三系暁新統,始新統および新第三系中新統が累重しますが,このうち古第三系暁新統が主要貯留層となっています。(cid:0)地質概況古第三系チコンテペック堆積盆は,メキシコシティ北東方の東シエラマドレ山脈とゴールデンレーンプラットフォームの間のメキシコ湾岸沿いに位置し,北西?南東方向に約125km,北東?南西方向に約25kmの規模を持っています(図10)。このチコンテペック堆積盆は,中生代白亜紀における石灰岩の堆積の後,新生代古第(cid:0)生産開発概況チコンテペック堆積盆では1952年に最初の油が発見されて以降,50数坑の探掘井掘削を経て1970年代には今回の研究対象地域においてアグアフリア油田,コアペチャカ油田,およびタヒン油田が相次いで発見されました。コアペチャカ油田は研究対象地域のほぼ中央部に位置する油田で,1970年に操業を開始し現石油/天然ガス レビュー ’01・5―128―}10 チコンテペックプロジェクトの研究対象地域位置図現在も72本の坑井から日産4,000b/d(1坑井当り60b/d)で生産を継続しています。現在の回収率は3%と見積もられており,現在の開発方式を継続しても低生産性の為に,最終的な回収率は8%と低く予想されています。タヒン油田は研究対象地域の南東部に位置する油田で,1978年に操業を開始して以来,累計で13百万bblの油を採取し,114本の坑井から日産2,000b/d(1坑井当り30b/d)で現在も生産を継続しています。現在の回収率は4%と見積もられており,アグアフリア油田と同様に低生産性の為,最終的な回収率は8%程度と予想されています。アグアフリア?コアペチャカ?タヒン地域の主要な貯留層は曉新世に堆積したタービダイト砂岩層であり,岩質としては泥質分が少ないものの先第三系から供給された炭酸塩岩粒子を多く含むために,粒子間のセメントが進んでおり,側方への連続性が概して良くない傾向にあります。孔隙率は5?25%と地域による差が大きく,浸透率も10md以下と低い値となっています。このことが1坑井当りの生産量が100b/d以下というような低生産性の原因となっています。このように,チコンテペック堆積盆地は膨大な図11 チコンテペック堆積盆の古地理復元図(主に西側の東シエラマドレ山脈から砕屑物が供給され,複数の海底扇状地が発達していた。)在までに累計で0.79百万bblの油を採取しており,現在も日産30b/d(生産井2坑)で生産を継続しています。開発開始当初から現在まで既に30年を経過しておりますが,3本の坑井しか掘削されておらず,未だ本格的な開発が実施されていません。アグアフリア油田は研究対象地域の北西部に位置する油田で,1977年に操業を開始して以来,累計で15百万bblの油を採取し,―129―石油/天然ガス レビュー ’01・5エ始埋蔵量(約1,000億bbl)を有しながらも低生産性のため累計生産量は30百万bblに留まり,対象地域全体の本格的な開発に至っていない状況であり,アグアフリア,タヒン両油田のみが部分的に本格的な生産を行っています。(cid:0)共同研究の概況過去のスタディでは,アグアフリア?コアペチャカ?タヒン地域は複数の海底扇状地のうちの1つが発達する地域に相当し,砂岩が比較的良く発達する地域と考えられていました。しかしながら開発後に低生産性が明らかとなったことから,砂岩の分布や性状が均一な広がりを持つものではなく,複雑な形態を示す可能性が出てきました。このような状況を受け,当該油田における生産性の向上と適切かつ効率的な開発計画の策定に資する油層モデルの構築を目的として,PEMEXと石油公団によるチコンテペックプロジェクトが開始され,特にタービダイト砂岩に対する地質学的・堆積学的モデリングと,三次元地震探査データ,坑井データの地球統計学的解析を主眼とした油層モデル構築作業が行われています。以下,地質学的・堆積学的解析と地球統計学的解析とに分けて成果概要を解説します。(3?1)地質学的・堆積学的解析本スタディでは,シーケンス層序学および海底扇状地モデルの概念を用いて,ファシス区分,シーケンス層序区分,シーケンスごとのファシス分布解析を行い,当該地域の堆積モデルを構築しました。ファシス区分:アグアフリア?コアペチャカ?タヒン地域における184坑井の坑井物理検層ファシス解析および11坑井のコア記載をもとに,ファシス区分を行いました。物理検層ファシスは,主にガンマ線検層,比抵抗,および中性子密度検層を基に区分し,さらに対応する岩相や堆積構造等を明らかにするために,コア堆積相との対比を行い,結果として,4つのファシス(SA,NA,MA,M)が区分されました(図12)。ファシスSAは主に砂岩と砂岩優勢砂岩泥岩互層からなる高密度タービダイトで,堆積環境として,砂質ラジアルファンの上部扇状地,中部扇状地,分枝状チャネル,もしくはチャネルレビーシステムのチャネルが推定されます。ファシスNAは等量砂岩泥岩互層からなる低密度タービダイトで,堆積環境として,砂質ラジアルファンの中部扇状地,もしくはチャネルレビーシステムのレビーが推定されます。ファシスMAは泥岩優勢砂岩泥岩互層からなる低密度タービダイトで,堆積環境として,砂質ラジアルファンの下部扇状地,もしくはチャネルレビーシステムのレビーが考えらます。ファシスMはスランプを含む頁岩からなり,斜面や堆積盆図12 アグアフリア?コアペチャカ?タヒン地域における貯留層区間のファシス区分石油/天然ガス レビュー ’01・5―130―黷ノおいて堆積したものと推定されました。堆積岩岩石学的解析の結果は,ファシスNA及びファシスSAとMAの一部が良好な貯留岩性状を示す傾向にあることを示しています。シーケンス層序区分:シーケンス堆積モデルを基に,物理検層と三次元震探セクション上で堆積シーケンス区分を行いました。図13に当該地域の貯留層区間のシーケンス層序区分図を示します。この地域の貯留層区間は12の堆積シーケンス(下位より,AF100,AF85,TAJ100,TAJ85,TAJ60,AF70-TAJ50,AF60-TAJ40,AF58-TAJ20,AF52,AF50,AF30,AF10)に区分することができ,それぞれの堆積シーケンスではシーケンス境界(SB),マイナー・コンデンス・セクション(MCS),海進面(TS)の3つの面を認定しました。ファシス分布解析:12の堆積シーケンスのサブシーケンスユニット(SB-MCS間,MCS-TS間,図13 アグアフリア?コアペチャカ?タヒン地域における古第三系曉新統貯留層区間のシーケンス層序区分図TS-SB間)毎にファシス分布図を作成しました。作成の手順は次の通りです。1)物理検層によって認定したファシスを坑井毎にマップ上の坑井位置にプロットし,そのプロットをもとに堆積相の平面分布を推定。2)続いて,Paradigm社のサイスミックファシス解析ソフトウエア「Stratimagic」を使用して各シーケンスごとにサイスミックファシスの分布解析。震探断面上の反射波列端(オンラップ・ダウンラップ)をサイスミックファシスマップ上にプロットすることによって,チャネル,舌状体,斜面等を示すサイスミックファシスとその分布を認定。3)物理検層ファシス平面分布解析とサイスミックファシス解析の結果を統合して,海底扇状地のチャネルや舌状体などの堆積システムを平面分布図上において解釈。解釈された平面図から,アグアフリア?コアペチャカ?タヒン地域の西部は堆積盆の西縁に接する斜面領域に一致する一方,東部は堆積盆延長方向に延びるトラフ軸部に一致することが明らかとなりました。また,砕屑物の大部分は西もしくは南西方向からチャネルを経由して供給され,海底扇状地の舌状体もしくはチャネル?レビーシステムを形成していることが明らかとなりました。貯留層区間の下部(シーケンスAF100?TAJ85)の区間では,タービダイト砂岩の分布がよりシート状に近いのに対し,上部(シーケンスTAJ60?AF10)では,チャネル?レビータイプの砂岩分布パターンが優勢となり,砂岩の分布はヒモ状もしくはパッチ状の複雑なパターンを示す傾向があります。ファシス分布解析の結論としては,スタディ地域東部のトラフ軸部および西側からの供給経路沿いに砂岩が分布する確率が高いことが明らかとなりました。(3?2)地球統計学的解析共同研究エリアでは,1998年に3次元震探が取得されています。しかし,震探はアグアフリア,タヒン両油田全体をカバーしていません。この為,震探上で認識されるシーケンス境界面とその分布の傾向,および坑井間対比で得られたマーカー深度を用い,研究対象地域全域での―131―石油/天然ガス レビュー ’01・5}14 物理検層ログファシス分布解析結果とサイスミックスファシス分布解析結果との比較の一例(シーケンスAF60-TAJ40の例)シーケンス境界(SB),マイナー・コンデンス・セクション(MCS),海進面(TS)の各面の3次元構造モデルを構築しました。また,震探上では2枚の主要な不整合面(Disc AF50,Disc AF75)が確認されていることから,地層と不整合面の関係や各シーケンス内での層位的な位置関係が堆積モデルと矛盾を生じないように考慮しながら3次元構造モデルをグリッド化しました。(図15)グリッド化された3次元モデル上で,コアデータ,物理検層データ及び震探データから貯留岩物性値(孔隙率,浸透率,および不動水飽和率)を地球統計学手法により推定しました。その手順を図16に示します。まず,貯留岩物性のモデル構築に利用するため,層厚,ネット/グロス比,孔隙率との相関の高い9種類のサイスミック・アトリビュート石油/天然ガス レビュー ’01・5―132―図15 3次元構造モデルのグリッド化}16 地球統計学手法による3次元貯留層物性モデル構築―133―石油/天然ガス レビュー ’01・5鰹oし,抽出された9種類のサイスミック・アトリビュートをACE(AlternatingConditional Expectation)アルゴリズムを用いて坑井検層から得られた平均孔隙率(Averagetotal porosity)と相関づけ,各シーケンス毎の平均孔隙率マップに変換しました。ここで注意すべき点は,使用するデータはそれぞれの代表する大きさが異なっている点です。例えば,サイスミック・アトリビュートから得られた平均孔隙率は各シーケンス間の平均値を代表するものであり,一方で物理検層から得られた孔隙率(total porosity)のデータは分解能(およそ25cm間隔)の平均値になっています。つまり,同じ孔隙率でも代表する大きさが異なっており,直接対比することができません。それぞれの代表する大きさを考慮した上で,モデルに取り込んでいく必要があります。このことはコアと物理検層から得られた物性値の比較においても同様の問題が生じます。本研究では,検層サイズで構築した孔隙率を各シーケンス間で平均したとき,その値がサイスミックから抽出された平均孔隙率マップの値と一致するように,ブロック・クリギング・シミュレーションの手法を用い推定しています。また,その他の物性値(有効孔隙率,頁岩含有率,岩相,不動水飽和率,浸透率)についても,それぞれその代表する大きさを考慮しながら図16に示された手順に沿って推定しています。図17は構築された貯留層物性値モデルの値から,生産に寄与していると考えられる砂岩体の分布を抜き出して表示したものです。今後は,既に構築した貯留岩物性モデルを基にして,生産実績のあるアグアフリア,タヒン両油田でセクターモデルによる油層シミュレー図17 3次元貯留層物性モデルションスタディを行い,本研究で構築されたモデルを検証するとともに,同モデルを研究対象地域における最適な開発方式の検討に活用していく予定です。4.おわりにカクタス,チコンテペック両研究プロジェクトは,本年7月末には研究を終了する予定です。これまでには,本年2月にメキシコシティーで開催されたメキシコ国内の石油開発関連学会であるEXITEP2001にPEMEXの技術者と共著で両研究プロジェクトの成果を発表し,PEMEXとの良好な関係を築いております。また,チコンテペックプロジェクトにおいては,本年7月以降も本共同研究で構築された油層モデルを活用してアグアフリア?コアペチャカ?タヒン地域の最適な開発生産計画の検討に資する研究を継続する方向でPEMEXとの協議に入っており,本共同研究を礎に今後もPEMEXとのさらなる関係構築に貢献していきたいと考えております。石油/天然ガス レビュー ’01・5―134―
地域1 中南米
国1 メキシコ
地域2 アジア
国2 日本
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,メキシコアジア,日本
2001/05/30 [ 2001年05月号 ] 石油開発技術センター 不均質炭酸塩岩油層研究プロジェクトチーム 砂岩油層開発最適化研究プロジェクトチーム 地質・探査研究室
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