ページ番号1005948 更新日 平成30年2月16日

サウジアラビア:ExxonMobil、RD/Shell など欧米 8 社と Gas Initiative の MOU を締結

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レポートID 1005948
作成日 2001-07-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発企業
著者 猪原 渉
著者直接入力
年度 2001
Vol 34
No 4
ページ数
抽出データ ガスのOPECとなる,ガス輸出国機構を創設する動き世界のガス輸出国11ヶ国は,5月19,20日,ガス需給見通しおよびガス供給の安全確保などについて意見交換するため,大臣レベルによる第1回ガス輸出国フォーラム(Gas ExportingCountries Forum:GECF)をテヘランにて開催した。参加国は,アルジェリア,ブルネイ,インドネシア,イラン,マレーシア,ナイジェリア,オマーン,カタール,ロシア,トルクメニスタン,ノルウェー(オブザーバー),これら11ヶ国で世界のガス埋蔵量の67%,世界の輸出量の71%(うちLNGでは世界の88%)を占める。(参考:OPECは,世界の埋蔵量の78%,世界の輸出量の55%を占めている。)今後はサウジやUAEも参加させたい意向。フォーラムの中でイランのZanganeh石油相は,「本フォーラムは,OPECをモデルとして新組織を設立する目的ではない,ガス市場の将来について話し合うため」で,「ガス消費国の参加も歓迎する。」と話しており,その他の参加者も「本フォーラムはカルテルではない。これは,ファーラムなので,事務局やスタッフ,予算も持たない」と断言しているものの,GECF結成の背景について以下4点があげられる。①EUは,産ガス側に事前調整や相談もなく,一方的にガスの自由化を進めており,供給側のロシア,ノルウェー,アルジェリアは不満を持っている。(産ガス側は,このEUのガス自由化の結果,売り先を確保する“リスクが発生する”と懸念している模様)②ガスの脱地域性,LNG輸出の拡大により地域で分断されていたガスマーケットが統合され,新たなる市場競争が生まれる可能性がある。③企業の買収・統合による,大手石油会社のエネルギー市場への影響が拡大している。④産ガス国間における意見交換や結束をする。今後,GECFは以下の3つのレベルでの会合を開催して,様々なガス関連問題に対応していくとしている。1.大臣レベルの総会,年1回2.専門家レベルの会議,年2回3.ワーキンググループ,必要に応じて次の大臣レベルの総会は,2002年1月にアルジェリアで開催される予定。サウジアラビア:ExxonMobil,RD/Shellなど欧米8社とGas InitiativeのMOUを締結1.Gas Initiativeへの参加企業8社を決定し,MOUを締結サウジアラビアは2001年5月18日,外資開放プロジェクトとして検討が進められてきた天然ガス開発プロジェクト(”Gas Initiative”)について,事業計画書を提出しショートリストされていた欧米石油会社11社のうち,ExxonMobil,RD/Shellなど8社を同プロジェクトへの参加企業として選定することを決定し,各社に通知した。そして6月3日,Jeddahにおいて,ファハド国王,アブドラ皇太子以下王族及び石油省関係者出席の下,参加各社とのMOUの調印式が実施された。ガス部門に限定しているものの,今回サウジが資源開発の上流部門に外国企業の事業参加を認めたのは,1975年のAramco国有化以来26年ぶりのことである。なお石油上流部門については,外国企業の参加対象範囲には含まれていない。Gas Initiativeは3コア事業に分けられており,コア事業別の概要及び参加企業選定結果は下記の通りである。石油/天然ガス レビュー ’01・7― 134 ―ャTウジGas Initiativeの参加企業内訳(2001.6.8現在の情報に基づく)><コア事業区分>Core Venture No1<内容>南Ghawar地域開発プロジェクト(初期投資額:約150億ドル)Core Venture No2紅海地域開発プロジェクト(初期投資額:約50億ドル)Core Venture No3Shaybah地域開発プロジェクト(初期投資額:約50億ドル)<選定企業及び参加比率>35%25%25%15%60%20%20%40%30%30%ExxonMobil(米)RD/Shell(英蘭)BP(英)Phillips(米)ExxonMobil (米)Marathon(米)Occidental(米)RD/Shell(英蘭)TotalFinaElf(仏)Conoco(米)Gas Initiativeには,天然ガス開発(探鉱,開発,と見られる。生産)のほか,パイプライン建設,ガス発電事また,ショートリストされていた11社のうち,業,石油化学事業,海水淡水化事業などの広範Chevron(米),ENI(伊),Enron(米)の3社は契囲の事業が対象に含まれており,3コア事業ト約先企業に残らなかったが,Gas Initiative特別交ータルの初期投資額は約250億ドルと伝えられ渉チームの統括責任者であるSaud外相は「選考ている。最終投資額は400~1000億ドルに達するから外れた会社は,今後サウジでの別の投資案との見方もあり,過去最大級の規模の巨大事業件で機会があるだろう。」と語っている。が動き出すことになる。MOUを締結した各社は今後,最終契約締結に今回,参加企業として8社が選定されたが,各向けサウジ側との交渉を進めることになっていコア事業でリーダー企業に選ばれたExxonMobilるが,詰めるべき課題(下記4項に記述)が多(Core Venture No1及びNo2)及びRD/Shellく残っており,交渉が長期化することも予想さ(Core Venture No3)の2社が,今後,本プロれる。ジェクト遂行での主導的役割を担っていくものサウジアラビアサウジアラビア紅海紅海リヤドリヤド南Ghawar南GhawarShaybahShaybah― 135 ―石油/天然ガス レビュー ’01・7Q.石油上流分野は開放対象外に想されるExxonMobilのCEOリー・レイモンド氏サウジの外資開放の動きは,1998年にアブドは,「将来的に石油上流にまで投資対象が拡大ラ皇太子がワシントンで米国石油会社首脳と会されるとは思っていないし,期待もしていない。談し,直接投資提案を要請したことに始まる。旧知のアブドラ皇太子から直接,石油上流は含当時は原油価格が10ドル/bbl前後まで下落してまないとの見解を聞き,率直に了解する旨回答いた時期であり,サウジの国家財政は原油収入した。」とコメントしている。また,Core Ventureの減少による大幅な赤字拡大という問題に直面No1(南Ghawar開発プロジェクト)の参加企業していた。このためアブドラ皇太子は,外資のとして選定されたBPは,国有化前のAramcoの株技術力を導入することによりエネルギー分野の主であったExxonMobilや石油化学分野ですでに競争力向上を図ることを目的として,石油省やサウジへの参入を果たしているRD/Shellとは異Saudi Aramcoの反対論を押し切って,エネルギなり,今回が初めてのサウジへの参入であり,ー分野への外資開放を決断した。当時のアブドかつては米国石油企業のテリトリーであるといラ皇太子の構想には,石油上流への外資導入もわれたサウジでの事業参加は「大変光栄なこと」視野に入っていたとも言われる(Financial Times(CEOジョン・ブラウン氏)としている。2001/5/19)。また,1999年までにサウジ側に提出された欧米各社の当初見積(投資提案)には4.今後の問題点石油上流をscopeとするものが多く含まれ,上流Gas InitiativeプロジェクトのIOC側にとって開放に対する各社の期待の高さをうかがわせた。の問題点として想定されるのは,プロジェクトしかし,1999年から2000年にかけての油価高の収益性が明確になっていないのではないかと騰によって,サウジは原油収入の大幅増加が見いう点である。LNG,GTL等の輸出プロジェク込めるようになり,政権内部の議論で全面開放トと異なり,製品ガスはサウジ国内が主要マー論は後退した。そして2000年2月の石油鉱物資源ケットとなるため,IOC側が製品価格をコント問題最高評議会において,開放対象から石油上ロールすることは困難である。国内向けガス価流を外し,天然ガス統合プロジェクト(上流及格のタリフの設定が収益性を左右することになび下流)及び石油下流分野を対象とするとの決るが,今のところサウジ側は明確なプランを定が下され,今回の参加企業選定の決定に際しIOCに対して提示していない模様であり,今後ても,この方針が確認された。の詳細条件の交渉におけるポイントとなりそう3.IOC側の反応である。ExxonMobilのレイモンド氏は,想定収益(リターン)率は10%台後半であり他の石油サウジの天然ガス埋蔵量は約204tcfで世界第ガス関係のプロジェクトと遜色ないレベルにな5位。これまでは随伴ガスの生産が主体であっる見込みであるとの見方を示しているが,匿名たが,のIOC幹部は,リターン率は一ケタ(10%未満)サウジは,人口の急増を背景として大幅な増になるおそれがあるとコメントしている。設が計画されている国内発電所向けの今後の主今回,参加企業が決定したと伝えられた5月18要燃料として天然ガスを位置付けており,IOC日の時点では,EnronがCore Venture No2の選定の有する最新のガス開発技術を導入して増産を企業の1社とされていたが,最終的に,参加企業図る計画である。はEnronからMarathonに変更になった。Enronは,Gas Initiativeへの参加が決まったIOC各社は,事業収益性の評価に基づき投資対象事業の「選将来の油田権益確保の布石としたいという思惑択と集中」を進めており,最近ドルフィン・プがあるのは間違いないと思われるが,対外的なロジェクト(カタール~UAE間のパイプライコメントとしては,石油上流が含まれていないン・プロジェクト)からの撤退を決めたのもこ今回のスキームの遂行に専念することを表明しのような理由からであるといわれているが,ている。プロジェクトの主導的役割を担うと予Gas Initiativeについても,Enronがその収益性に石油/天然ガス レビュー ’01・7― 136 ―ツいてシビアな評価を下し,最終的に本事業へな人材をサウジ国内に有しており,IOCにとっの参加を見送ったとの見方もできよう。て同社の存在を無視することは出来ず共同事業もう一点の問題点は,Saudi Aramcoの位置付となることは不可避である。しかしながら,け及び共同事業範囲の設定をどうするかというSaudi Aramcoとの細部の詰めはこれからであり,問題である。世界最大の国営石油会社である最終契約交渉は複雑かつ長期間の交渉となるこSaudi Aramcoは,充実したインフラや経験豊富とが予想される。年 月特 記 事 項<外資開放に関する一連の動き>1998年9月・アブドラ皇太子はワシントンで米国石油会社7社首脳と会談し,投資提案を要請1998年12月・アブドラ皇太子はサウド外相に投資提案評価のため閣僚委員会の発足を指示1999年5月・Saudi Aramcoは外資提案拒否を閣僚委員会に報告するも,政府は再考を1998年11月~1999年8月2000年1月   2月2000年4月   8月2001年2月   5月   6月指示・外国石油会社の投資提案提出は一段落・勅令により石油鉱物問題最高評議会(議長:ファハド国王)が発足・石油鉱物問題最高評議会は,ガス上流を含む統合プロジェクト,石油下流プロジェクトの開放(通称:Gas Initiativeプロジェクト)を発表。・外資との交渉を進める目的で新たな閣僚委員会と次官級事務局が発足・リチャードソン米国エネルギー長官が訪サ,サウジの外資開放の決定を歓迎・Jeddahにて,外国石油会社と投資提案に関する協議を開始・ショートリストされた外国石油会社12社が再度投資計画書を提出・ショートリスト各社によるデータルームへのアクセス及び特別交渉チームによる交渉開始・Gas Initiativeへの参加企業決定・欧米8社とMOUを締結(担当:猪原)ノルウェー政府に沖合の天然ガス輸送自由化計画の動きノルウェーは,これまで同国の天然ガス権益同国のガスを欧州大陸に輸出する際の,買い手を持つ約20社を保護してきたが,EUガス市場との交渉力を高めるため,同国政府が組成したガ自由化のガス指令の影響を受け,規制緩和・市ス販売コンソーシアム(Gassforhandlingsutvalget:場自由化路線に入った。同国はEU統合には加GFU)が窓口となって一括して買い手との交渉にわっていないが,世界で最大の沖合ガスパイプあたっていた。天然ガス輸出契約期間も20年と長ラインネットワークを所有しているため,(ド期に設定されていた。いわゆる“政府管理型”のイツ及びスコットランドへ各3本,フランス及ガス販売が行われてきたのである。なお,石油エびベルギーへ各1本敷設している),ここ数年間ネルギー省が各ガス田の生産量を決定しており,EUからガス指令に適用する政策をとるよう求その結果,商業化可能なガス田の開発が認可されめられていたが,それに対応したことになる。ないという問題が生じていた。― 137 ―石油/天然ガス レビュー ’01・7
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国・地域 中東,サウジアラビア
2001/07/30 [ 2001年07月号 ] 猪原 渉
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