ページ番号1005941 更新日 平成30年2月16日

石油上流業界のポートフォリオ戦略 ―経営者のために不可欠な投資判断のツール―

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レポートID 1005941
作成日 2001-07-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 企業
著者
著者直接入力 宮本 善文
年度 2001
Vol 34
No 4
ページ数
抽出データ 石油上流業界のポートフォリオ戦略―経営者のために不可欠な投資判断のツール―宮 本 善 文*欧米石油会社による上流部門の投資額の内訳は,開発支出に7割~8割,残りをリスクの高い探鉱事業に投資している。一方,日本の石油上流企業の投資は,石油公団が探鉱案件を主に支援してきたため,探鉱事業に重点をおいており,ポートフォリオの観点からは不健全な資産構成になっている。第一部では,リスク管理に注目してポートフォリオの概要を簡単に説明する。その理論に精通している読者は第二部から読んでほしい。第二部は石油公団が米国のPetroleum FinanceCompanyに委託した「Portfolio Management」と題する平成12年度委託調査をベースに書き下ろした。ポートフォリオのために作られた各種ソフトウエアができることとできないことを検討することで,欧米石油企業がどの程度ポートフォリオ理論を利用して投資を決定しているかを検討した。ポートフォリオ理論の考えを取り入れることで,探鉱リスクを軽減し,経営に意識改革をもたらすことが可能となる。第一部 ポートフォリオの概要1.はじめにとによって,リスクを小さくすることができるということである。(リスクとは何か,どのようにして計るか,という問題は非常に重要であり,後述する。)リスクを小さくするためには,“持っている全部の卵を1つのバスケットに入れてポートフォリオ理論は,Harry Markowitzがそのはいけない”と言われるように,常識的に考え基礎を築き,William Sharpeらが発展させた理論てもわかることである。図1は,簡単な時系列であり,両者はその業績によって1990年にノーのキャッシュフローであるが,もし年間の支出ベル経済学賞を受賞している。ポートフォリオ額を抑えたい企業であれば,AあるいはBの1理論が示唆するひとつは,リスクのある資産をつのプロジェクトを手がけるよりも,両方のプ一つに集中させずに運用先を分散させて異なるロジェクト半分のシェアで持てばキャッシュフリスクパターンをもつ資産を組み合わせるこローを安定させることができる。* 企画調査部 調査第二課長 E-mail:miyamt-y@jnoc.go.jp― 57 ―石油/天然ガス レビュー ’01・7`C=A+BB図1 キャッシュフロー2.分散可能性があるが,同じように損失を被ることも考えられるリスクの高い証券であるといえる。Markowitzは,証券の過去のデータを用いて,一般的な投資家は大きな損失をより嫌うと考え期待リターン(=収益)とその“ばらつき”(=らるので,同じ期待値(=収益)であれば,よ分散)を計測した。図2は,X軸が期待収益率,り小さい分散をもつ証券Aを選ぶことになる。Y軸がその頻度である。2つの証券(A,B)要するに,投資をする時にはリスクとリターンの期待収益率は5%で同じだが,Bの方がばらが判断要素となるのである。つきの度合いが大きい。Bは高い収益をあげるAA頻度頻度BB-10.00-5.000.00図25.0010.0015.00期待収益率3.効率的フロンティア曲線aのリスクが小さいのでaが選ばれる。a,b,c間ではaがベストであり,c,d,eの関係リターンを得るためには,それに見合ったリでは同様の考えにより,dがベストである。そスクを受け入れなければならない。2つのプロれぞれのリスクのレベルにおいてaとdと同様ジェクトあるいは複数のプロジェクトを組み合にベストな点があるはずであり,それらを結んわせることができるとすると,リスクとリターだ曲線を「効率的フロンティア曲線」(Efficientンの関係は,①同じレベルのリスクであれば高Frontier curve)という。その線上にあれば,優いリターンの方を選ぶべきであるし,②同じレ劣はつけられない。どの点(組み合わせ)を選ベルのリターンであれば低いリスクの方を選ぶぶかは投資者の選好の問題である。aはローリべきである。図3において,aとbはリスクはスク・ローリターン,dはハイリスク・ハイリ同じであるが,aのリターンが大きいのでaがターンと言えば分かりやすい。選ばれる。aとcのリターンは同じであるが,石油/天然ガス レビュー ’01・7― 58 ―}3 効率的フロンティア曲線---その1リスクリスク表1のように,株式投資の対象として,A,銘柄に投資をすると,Cの銘柄が平均収益率にB,Cがあるとする。期待収益率(例:6ヶ月おいても標準偏差においても勝っており,Aと後)及び標準偏差を投資の判断基準にすると,Bの銘柄は対象外になる。しかしDのように対収益率は高い方が望ましいし,収益率のばらつ象外と思われていたAとBを組み合わせた方が,きを示す標準偏差は小さい方が望ましい。単一期待収益率も標準偏差も向上する。eecdcdリターンリターンaabb表1期待収益率暖冬1/3-4%9%6%平年並み1/310%7%7%厳冬1/321%5%8%銘柄確率ABCD(分散投資)0.2A+0.8B6.4%(注)7.6%8.2%7.4%(注)[0.2×(-4)+0.8×9]=6.4出典:今野浩著「金融工学の挑戦」P.57をもとに作成平均標準偏差9%7%7%10.21.60.80.75この関係を効率的フロンティアで表すと図4とによってリスクを減らす効果は生じない。Dのようになる。BはCとの比較においてリスクは,線ACより上の位置にあり,ポートフォリが高いので,単独Bへの投資はない。AとCをオの効果が出るといえる。D以外にも多くの組組み合わせるという選択肢があるが,その場合み合わせがあると考えられるが,それらの点をはリスクを負った分だけリターンが増えるとい結べば効率的フロンティア曲線を描ける。う直線的関係なので,ポートフォリオを組むこ― 59 ―石油/天然ガス レビュー ’01・7`DCB109876リターン01234567891011標準偏差(リスク)図4 効率的フロンティア曲線---その2出典:『EXCELで学ぶファイナンス 証券投資分析』p.9をもとに作成4.金融ポートフォリオと石油上流部門のポーリスクの定量化トフォリオリスクを定量化することは,ポートフォーリオ分析以外でも,株主・アナリスト・監督当局ポートフォリオを構築するためには,①何をへの情報開示のために重要である。金融業界がリスクとして認識して,②そのリスクをどのよ採用している手法は先進的であり,将来的にはうに定量化するか---という問題設定が重要で石油企業でも全く同じ方法ではないにしても,ある。リスクとは何か類似の手法を用いて追随する可能性があるので,その方法を簡単に紹介する。金融の世界では,期待収益率をリターン,標金融機関やトレーディング会社などは自社の準偏差をリスクとして認識しており,石油上流投資リスクを定量化して金額で示す指標として部門で利用されているポートフォリオのソフトValue at Risk(VaR)というツールを利用していもその考えを踏襲している。る。米国証券取引委員会(SEC)は,1995年12しかし,それでよいのであろうか? 図2を月,企業に対しVaRを計算してリスク情報を開見た場合,リスクとは,①金融の世界で考える示することを提案しており,VaRはリスクの開ように期待収益率の標準偏差と認識するのか,示方法として高い注目を集めている。VaRの定それとも,全く別の視点から,②期待収益率が義は,「ある一定の期間において,特定の確率をマイナスになることと認識するのか,あるいは,もって,市場の不利な変化に対して予想される③平均期待収益率(5%)以下になることと認損失」と定義されている。たとえば,「1日の識するべきなのか。平均期待収益率以上になるVaRが99%の信頼区間で35百万$である」ということは「リスク」ではなく,「お楽しみ」として場合,それは「市場が平常の状態であれば,35とらえることもできる。個々の会社では,各々百万$以上の損失を被る可能性は100回に1回財務状況や事業戦略が違うであろうし,独自のである」ということであり,一定の信頼度のもリスク指標(それも複数)を考えても良いと思とでの最大想定損失を計る方法である。うが,この点は今後検討すべき課題である。石油/天然ガス レビュー ’01・7― 60 ―謫煤@石油上流部門のポートフォリートフォリオ・マネジメントにとる手続きを,素が重要である。以下,一般的な探鉱会社がポオについて1.はじめに①埋蔵量確率モデル,②経済モデル,③ポートフォリオモデルの順に説明する。ポートフォリオモデルを構築するためには,ソフトウエアが必要であるが,市販されている代表的なソフトシェル,モービル,アモコなどの大企業におについても評価する。いても1970年代後半から1990年初頭まではハイリスク・ハイリターン型の探鉱を実施しており,2.埋蔵量確率モデルその戦略は成功しなかった。探鉱は地下資源を相手にしており,何回も失敗を重ねた後に初め(この章は,『石油/天然ガス レビュー』て油田を発見し,最後はヒーローになる---とい1999年2月号(Vol.32 No.1)と合わせてお読う山師伝説(Prospector Myths)の考えがあったみ頂きたい。)ことが失敗の根本的原因であった。さらに地質技術者は,地質構造を楽観的に評価する傾向が対数正規分布ある。それを調整するため,経営者は必要以上埋蔵量の評価で重要なことは,多くのプロジに保守的になったり,経済計算に高い割引率をェクトを同じ評価方法で,かつ科学的に評価す利用したり,あるいは想定埋蔵量を半分にしてることである。埋蔵量計算にはいくつかの方法経済計算をすることもあった。があるが,代表的例としては,次の式を使用し,1990年代になり,石油探鉱に意識改革が起こ各パラメターに確率分布を与え,モンテカルロった。外的要因として,油価が低迷し,世界的シミュレーションにより埋蔵量確率分布を算定に石油企業間の競争が激しくなったため,探鉱する。(図5)作業の効率を上げ,リスクを管理することが要埋蔵量(volume)=集油エリア面積(area)×求された。内的要因としては,大油田が発見さネットペイ層厚(thickness)×孔隙率(prosity)れる確率が小さくなったことが挙げられる。た×油飽和率(saturation)×回収率(recoveryとえば,1億バーレル規模の油田を発見する確factor)×1/(容積係数)(formation volume率は,1960年代には4.1%だったが1990年代にはfactor)1.9%になっている。このような環境の下で意識各パラメターの確率分布には,各社いろいろ改革が起こった結果,探鉱を実施する際には,な計算方法があるが,たとえば,集油エリア面社内において統一的かつ客観的な判断基準でリ積とネットペイ層厚には対数正規分布を使い,スク評価することの重要性が認識されたのであそれ以外は三角分布を使う。(理論的には全てる。対数正規分布を使うべきであるというコンサル探鉱リスクを軽減し,探鉱効率を上げ,会社タントもいる。)埋蔵量を確率分布 (図6)で表の価値を高めながら国際的競争に負けないようすことにより,不確実性を数学的・統計学的ににするためには,会社の事業戦略,リスク評価,評価することができるのである。ポートフォリオ・マネジメントという3つの要― 61 ―石油/天然ガス レビュー ’01・7umulative Probability >>>P95P90P80P70P60P50P40P30P20P10P5P2P11,000.0Gulf of Mexico - Shelf (<1,000 feet water)P99P98P10MeanP500.11.010.0100.0Published Reserves (mmboe)図6Greater-than-or-equal-to アプローチ重要である。(図7)「100百万bbl以上の埋蔵量を埋蔵量を対数正規分布で表した後,累積度数発見する確率は12%である」と表現した方がマ図を作ることになるが,その際はGreater-than-ネジメントにとって理解しやすいし,想定埋蔵or-equal-to アプローチ(一定の埋蔵量またはそ量が大きくなる可能性も表現できるため地質技れより大きな埋蔵量を得る確率)で表すことが術者に好まれる。なお,Less-than-or-equal-to石油/天然ガス レビュー ’01・7― 62 ―×1/容積係数図5LOG PROBABILITY CHARTDistributionData PointsP1 = 0.2P10 = 1.5P50 = 12.9Mean = 41.4P90 = 113.7P99 = 669.3P90UMULATIVE DISTRIBUTION CHARTPercent Greater Than XGulf of Mexico - Shelf (<1,000 feet water)Data PointsCumulative Probability100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%Cumulative Probability of Exceedence >>>0100200300400500600700800Published Reserves (mmboe)図7リアリティチェックの大きさが小さくなる傾向があるので,リアリ第二部の冒頭にて,大油田が発見される確率ティチェック(reality check)をする場合,図9が小さくなったと述べた。もう1点,探鉱活動のように,期間を比較的古い時代と新しい時代が進んでいるいわゆるマチュア(mature)な地の2つに分割して対数正規分布で表し,想定す域においては,図8のように,発見される油田る埋蔵量を検証するべきである。CUMULATIVE RESERVESDISCOVEREDNiger Delta Offshore (water less than 500 ft)アプローチにおいては,「100百万bbl以下の埋になる。蔵量を発見する確率は88%である」という表現180001600014000120001000080006000400020000Cumulative Discovered Reserves (mmboe)Year Discovered図8― 63 ―石油/天然ガス レビュー ’01・7umulative Probability >>>P99P98P95P90P80P70P60P50P40P30P20Niger Delta Offshore (water less than 500 ft)LOG PROBABILITY CHART - 2 TIME PERIODSFirst Time PeriodSecond Time Period0.00.11.0Potential Reserves (mmboe)10.0100.01,000.0図9P10P5P2P110,000.0地質的成功確率ず,経済的にペイする量を確保しなければならこれまで,石油があると仮定し,埋蔵量分布ない。経済的成功確率=地質的成功確率×商業の計算方法をみた。次に,石油が発見される確性のある最低埋蔵量を確保する確率率を考えよう。地質学的観点からは,①熟成根もう一度順を追って説明すると,図10の実線源岩が存在したか(source),②そこから炭化水は,経済性を考慮する前の想定埋蔵量の分布を素が移動集積したか(timing & migration),③貯対数分布で表したものであり,平均値(Mean)留岩があるか(reservoir),④貯留岩にクロージでは,P27,埋蔵量11百万bblの位置にあり,「11ャーがあり構造ができているか(closure),⑤逃百万bbl以上を発見する確率は27%である。」とげ出さずに構造に保持されているか (seals) ---いうことを示している。また,発見される埋蔵というような要素が問題になる。地質技術者は量の範囲は0.1百万bblから110百万bblの幅の中それぞれの要素について0~1の評価を与え,にある。ここで,採算がとれるためには最低5すべての要素の評価値を掛け合わせることによ百万bblの埋蔵量が必要であるとする。図10の破り,地質的成功確率とする。線は足きり(trancated)した埋蔵量を示してお地質的成功確率=source×migration×reservoirり,5百万bblがP43の位置にある。これは「5×closure×seals百万bbl以上を発見する確率は43%である。」と例:0.7×0.8×0.9×0.7×0.9=0.32=32%いうことである。前述の例を使うと,0.32×0.43=0.13になり,経済的成功確率は13%というこ経済的成功確率とになる。試掘は原油を発見するだけでは成功とはいえ石油/天然ガス レビュー ’01・7― 64 ―1P2P5P10P20P30P40P50P60P70P80P90P95P98P99MeanTrunc MeanP50Cumulative Probability >>>TRUNCATED POTENTIAL RESERVES - Deep0.011.000.10MAPGEO EUR (mmboe)10.00100.001,000.00MCFSCOMM. EUR (mmboe)図103.経済モデル決定論的か確率論的か(probabilistic)に想定して,経済性を確率論的に計算する非常に複雑な方法である。その中間として,決定論的方法と確率論的方法を組み合経済的成功確率を加味したtrancateした埋蔵わせて計算する方法がある。一般論としては意量モデルに基づき,経済モデルを作るのだが,思決定するためには多くのデータがあることが表2のように5つの方法がある。①は1つの埋望ましいが,ポートフォリオを検討するための蔵量,1つの費用を想定したいわゆる決定論的データが洪水のようにあると,実際問題として(deterministic)に計算する簡単な方法である。扱えなくなる。したがって,③あるいは④の方⑤はその対極であり,埋蔵量と費用を確率論的法が良い。表2入力想定埋蔵量(trancated)想定費用①②③④⑤平均値(1つ)平均値(1つ)P90, P50, 平均,P10(4つ) 各1つP90, P50, 平均,P10(4つ) モンテカルロ(多数)モンテカルロ (多数)モンテカルロ(多数)1つモンテカルロ(多数)出力経済性1つ確率分布4つ確率分布確率分布費用の見積りもそもその基礎となっている埋蔵量自体は想定ポートフォリオモデルを構築する際,多くのの量であること。また,時間をかけ過ぎると検会社のエンジニアは,長時間をかけて詳細な費討する経済モデルの数が少なくなること。そし用モデルを作ってしまうという間違いをする。て,費用見積りは,経済モデルの目標でなく単基本的なことを再確認しよう。まず,詳細な結なる手段であり,最終的目標は,ROR(rate of果を得たとしてもそれは机上の結果であり,そreturn),正味現在価値(net present value),ネ― 65 ―石油/天然ガス レビュー ’01・7bトキャッシュフロー(net cash flow)を確率論等の基本的データを入力することにより,生産的に検討することである。プロファイル・最適開発コンセプト・費用見積探鉱・開発・操業費の見積りをするソフトウりが自動的に計算されて出力される。1日もあエアが市販されているのでそれを利用すると効ればそのソフトに慣れ費用見積りができる。ま率的である。例えば,IHS社が販売しているた,計算結果は20%の誤差の範囲におさまってQuestor Offshore, Questor Onshore, Questor Deepおり,費やす時間のわりには非常に正確である。Seaというソフトがあるが,地域,埋蔵量,深度(図11)Difference40%30%20%10%0%-10%-20%-30%-40%1,6001,4001,2001,0008006004002000Costs ($MM))Ursa Hoover/Diana Auger Mars Ram Powell Brutus Genesis Europa PetroniusBaldpate Neptune Macaroni Allegheny AngusTroika Actual CostsModeled CostsPercentage Difference図11 Actual versus Modeled Costs ? Gulf of Mexico4.石油上流分野におけるポートフォリオモデオソフトによって何ができるかを紹介しよう。ル調査の方法保有株式のポートフォリオを最適化するソフトが1年強前にインターネットで紹介され,個人でも利用できるようになった。(http://www.世界の石油会社がいかにポートフォリオモデfinportfolio.com/)個人のリスク寛容度,保有株ルに取組んでいるか,その実態を把握する方法式銘柄・株数を入力すると,保有すべき株式数として,間接的ではあるが,市販されているソが計算されるという仕組みになっている。図12フトウエアに実際のデータを入力して評価した。が出力される結果であるが,Optimalの列にある(紙面の制約からその内容の紹介は割愛する。)とおりに保有株式数を組み替えれば,リターン検証したポートフォーリオのソフトウエアは,は26.05%から29.66%に上昇するという。株式AS$ET, Petro VR, Merakである。それぞれ特徴のソフトウエアの場合は,過去の時系列データ(末尾参照)があるので,ユーザーの目的に合に基づき計算されているのであろうが,石油上ったものを使用すればよいと考える。流ポートフォリオモデルは多くのパラメターが必要であり,現時点でこのレベルまで到達してポートフォリオのソフトでは評価できないこいるソフトウエアは市販されていない。ましてや,純粋探鉱プロジェクトと生産中プロジェクトの最適な割合を自動的に計算するソフトウエ油上流のポートフォリオソフトウエアを論と 石ずる前に,最先端と思われる株式ポートフォリアなどは存在しない。石油/天然ガス レビュー ’01・7― 66 ―o典:FinPortfolio.com (同社の了解を得て,掲載した。)図12― 67 ―石油/天然ガス レビュー ’01・7各プロジェクトを連結することで,コーポレート(会社)レベルでの評価ができる。たートフォリオソフトウエアができること,ル ポ及び,投資判断にポートフォリオモデルを導入とえば,各年の費用負担額・収入・生産量・するメリットについて,入力から出力までのプ各種経済指標が判断できる。また,油価等をロセスに従い列挙する。変動させたり,プロジェクトの権益シェアを①各プロジェクトを定型フォームで入力する。変動するなどのシミュレーションができる。通常,個別のプロジェクトの評価はエクセさらに,設定した目標を達成できるかどうか投資判断の道具としてのポートフォリオモデ②各プロジェクトを連結する。ルなどのスプレッドシートを用いるが,それが判る。を作成した担当者の数だけフォームが存在し,③ポートフォリオを考える。また,通常は作成した担当者以外はその複雑自社は実際にどの程度までリスクを負えるな仕組みとなったプロジェクト評価表を理解か・負うべきなのか,許容できるリスクの範できない。定型フォームで入力することにす囲内で最大のリターンを追及するようにするればこのような問題は解決する。にはどのようにプロジェクトを組み合わせるラきか,一定の制約下で最大のリターンを得せるべきか---ということを経営者が追求するためにどのようにプロジェクトを組み合わるようになる。189378567756945Standard Deviation1156925694462231Deepwater Exploration: Total Net Cash Flow00(注:モンテカルロシミュレーションにより組み合わされたプロジェクトが,点で表現されている。)図13 PetroVRが描く効率的フロンティア曲線図14 Merakが描く効率的フロンティア曲線④確率論を導入して経営判断するようになる。50,20%の確率で生産量がどうなるかを描い図15は生産量のグラフである。既存のプロている。図16は期待されるRORの幅とその頻ジェクト(凡例ではMinimumと表記)に加え度を示している。て新規プロジェクトを実施する場合,95,75,石油/天然ガス レビュー ’01・7― 68 ―95P75P50P25Minimum250200150100500Daily Production (mbopd)202720262025202420232022202120202019201820172016201520142013201220112010200920082007200620052004200320022001200019991998図15 生産量図16  Rate of Return5.おわりに象にできなかったことが日本企業の探鉱事業偏重を生んだ原因であるが,本年6月に石油公団石油公団を含めた日本の石油上流企業が成功法が改正され生産油田買収の出資も可能になっしていない理由の1つとして,ポートフォリオた。ちなみに,欧米の石油企業の上流事業へのの考え方が浸透していないことを挙げることが投資割合は,リスクが相当軽減されている開発できる。詳しく言うと,第一に,ポートフォリ事業へ7,8割,探鉱事業に2,3割である。オを組むためにはいくつかのプロジェクトがな第三に,投資の際に個別「プロジェクト」の経ければならいが,これまでone-project-one-済性に注目し,新しいプロジェクトがどのようcompany方式であったため,ポートフォリオのに「会社」に貢献するかということをあまり重考えがなかった。第二に,リスクの高い事業へ視しなかったと考えられる。なお,石油公団はの投資割合が大きすぎたことである。これは石最近であるが会社(コーポレート)レベルで考油公団が制度的にリスクの高い探鉱事業しか対えるように方向転換したところである。第四に,― 69 ―石油/天然ガス レビュー ’01・7潟Xクに対する厳しさが不足していたと考えらするのも一つの考えである。なお,調査を実施れる。前述のように,欧米では「山師伝説」的したPetroleum Finance Company(PFC)と各ソな発想は既に捨てている。第五に,金融機関のフト会社には何ら関係はなく,PFCは中立な立ように他人から預かった資金を元利そろえて返場にある。済しなければならないという厳格な態度がなかった。AS$ET(IHS社 http://www.ihsenergy.com/ポートフォリオの考え方を取り入れることはproducts/economics-sulting/asset/index.html)このような問題を解決する第一歩である。なぜ・資本支出見積モジュール(capital cost estimationならば,経営者は次のようなことを念頭に意思module)がある。具体的には,陸上・沖合い,決定することになるからである。 自社がどの堆積盆地名を入力することにより,典型的な埋程度のリスクに耐えられるかを認識しておくこ蔵量と資本支出が出力される。ただし,実際にと。 リスクを定量化して認識しておくこと。は,同社のQuestarなどの本格的な資本費用見積保有しているすべてのプロジェクトを総計・ソフトで計算して,その結果をポートフォリオ連結しておくこと。(そうすれば,油価が1ドルモデルに取り込むことになるので,この機能の変動した場合の収益性やキャッシュフローを瞬有無はさほど重要ではない。時に計算できるし,1つのプロジェクトの参加・効率的フロンティア曲線を描くことはできなシェアを変動させるとどのような結果になるかい。についてシミュレーションができる。)確率の・最適化(optimization)の計算ができる。(例:概念を使うこと。(そうすれば,投資額が回収さ年間総支出額は300百万$を超えないというれない確率は何%であるかとか,会社が設定し制約の下で,一番高いNPVを得るプロジェクた目標をどの程度の確率で達成することができトの組み合わせは?)なお,最適化するのはるが判る。)NPVのみ。制約は探鉱費,開発費,資本支出経営者の意識変革は日本の石油上流企業が成総額,原油生産量,ガス生産量。功するための必要条件であって十分条件ではな・最適化の結果をXYグラフで描くことができい。ポートフォリオを実践するには,一定規模る。の会社にならなければならないからである。外・世界中の全ての経済計算モデルが用意されて国においては,メジャーでさえ生き残りをかけいる。また,そのなかのパラメターを自由にて合併し効率を追求している状況にあるが,一変更(カスタマイズ)できるので,産油国と方,日本では,たとえ全ての石油上流企業が合の入札交渉時にパラメターが交渉の道具にな併したとしても世界の中堅1社の規模にしかなる時には,容易に経済計算ができる。らない状況であるにもかかわらず,合併の動きは鈍い。世界的競争に生きのこり,発展するこPetroVR (Caeser社 http://www.caesarsystems.とを望むのであれば,業界編成をして,合併をcom/products.htm)しなければならないであろう。・PlanVR(埋蔵量・スケジュール等),EconVR(経ポートフォリオ理論を早く実践に応用し,世済計算),PortfolioVR(ポートフォリオ)により界での更なる活躍を期待したい。構成される。○・資本支出見積モジュールがない。【参考】ポートフォーリオのソフトウエア・効率的フロンティア曲線を描くことができる。各ソフトウエアの概要を簡単に紹介するが,他のソフトでは,「リスク」をNPVのStandard詳しくは各ベンダーのホームページを見て頂きdeviationをとし,「リターン」をNPVの平均値たい。各ソフトウエアにはそれぞれ特徴があるに限定しているが,このソフトでは他の要素ので,目的にそったソフトウエアを選定する必でこの曲線を描く事ができる。(例:「リスク」要がある。また,複数のソフトを購入して比較を最高支出額,「リターン」をIRRとするな石油/天然ガス レビュー ’01・7― 70 ―ヌ。)・国毎の経済モデルの数が少なく(約20ヶ国),・最適化ができる。(例:支出額上限は年間50新規にモデルを作る場合はTERASのスタッフ百万ドル,国内プロジェクトのRORは10%以上,に依頼しなければならないが,サポート体制海外のそれは15%以上,会社全体では12%以上が完全ではない。確保の全てを満たすようなプロジェクトの組・埋蔵量評価・経済評価・ポートフォーリオ評み合わせを探すこと。)価の全ての段階においてモンテカルロシミュ・井戸毎にプロジェクトモデルを作ることがでレーションを使っているため,理解できないきる。また,井戸毎の成否をモンテカルロシほど多くのデータが出力される。ミュレーションで表すことができる。・利用するには,Script Languageの習得などの・複数プロジェクトを合算したP25,P50,P75,P95ために,特別な訓練が必要。他のソフトと比のレベルでの生産量をグラフで描ける。較すると,TERASは機能的には非常にフレキ・対応できるプロジェクト数は40~50に限定さシブルでパワフルであるが,これを使いこなれる。すのは容易ではなく,user friendlyではない。・比較的新しいソフトであるためか,ユーザー・利用者の多くが,「このソフトはブラックボ数は少ない。ックスのようだ」とコメントしている。MERAK社---Value management Suit(http://参考文献www.merak.com/software/index.html)1.フィリップ・ジョリオン著 第一勧業銀行・Peep(経済計算),Decision Tree(モンテカル金融技術研究チーム訳 『バリュー・アッロシミュレーション),Portfolio又はCapitalト・リスクのすべて』シグマベイスキャピPlanning(ポートフォーリオ)で構成される。タル 2000年7月同社はその他多くのソフトを販売している。2.今野浩著『金融工学の挑戦』中央公論新社・資本支出見積モジュールがない。2000年4月・経済計算モデルのパラメターを自由に変更で3.藤林宏・岡村孝・河内規称著 『EXCELできない。学ぶファイナンス 証券投資分析』金融財・効率フロンティア曲線を描くことができる。政事情研究会2000年7月・最適化については,AS$ETあるいはPetroVR4.ロン・デンボー, アンドリュー・フリーと比較できない位,能力がある。また,会社マン 牟田誠一朗 『文科系にも分かる金レベルでのポートフォリオ評価ソフトとして融リスク入門』日経BP社 2000年6月有益。実際に,多くの会社がスタンダードと5.吉本佳生著『金融工学の悪魔』日本評論社して利用している。1999年10月TERAS(Landmark Graphics社,http://www2.6.ピーター・C・フサロ編著 椎名照雄監訳lgc.com/about/about.asp)『エネルギー・デリバティブの世界』東洋以下の理由により,この調査を実施したIHS経済新報社 2001年4月はこのソフトを調査から外した。ただし,それ7.Petroleum Finance Company “Portfolioは現時点での評価であり,同社はBPあるいはManagement”石油公団2000年度委託調査Statoilと共同で新しいバージョンを開発してい8.『石油/天然ガス レビュー』1999年2月号るとのことであるので,新製品情報には気をつ(Vol.32 No.1)けておく必要がある。― 71 ―石油/天然ガス レビュー ’01・7
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2001/07/30 [ 2001年07月号 ] 宮本 善文
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