ページ番号1006415 更新日 平成30年2月16日

HSE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化

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レポートID 1006415
作成日 2010-09-17 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 技術探鉱開発
著者 伊原 賢
著者直接入力
年度 2010
Vol 44
No 5
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC石油企画調査部 伊原 賢HSE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化はじめに 太陽からの吸収熱の増加が地球温暖化につながるという理屈がある。この要因である温室効果ガスの濃度を地球のエコシステムが破壊しない程度に保つには、温室効果ガスの排出量を今後50年の間に60~90%削減することが望ましいと、世界中で活発な議論がなされている。温室効果ガスのうち、大気中のCO2濃度は産業革命前の288ppmから現在380ppmにも達している。この濃度増加は、産業や人間の活動が起源であるというのが通説である。このCO2濃度の削減策として、石油生産現場において期待される技術に、「ゼロフレア」と「生産操業の省エネ化」がある。 本稿では、まず、地球温暖化とそれをもたらす温室効果ガスの排出削減対策について言及し、さらに、石油開発業界の環境意識と環境対策の現状を整理する。次にゼロフレアと省エネについて適用技術の動向を説明する。両技術の効果を読者に知ってもらうために、実フィールドにおけるケーススタディーを4例紹介する。最後に、今後の技術進歩への期待も込めて、両技術の位置付けをまとめたい。 なお、本稿の図・写真と見解の一部は、JOGMEC技術調査部が2010年3月25日に主催した「石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化に関する動向調査」の報告会の成果に基づいていることを申し添える。※HSE:Health , Safety and Environment1. 地球温暖化とそれをもたらす温室効果ガスの排出削減対策 太陽からの吸収熱の増加が地球温暖化につながるという理屈がある。 地球に降り注ぐ太陽エネルギーは約70%が地表で吸収された後、あとの30%が宇宙に放射される。入射する太陽光は可視・紫外線が主であるので、大気圏を大部分通過するが、地表から出て行く時は赤外線が主なので、大気中の気体分子(水蒸気やCO2他)に半分以上吸収される。吸収エネルギーの半分が宇宙へ、あとの半分が再び地表に向けて放射されるので、その分エネルギー収支に小さなアンバランスが生じて地表が約35℃温まることを、「温室効果」と言う(図1)。 温室効果ガスのうち、赤外線を吸収する水蒸気やCO2は温室効果全体の60~90%を示す(図2)。他のガスは温暖ポテンシャルが高いものの、量的にはそれほど問題とはならない。 IPCC(Inter governmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル、2007年ノーベル平和39石油・天然ガスレビュー賞)が実施したシミュレーションによれば、温室効果ガス濃度の増加速度は上昇している。化石燃料の消費により排出されたCO2は半分が地表に吸収され、あとの半分出所:SPE資料(SPE: The Society of Petroleum Engineers)図1温室効果(Greenhouse Effect)の概念AナリシスGlobal Surface Temperature Anomaly(deg C)1Anomaly(C)Annual Mean Temperature 0.50-0.5186018801900192019401960198020002020年出所:SPE資料Over the past century:・The earth’s surface temperature rose 0.7 deg C・The concentration of CO2 in the atmosphere increased from 300-380 ppm出所:SPE資料図2温室効果ガス(Greenhouse Gases)図3産業革命後の地表温度異常(Global Surface Temperature Anomaly)が大気中に残り、温室効果の増加をもたらすとされている。産業革命後、過去100年で地表温度は0.7℃ほど上昇した(図3)。 温室効果ガスの濃度を、地球のエコシステムを破壊しない程度(450ppm:産業革命以前の自然のレベルから地球温度が最終的に、ほぼ2℃上昇するケース)に保つには、温室効果ガスの排出量を50年の間に60~90%削減することが望ましい旨提言され、IPCCのデータはそれをサポートしている。このケースでは、2020年の先進国の温室効果ガス排出量が1990年比25~40%減少すると記されており、昨年12月コペンハーゲンで開催されたCOP15(第15回条約加盟国会議)では、この25%がワーキンググループの議長提案として議論された。 CO2を中国(世界の21%)に次ぎ排出するのは米国で約20%だ。日本は世界の4%程度のCO2を排出している。米国の2001年における温室効果ガス(水蒸気は含まず)の83.7%がCO2で、メタンは9.3%だった。ラフに計算して大気中のCO2の20%程度が人類の活動によるものだ。ただ、一概に世界中で温度が上昇しているわけではなく、地球温暖化よりも気候の変動による地球環境系の崩れが問題視されている。 このように、気候変動要因は複雑である。地球温暖化問題はエネルギー消費の問題とも大きくかかわる。化石エネルギー資源は、供給量・利便性・経済性を考えると、これから未来にかけて人類が依存しなければならない重要なエネルギー源である。持続可能社会へ向けた「温暖化と資源問題の現実的解決」としては、化石資源からの完全脱却を想定した脱炭素社会へ一挙に移行しようとすべきではなく、いったん化石資源を中心に多様化と効率化を推し進め、これに節約の浸透を加えた準・低炭素社Emissions(Gt CO2)Baseline emissions 62 GtBLUE Map emission 14 GtWEO 2007 450 ppm caseETP 2008 analysisCCS industry andtransformation(9%)CCS power generation(10%)Nuclear(6%)Renewables(21%)Power generatione?cency and fuelswitching(7%)End use fuel switching(11%)End use electricity e?cency(12%)End use fuel e?ciency(24%)年Gt:ギガトン、109トン出所:IEA資料 Energy Technology Perspective 2008図42050年に世界のCO2排出量半減を想定した適用技術構成の試算会を経由した後に、今世紀後半から化石資源依存度の低下とエネルギー・資源利用の効率化・節約を一層進めた低炭素社会に移行する時間軸がよいと、化学環境学の見地からは思量されている。 CO2の排出削減対策には、省エネの推進やエネルギーシステムの高効率化、天然ガスなどの低炭素エネルギー源へのシフト、原子力や風力・太陽光などの再生可能エネルギー、森林におけるCO2固定化といった技術的方策と、炭素/環境税や排出権取引など市場原理を機能させる経済的かつ政策的方策が検討されているものの、問題解決はたやすくないのが現実だ。図4は2050年時点の世界のCO2排出量半減を想定したIEAによる適用技術構成の試算例である。今から説明する「石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化」では、赤の矢印で示した五つの「CO2排出削減対策」への取り組みを紹介する。2010.9 Vol.44 No.540SE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化2. 石油開発業界の環境意識と環境対策の現状・ガスベント(放出) ガスの大気放出を指す。ガスそのものの放出となるので、フレアより環境に悪影響を与える。随伴ガスにCO2・N2といった不活性ガスを含む場合は燃焼できず、やむを得ず放出される。・世界のガスフレアの傾向 原油生産が増えるとフレア量も増える。また生産が減退するとフレアも減る傾向にある。随伴ガスの販売と利用市場がない場合、やむを得ずフレアされる。中東、アフリカ西部、ロシア中央部がフレア量の多い地域である(図5)。フレア量は年150Bcm(5.297Tcf)レベルで、1994年より16年間あまり変化していないようにも見えるが、石油の生産効率が上がるに伴い、2006年からは減少傾向にある(図6)。 E&P業界のフレア率は年々減少している(7.5m3/バレ (1)環境意識とガスフレアの現状・ガスフレア削減へのモチベーション デ・ボトルネッキング(生産プロセスの最適化)は、生産レート向上と操業費削減に結びつく。随伴ガスの販売と利用は生産物価値の向上につながる。機器の管理は保守費と操業費の削減に結びつく。ガスフレア削減は「石油開発業界の環境意識への関心の高まり」を内外に示すアクションとなる。モチベーションを別の言い方で表現すると、①経済的見返り、②規制順守、③環境へのインパクト低減、④ガスの供給維持、という四つの要素の組み合わせになる。① 経済的見返り:捕獲・分離ガスの販売、ガスの燃料使用を通じたコスト削減、CDM(クリーン開発メカニズム;先進国が開発途上国において技術・資金等の支援を行い、温室効果ガスの排出量を削減または吸収量を増加させる事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を支援先の国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当することができる制度)。② 規制順守:京都プロトコル、世界銀行のGGFR(Global Gas Flaring Reduction)ガイダンス、各国の環境規制。③ 環境へのインパクト低減:CO2の排出削減、燃料利用量の削減、酸性ガスの排出削減、地域環境への影響軽減。④ ガスの供給維持:下流事業への支援、ガスの自給体制、大型ガス田開発の狭間を補完するガス供給、地域コミュニティーの開発支援。BCM250200150100500BCF8,8257,0605,2953,5301,765年20082006200420022000199819961994出所:OTM Consulting社出所:OTM Consulting社写1ガスフレアの様子図6世界のガスフレア量の推移 ・ガスフレア ガスの燃焼コントロールのことであるが、温室効果ガス源となる(写1)。出所:OTM Consulting社図5世界のガスフレアの多い地域41石油・天然ガスレビュー求?1994年 → 6m3/バレル@2008年)。この傾向は続くと期待されている。ちなみに2008年のフレアレベル(m3/バレル)は、ナイジェリア19、ロシア12、カザフスタン11、アルジェリア10、イラク8、イラン7、リビア6、サウジ2であった(図7)。 生ガスには、メタン、LPG、NGL、水・CO2・N2他の不純物が含まれる(図8)。・ガスフレア量のトップ2 ロシア(年1.4Tcf @2008年)とナイジェリア(0.5Tcf @2008年)である。よって両国の今後の環境政策と規制は、世界のガスフレアの傾向に大きな影響を与える。[ロシア] 現状、随伴ガスの75%がフレアされている。すべての化石燃料資源の所有権はロシア政府にある。化石燃料資源(原油・天然ガス)の開発権にはライセンスが付与される。ガスフレアの規制は地域ごとに異なる(ガスフレアの取り扱いは地方政府に任されている)。2004年までは随伴ガスのフレアや利用について言及した州は2~3州に過ぎなかった。地方政府間の調整は取れておらず、フレアデータに一貫性がないのが実情だ。この現状に鑑み、2009年ロシア政府は原油生産に伴い随伴されるガスの95%を2012年までに活用するよう石油会社に指示した。その後、期限は2014年までに延長されている。フレアガスの規制は今まで地方政府間で調整がなされていなかったため、規制の実践を期限内に行うのはチャレンジングなことである。 石油会社Rosneftはガスの有効利用に今後5年間で27かんがアナリシス億4,000万ドル投資すると発表した。ガス会社Gazpromは2008~2010年にガスフレア削減に7億1,460万ドル投資すると発表した。[カタール] 市場のないガスは2004年までフレアすることが認められていた。しかし、GGFR会員となりフレア削減への機運が高まり、2010年までにガスフレア量ゼロを目指している。[ノルウェー] ガスフレアに関しては、明確な監視・報告・評価ガイドラインがある。ガスフレアの制限規制も存在し、ガスフレア削減を怠ると高い排出税が課せられる(1990年に導入されたCO2税はうまく機能している)。したがって、ノルウェーの石油産業からの温室効果ガスの排出は世界平均の3分の1と低いレベルにある(2008年の数字で言うと石油天然ガスの生産に伴うフレア量は全生産流体の1.1%だったが、ノルウェーの場合0.4%に過ぎなかった)。(2) GGFRの概要 GGFR(Global Gas Flaring Reduction)は国連の一組織である世界銀行に属し、ガスフレアに関し、発展途上国が先進国に移行できるようアドバイスを行う機関である。気候変動基金とGGFRの透明性がガスフレア削減にもたらす効果に期待が集まっている。環境意識への高まりもあり、E&P業界のフレア率は年々減少している(7.5m3/バレル@1994年 → 6m3/バレル@2008年、図7)。Methane - CH4Ethane - C2H6Propane - C3H8Butane - C4H10Pentane - C5H12Heavier hydrocarbonsWater, Carbon Dioxide,Nitrogen and other non-hydrocarbonsE?ciency(m3/Barrel)NigeriaNigeriaRaw Natural GasNGLLPGRussiaRussiaKazakhstanKazakhstanAlgeriaAlgeriaIraqIraqIranIranLibyaLibyaSaudi ArabiaSaudi Arabia50454035302520151050E?ciency(m3/Barrel)年2008200620042002200019981996199420082006200420022000199819961994年8.587.576.565.554.54Global production e?ciencyRegional production e?ciency出所:GGFR出所:OTM Consulting社図7世界のE&P業界のフレア率図8生ガスの構成2010.9 Vol.44 No.542SE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化・世界のフレアガス量 年150Bcm(5.297Tcf)で、日本の天然ガス消費量3.308Tcfの1.6倍である。4億トンのCO2が排出されている計算になる。フレアガスの85%は20カ国で発生し、数十億ドルの損失に達している。 インドネシアのジャワ島西部の石油生産現場(1,000バレル/日規模)を例にとると、原油・コンデンセートの売り上げは18万ドル/日あるが、インフラや市場の不備により13万ドル/日のガスとLPGをフレアせざるを得ない(2008年7月)。また、原油・コンデンセートの売り上げは6万7,500ドル/日あるが、インフラや市場の不備により6万8,000ドル/日のガスとLPGをフレアせざるを得ない(2009年2月)との現状データが示されている。・フレア削減への障害 規制の未整備、開発計画においてガスの取り扱いが不十分、国内ガス市場の開拓、市場へのアクセス不十分、技術課題、経済的支援不足が挙げられる。・GGFRパートナーシップ(www.worldbank.org/ggfr) フェーズ1(意識・理解・配慮、2003~2006年)、フェーズ2(承認、2006~2009年)、フェーズ3(実行、2010~2012年)と三つのフェーズに分けて遂行されている。・GGFRの役目 フレア情報の収集と発信、メディアキャンペーン、国と石油会社間のフレア削減政策と計画の疎通、フレア削減と随伴ガス利用に係るフォーラムの主催などが挙げられる。・GGFRが焦点をあてるポイント 随伴ガスの商業化、ガスフレアの政策と規制、フレアや放出の削減基準の実施、国と業者間の疎通、ベストプラクティスな知見の管理と共有である。 ガス生産国44カ国において、フレア規制とガス市場の整備状況はまちまちである。 [フレア規制が弱い場合]   産油国が市場開拓しないと州が随伴ガスをただで引き取る。生産現場で使われる以外、市場に売れないガスは、役所の同意の下、フレアされる。 [フレア規制が強い場合]   ガス市場の独立性が保たれているケースが多いのが特徴である。プロジェクト全体を見渡しても、ガスに経済的な価値が見出せない場合に政府承認の下、フレアすることができる(カナダ・アルバータ州4%)。しかし、その場合でも毎年再評価され、フレアすることが本当に経済合理的かどうかチェックされる。 世界銀行のGGFRプログラムでは、生産現場では使用されないガスの大半が、国内市場へ供給され有効に利用されるように、産ガス国にフレア規制の充実と適切なアドバイスを行っている。・ガスフレア削減へのモチベーション 炭素税軽減とインセンティブ(環境への配慮、付加価値、収入増)になるだろう。・GGFR会員の特典 世界銀行が主導する産油国と石油会社間の協力関係、パイロットプロジェクトの設計・実行支援、UNFCCC(United Nations Framework Convention on Climate Change:国連気候変動枠組み条約)*1に直接アクセスしカーボンファイナンス作業部会に参加、フレアやガスの有効利用に関するガイドラインへのアクセス、ネットワークを通じたベストプラクティスな知見の共有が特典として挙げられる。 GGFR会員の2008年フレアの対1996年削減率はマイナス35%と世界全体のマイナス25%より大きいことが知られている(図9)。Flaring intensity : % change from 1996%Global Partner countries0-5-10-15-20-25-30-35-4019961997199819992000200120022003200420052006200720082009年出所:世界銀行GGFR図9フレアの対1996年削減率(世界全体とGGFR会員)43石油・天然ガスレビューAナリシスも多くのエネルギー投入量が要る2次採収(水圧入/油層圧維持)や3次採収(熱攻法、CO2圧入、ガス圧入、N2圧入、ケミカル攻法、微生物攻法)の方がエネルギー消費率は高い傾向を示す。 米国の国立エネルギー研の試算によれば、全生産量の14%は3次採収/EORによるもので、上流事業が使用するエネルギーの46.2%を使用している。これをエネルギー消費率で表すと9.9%(=[201×0.462]/[6,710× 0.14])となり、石油生産現場でのエネルギー消費率3%よりかなり高くなる。EORの技術進歩によりエネルギー消費量が10%削減されると、エネルギー消費率は8.9%(9.9%×0.9)に改善される。この削減量は石油換算で929万トン(=2億100万トン×0.462×0.1、6,780万バレル)に相当し、原油価格を50ドル/バレルとしても34億ドルものコスト削減につながることになる。・省エネ対策の利点 燃料ガスの消費削減、操業コスト削減、機器の耐用年数の延長、石油や天然ガスの生産量増加、温室効果ガスの排出減、規制順守、企業の信頼性向上が挙げられる。[ExxonMobilのフレア削減と省エネ・コジェネ効果(温室効果ガスCO2換算)] 2006年192万トン(フレア48、省エネ144)、2007年528万トン(フレア232、省エネ296)、2008年736Events in a ?eld and e?ect on energy intensity(3)省エネの現状 石油生産現場でのエネルギー消費に注目する。世界の石油天然ガス生産量は石油換算で67億1,000万トンであった(2008年、IEA)。その内訳は、天然ガスが25億トン(103Tcf)と原油が42億1,000万トン(8,420万b/d)である。 世界の1次エネルギー消費量である同112億9,500万トンに石油と天然ガスの占める割合は59.4%である。 石油と天然ガスの生産量の約10%に相当する同6億7,100万トンが、石油や天然ガスの供給チェーンで消費されるエネルギーとなる。その30%に相当する同2億100万トン(石油、天然ガス、電気・熱の合計)が上流事業に関するものだ。この2億100万トンに相当するエネルギー用途は75%(同1億5,100万トン)が流体移送であとの25%(同5,000万トン)が熱交換となる。 ある洋上プラットホームの事例だと、流体移送系で消費される電力は大きく、全体使用量2万2,362kWの58%との報告である。58%の内訳は油パイプライン用ポンプ(22%)、コンプレッサー(25%)、水圧入(11%)と報告されている。 Energy Intensityは「投入したエネルギー(燃料ガス、軽油、電気)」を「出荷される石油・天然ガス」で除した指標である。このEnergy Intensityを上流事業にあてはめてみると、「石油換算2億100万トン/石油換算67億1,000万トン」となり、石油生産現場でのエネルギー消費率は3%となる。すなわち3のエネルギーを投入して100のエネルギー(原油と天然ガス)を取り出していることになる。「石油生産現場でのエネルギー消費率」は生産施設の仕様によって、0.85%から6.89%とばらつきがあるとの報告もある。「石油生産現場でのエネルギー消費率Energy Intensity」は、現場での生産開始から終了までの間に徐々に増え続け、さまざまなイベントによって上げ下げの効果がある。エネルギー消費率を上げるイベントには水分率の上昇や施設稼働率の減少が挙げられよう。一方、施設の修正・変更、新技術の採用、電力の近傍施設との共用はエネルギー消費率を下げる効果があるとされる(図10)。 石油や天然ガスの採収法によってもエネルギー消費率に違いが出るとされ、1次採収(自噴、人工採油法)よりEnergy intensity(GJ used / GJ of product)n.b.Shape of line is entirely illustrativeLife of FieldAdapted from: Vanner, R. Energy Use in Offshore Oil and Gas Production:Trends and Drivers for Efficiency from 1975 to 2025.出所:PSI Working Paper,2005図10生産開始から終了までの「石油生産現場でのエネルギー消費率Energy Intensity」に影響を与えるイベント2010.9 Vol.44 No.544@[CDM(CleanDevelopmentMechanism)]   先進国(Annex I)に発展途上国での排出削減に資金提供することを認める。それによってできたCDMプロジェクトは1トンのCO2削減につき1CER(Certified Emissions Reductions)というカーボンクレジット/排出権を獲得し、先進国内の排出削減にカウントされる(図12)。 [JI(JointImplementation)]   先進国(Annex I)が他の先進国における排出削減に資金提供することを認める。それによってできたJIは1トンのCO2削減につき1ERU(Emissions Reduction Units)というカーボンクレジット/排出権を獲得し、先進国内の排出削減にカウントされる*2。 CERとERUはカーボン市場(例えばEuropean Trading Scheme)で取引される。 CDMプロジェクトの流れ:プレーヤー(Project Developer、Designated Operational Entity、CDM Executive Board)と書類(Project Design Document/PDD、House Country Approval/LoA、検証、登録)。登録費用は最初の1万5,000トンのCO2削減までは1CERあたり0.1ドルとカウント。1万5,000トン以上になると万トン(フレア368、省エネ368)と増加傾向にあると報告されている(図11)。[カナダのオイルサンドの省エネ対策] 炭化水素の排出削減、エネルギー消費の削減、エネルギー保存(ガスタービンの燃料多様化、熱交換器、配電)を目指した方策が採られている。 規制は省エネよりも温室効果ガス排出に注目するのが一般的。 石油生産現場における省エネのアクションは、通常、石油会社が投資家の後押しに伴い、経済性の観点から実施されるのが一般的。 欧州のノルウェーでは省エネに対する規制がしっかり存在している。例えば洋上プラットホームで発電用に使われる生産ガスは計量しなければならない。 一方、英国では省エネを怠った場合のペナルティーがなく、省エネ対策への関心は薄い状態にある。(4)京都プロトコル・CDMへの期待 京都プロトコルは、UNFCCCが気候変動の対応策として採用した戦略の一つである。世界には京都プロトコルに署名批准した国と批准していない国(米国)がある。京都プロトコルでは先進国(Annex I)と発展途上国で取り扱い区分が異なるが、2008~2012年における温室効果ガスの対1990年比削減率を求めている。まずは自国内中心の削減努力になるが、国外にそれを補完する二つのメカニズム(CDM、JI)を有する。Flare reductionEnergy e?ciency and cogeneration200620072008年840(millions of metric tons)CO2 equivalent emissions HSE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化Cumulative GHG emission reductions through ExxonMobil actions 2006-2008出所:2008 Corporate Citizen Report ExxonMobil出所:UNFCCC/国連気候変動枠組み条約図11ExxonMobilのフレア削減と省エネ・コジェネ効果(温室効果ガスCO2換算)図12カーボンクレジット/排出権CERの現状(2010年3月)45石油・天然ガスレビューAナリシスCDM Project Cycle出所:OTM Consulting社図13CDMプロジェクトの流れ1CERあたり0.2ドルと倍にカウントされる。登録が済むと、プロジェクトのモニタリング、検証へと進み、それが認められると排出権の認証・発行となり、商業化となる。商業化の後は、プロジェクト開発者が排出権を市場で売ることになる(図13)。 石油の生産現場では、排出削減はガスフレアや不可避なガスの排出を削減することと、エネルギー効率向上を図ること、CCS(CO2 Capture & Storage)、コジェネを採用する等である。 石油天然ガス業界でのCDMの方法は四つほどある。① AM0009 : 油井からの随伴ガスの回収と利用(燃料からの不可避排出)② AM0037 : 油井からのフレア削減と随伴ガスの原料としての利用(化学業界、燃料からの不可避排出)③ AM0077 : 油井からの随伴ガスの回収とその特定ユーザーへの移送(エネルギー業界、燃料からの不可避排出)④ AMS III-Q: 未利用エネルギー(ガス、熱、圧力)の回収(製造業) 四つのCDM機会を創出するのに必要な書類は、それぞれに規定がある。 石油天然ガス業界で登録されたCDMプロジェクトの数は2010年3月時点でまだ17件と少なく(図14)、JIプロジェクトもロシアを中心に見られるが、それほど多くないのが現状だ。 以下の事項がその理由として挙げられている。→ CDMスキームは複雑→ 事務的サポートが不十分→ 小規模プロジェクトに適用できるような柔軟性の欠如→ ガスの所有権や契約条項との絡み→ CDMのデモが投資分析に必要→ すべての書類がプロジェクトのスタート時点で必要→ Designated Operational Entity(DOE)に産業の専門家が含まれず、プロジェクトの中身の理解に問題あり2010.9 Vol.44 No.546ietnam1Qatar1Nigeria2Iran1Indonesia220052006200720082009年Cambodia1China4Guinea1India420181614121002468HSE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化Number of oil and gas related registeredCDM projects as of March 2010Distribution of oil and gas relatedregistered CDM by host partiesas of March 2010Cumulative trend出所:UNFCCC/国連気候変動枠組み条約図14石油天然ガス業界で登録されたCDMプロジェクト数(2010年3月)3. ゼロフレアへの適用技術の動向(1)フレア削減の考え方 考え方 :フレアかフレア削減か? ガス源 : 多層生産、溶解ガス、坑井試験でのガス、安全弁からの高圧ガス、フレア点火 フレア : 通常フレア、緊急時フレア、点火のためのパイロットフレアフレア削減: ガス油比の低減(ガスコーニング抑制、ガス層の隔離)、随伴ガスの分離(販売、油層への圧入)、代替の点火スキーム(2)随伴ガスの現金化(マネタイズ)技術 少量ガス対応、発電はガスの量や質にあまり左右されず、重油・石炭・軽油に比べ発電量あたりのCO2排出量が少ない(Open Cycle Turbine、Combined Cycle Gas Turbine、Combined Heat and Power)。 GTW(Gas to Wire)は石油生産現場で発電し、高圧交流で送電(石油会社が自ら直流・交流変換を行う)。発電から配電まで5工程(①発電、②交流→直流、③高圧直流で送電、④直流→交流、⑤配電)を要し、エネルギー効率が43%と低い(SPE 103745)。 オランダでの洋上風力発電と洋上ガス田からのGTW:余ったガスはCNGとしても利用検討(Smart Energy Solution社)。・ガスの液化[LNG(liquefiednaturalgas)] メタン・リッチ、不純物を除去後600分の1に体積を圧縮し液化し(99%以上メタン)、運び、使用地で気化して利用する。 液化の原理:気体から冷媒(低温の物体から高温の物体に熱を運ぶ流体。低温において非常に蒸発しやすく液化しやすい物質)によって熱エネルギーを除去する。冷媒にはプロパン、エチレン、メタン等の炭化水素を使用し、段階的に冷却・液化する。ガスタービン(冷媒コンプレッサーの駆動機)で液体になった冷媒の圧力を急激に下げることにより、低温低圧の気体冷媒を作り、原料の天然ガスをこの気体冷媒と接触・熱交換させて冷却・液化する。冷蔵庫やエアコンも(冷媒がアンモニアやフロンであることを除けば、)同じ原理を使っている。主要機器は主熱交換器、冷媒コンプレッサー、駆動機。 LNGの供給チェーンコストの内訳:液化50%、貯蔵18%、ユーティリティー16%、出荷10%、前処理6%。 小型LNGのインセンティブ:小規模・リモートガス田の現金化、地域社会向け燃料、環境対策、経済対策。 LNGとパイプラインガスの経済性比較:移送距離によって違いがある。例えば移送距離が4,000kmと遠距離になるとLNGの方が経済的に優位との試算がある(図15)。47石油・天然ガスレビュー?/MMBut$3.00$2.50$2.00$1.50$1.00$0.5006201,2401,8602,4803,100Distance in Miles3,7204,3404,960出所:Institute of Gas Technology図15LNGとパイプラインガスの経済性比較の試算例出所:Sea NG Corporation図16カナダSea NG社のCNGイメージ[NGL(NaturalGasLiquids):天然ガス液] エタン35%、LPG48%(プロパン30%、ブタン18%)、Natural Gasoline/コンデンセート17%(ペンタン、C6+)。 NGLの抽出原理:吸収/分留fractionation(重い成分はほぼ回収可能)と液化(エタン等軽い成分の抽出には低温液化が必要)。通常メタンより重い成分は液化され天然ガス液として回収されるため、NGLの抽出プロセスはLNGの液化プロセスに含まれることが多い。 East Area NGL IIプロジェクト:ナイジェリア沖、ExxonMobil、950MMscf/dの随伴ガスより5万バレルアナリシスのNGL回収、採油増進プロジェクトに伴うフレア削減アプローチの一部。洋上におけるNGL回収コンプレックス、200kmの天然ガスとNGLパイプラインをそれぞれ新設。移送されたNGLは陸上で分留され製品として出荷。・ガスの圧縮 Compressed Natural Gas(CNG)として移送。商業化されたものはまだない。[CNG(CompressedNaturalGas)] ガスを内径6インチの管内に3,200psig(220bar)まで圧縮し、17kmをリール状に巻いた円盤で運搬(図16)。運搬するガス量は1船あたり50~500MMscf。船級協会DNVとABSの認証取得済み。経済的に建造しやすいのが特徴。管の材質は通常の炭素鋼(カナダSea NG社)。[PNG(PressurizedNaturalGas)] ノルウェーのKnuttsen OAS Shipping社がドイツのパイプ会社Europipe GMBHや船級協会DNVと共同で開発。常温運転で運転圧は240bar。カーゴタンク用のシリンダーを使い運搬ガス量は1船あたり70~140MMscf。ガスの運搬形態はパイプラインに似ている。移送距離は5,500kmまで競争力があるとの試算。 管をファイバー強化プラスチック(FRP)製のモジュラー式カセットボンベに置き換え、軽量化を図るアイデアもある。Transocean社の特許。カナダSea NG社のCNGに比べ運用中の検査がしやすい。短距離輸送に向く。 CNGの供給チェーンコスト:ガスの管内圧縮5%(3,000万~6,000万ドル)、輸送89%(1船あたり400MMscf~1Bscfの輸送で2億5,000万ドル)、ガスの取り出し6%(1,600万~2,000万ドル)、システムでは計10億~20億ドルの投資。2,600kmの移送距離を前提とすると、年300万トンより小さな規模の天然ガス輸送では、CNGがLNGより経済性があるとの試算がある(図17、J. Economides)。・化学変化 DME、メタノール、GTL、ガスのハイドレート化輸送(Natural Gas Hydrates; NGH)。[GTL(gastoliquids)] 天然ガスを一酸化炭素と水素(合成ガスと呼ぶ)に分解2010.9 Vol.44 No.548SE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化7,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000-1,000NPV,milion US$CNG - 2,600kmLNG - 2,600km0123456710Gas Supply Rate, Bcm/yr89NPV's calculated at different gas supply rate for CNG and LNG transportation at distance of 2,600km 出所:J.Economides図17CNGとLNGの経済性試算例し、F-T(フィッシャー・トロプシュ)合成で分子構造を組み替えて作る石油の代替となる燃料(灯油/Kerosene、軽油/Diesel/Gas Oil、ジェット燃料、ナフサ/Naphtha)を製造する技術。触媒寿命と燃料収率の向上が技術課題。 Energy Intensity(投入したエネルギーを出荷される石油・天然ガス・燃料で除した指標)は、LNGの10~12%に比べ大きく投資額も高くなるが、製造される燃料(灯油/Kerosene、軽油/Diesel/Gas Oil、ジェット燃料、ナフサ/Naphtha)の付加価値が高い。[MSA(MethanosulfonicAcid)] 化学式はCH3SO3Hで腐食性・毒性が高く無色の液体。SO3内でメタンを燃焼させるとMSAが製造できる。他のGTLプロセスと比べ合成ガス製造工程が省ける。Methion社の特許。実験室レベルを終えパイロットプラント計画中。CH3OHに水添処理を施し、DMEやオレフィン類を製造。CH3OH製造過程で分離されたSO2は空気燃焼でSO3に再生。簡素なプロセスのため比較的容易にプラントのスケールアップやダウンが可能であり、(フレア程度の)0.2MMcf/dと少量のメタンでもプラントが成立可能との試算あり。[NGH(NaturalGasHydrate)] 天然ガスハイドレートの固体輸送(マイナス20℃でメタン150~180m3をハイドレート1 m3に閉じ込める)と再ガス化。LNGとの、コストと投入エネルギーの比較において、優位性が保てるメタン量と輸送距離の試算結果はあるが、商業化されたものはまだない。49石油・天然ガスレビュー・マネタイズ技術の比較 LNG(含む小型)、パイプライン、DME/メタノール、GTL、GTWを「市場への距離」と「エネルギー効率」の観点から比較(図18)。マネタイズ技術の住み分けマップを「メタン量」と「市場への距離」をパラメーターに作成(図19)。Energy E?ciency %100908070605040DEMLNGPipelineGTLElectriclty01,0002,0003,0004,0005,0006,0007,0008,000km出所:WPC(World Petroleum Council)図18マネタイズ技術の「市場への距離」と「エネルギー効率」からの比較例Distance to market(km)(Note scale at 1,000km)DMEDMEFT-GTLFT-GTLLNGLNGMini LNGMini LNGGTWGTWCNGCNGPIPELINEPIPELINE9,0008,0007,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0007505002501002003004005006007008009001,0001,100Flow rate(MMscfd)出所:OTM Consulting社図19マネタイズ技術の住み分けマップ例・フレア削減プロジェクト成立に障害となる事項 ファイナンシャルリスク、ガスの市場価格、ガスの所有権、ガス量、PS契約、インフラ不足、商業リスク。Aナリシス(3)随伴ガス生産の削減技術・坑井オペレーションの自動化 Remote Telemetry Unit (RTU)や坑井内の圧力・流量・温度モニタリング。 ガス井は流速(坑底と坑口の圧力差)が十分にないと井戸が休止状態に至る場合がある。通常、その状態になったた際には、坑口圧を大気圧まで下げて、坑井内に溜まった液柱を坑口から外に排出(パージ)させる。この場合、多量の炭化水素がフレアないし排出されることになるので、坑井内の圧力・流量・温度をモニタリングすることで、その状態の事前回避が可能となる。 北米のガス井では坑井オペレーションの自動化により、生産量が10~20%程度増えたとの報告もある。 2000年にBPは、ニューメキシコ州のSan Juan堆積盆地のプランジャーリフト井2,200坑にモニタリング機器を取り付けた。コストの内訳は1坑あたりRTU1万5,000ドル、データ収集分析システム5万~75万ドル。このモニタリングにより2000~2004年にガスのベント/排出量を約50%減らすことができ、年間1,550万ドルのコスト削減につながったとのことだ。・ガス井休止に用いる泡/界面活性剤(surfactants)とジェル 貯留層のガス油比が高いと、多くの随伴ガスが生産される。その際、坑井内に泡/界面活性剤(surfactants)やジェルを岩石の流路に圧入し固定させると、貯留層から坑井内へのガスの動きを抑えることができる。 ベネズエラ北東部で国営石油会社PDVSAが行った事例:上部ガス層からの生産食い止め。PDVSAの研究機関IntevepはMultigelと呼ばれるジェルをセメントと併用し、ガス層にふたをすることでガス層からのガス生産を食い止める方式を開発し、現場適用された(図20)。・InflowControlDevice(ICD): 坑井内に設置されたセンサーやフローコントロールバルブ。水平坑井内への流体流入分布の均一化を図るセンサーやバルブ類のことをInflow Control Deviceと呼ぶ。 坑井仕上げ技術の進歩の一環として知られるIntelligent Well Completion(IWC)のツールの一つ。 坑井軸方向に沿って貯留層の浸透率が異なる場合には、坑井内への流体流入分布の不均一(浸透性のよい貯留層からは多くの流体が坑井内に流入する「コーニング/Coning」現象)が生じやすいことが知られている。流体流入分布の均一化を図ることで、ガスや水の坑井内へのコーニングを抑え、油の生産レートを最適化することができる(図21)。(4)他のフレア削減技術・フレアガスの回収システム アブダビのADCO社:フレアガスをノックアウトドラム、セパレーター、コンプレッサーを介してできる限り、液体分の回収を試みる。コンプレッサーが動かない場合にはガスはバイパスラインを流れ、やむを得ずフレアされる。システムのコストは130万ドル程度である。 フレアガスをGas Ejectorで放射させ、ガスを回収する方法もある。Gel treatmentused to blockgas productionfrom upper zoneGasOilGas Oil ContactWater Oil ContactDrawdown without ICDsDrawdown with ICDs出所:OTM Consulting社出所:OTM Consulting社図20上部ガス層からの生産食い止め例図21ICDによる水平坑井内への流体流入分布の均一化(イメージ)2010.9 Vol.44 No.5502IgnitionPelletLong operating distance2,000 metersLauncher1出所:Statoil図22弾道点火システム(イメージ)/放出」で失われている(世界の天然ガスの年間消費量106.6Tcf@2008年)。 「不可避な排出とベント/放出」の発生箇所は、タンク、空圧機器およびパイプ、コンプレッサーのシール箇所とされている。 タンクでの放出:タンクで炭化水素を貯蔵する場合、軽い成分は次第に液相から分離され気相となってタンク上部に溜まる。タンク内の液面が変化すると、上部の気相はしばしば大気中に放出/放散される。この放出を防ぐためにタンクには気相回収装置(Vapor Recovery Unit:VRU)が併設される。VRUはスクラバーやコンプレッサーという装置から構成され、タンク上部の気相の95%を液体やガスとして回収可能である。・不可避な排出の削減 メタンの排出箇所として多いのはフローラインからのういである。EPA/GRIのデータによれば、1マイルのフローラインあたり53.2scf/dのガスが漏洩しているとのことである。漏洩の原因としては、ライン材質の摩耗・破裂・腐食、ラインの接続不備、ライン材質の不良、ラインの製造不良が挙げられる(写2)。洩え漏ろ・連続排出の停止・弾道点火システム フレア塔にパイロット点火装置は不要である。図22を参照されたい。離れた場所①から点火ペレットをガイドパイプ内に弾道発射する②。すると点火ペレットはガイドパイプを通ってフレア塔に到着する。点火ペレットはガイドパイプを出た瞬間に爆発して火花を放ち、フレア塔上部のガスに点火する③。 ノルウェーのStatoil社は33万4,000ドルをかけてこの「弾道点火システム」を開発し、1憶6,700万ドル以上のコスト削減に結びつけた。4. 省エネ技術の動向(1)炭化水素の排出削減 石油や天然ガスの生産現場におけるメタンとCO2の排出のうち、CO2の不可避な排出とベント/放出(0.5%)、メタンの不可避な排出とベント/放出(86.5%)に注目した。あとの13%はフレアされるCO2である。・連続フレア源の除去 年間3.5Tcfもの天然ガスが、「不可避な排出とベント出所:OTM Consulting社写2ライン材質の破裂51石油・天然ガスレビューHSE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化Aナリシス(ウェットガス)は、まずスクラバーで随伴してくる液体(油・水)が分離されてから吸収塔の底部に入り(ガス駆動のグリコールポンプにより運ばれた)、塔頂部からの高濃度のグリコールと向流接触する。そこでガス中の水蒸気がグリコールに吸収されガスは脱湿される。脱湿後のガス(ドライガス)は吸収塔頂部を出てパイプラインへと送られる。ガス中の水蒸気を吸収したグリコールは、吸収塔底部から再生塔に送られ加熱再生される。そこで水分が蒸発除去されて高濃度になったグリコールは、いったんサージタンクに蓄えられた後、グリコールポンたプで吸収塔頂部に送られ再利用される。「再生塔を焚き上げるための熱交換器」であるリボイラーの運転温度(再生温度)は、グリコールの分解を引き起こさないように、処理するガスの脱湿程度やグリコール濃度を勘案して180~190℃の範囲に設定される。ガス駆動のグリコールポンプを電動式のポンプに置き換えることで、ガス排出も抑えエネルギー効率が上がる。電動式のポンプはガス駆動に比べピストンリングの摩耗が小さいとのこと。To Atmosphere(Methane/othervapors and water)GlycolReboiler/RegeneratorFuel GasRich TEG+GasLean TEGRich TEGTEGPumpDriver EnergyExchangePumpContactorGlycolInlet WetGasSalesGasTri-Ethylene Glycol (TEG) dehydrator schematic出所:OTM Consulting社図23TEGデハイドレーターのフロー図・石油生産現場での発電 坑井内ポンプ、ケミカル圧入、陰極防食、遠隔計測(テレメトリー)に500~1,000W(ワット)の電力を使用する。コスト削減と信頼性向上が望まれるが、発電源として太陽光パネル、ガス駆動の熱電気発電機、スターリングサイクルのエンジンが考えられる。・再生可能エネルギー資源(風力や太陽光)の利用 風力や太陽光エネルギー資源は温室効果ガスの排出がなく、本質的に無尽蔵のエネルギー資源と言える。2010.9 Vol.44 No.552 不可避な排出箇所の検知には、Chevron社の超音波や放射線(エックス線)を用いる方法やConocoPhillips社の光学エミッション技術がある(写3)。それぞれの方法により排出量が年19Mcf/マイル、2,900Mcf/設備、減ったという報告もある。出所:OTM Consulting社写3不可避な排出箇所の検知法(上:超音波法、下:光学エミッション技術)(2)エネルギー消費の削減・機器の選定と最適化 コンプレッサー、水蒸気発生器、ガスタービン、ヒーター、ポンプ、モーター他。 BPがオペレーターを務める22万b/dのFPSOでは機器の最適化により、CO2換算で年5,000億トンの排出が削減でき、それは海洋油田の全生産期間に生産されるエネルギーの1.7%以上に相当するとの試算結果がある。 コンプレッサー:容積式(往復動、回転)と回転流式/ターボ型(半径流、斜流、軸流)に大別される。 エネルギー効率の向上:タイマー付き、運転圧力・温度の最小化、機器オペレーターによる漏洩検知の技術向上、将来を見越して必要以上のコンプレッサーを設置しない。 TEGデハイドレーター(図23):脱湿前の天然ガスSE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化 太陽光発電パネルからの光電力はガスの流量制御コンピューター、RTU、SCADAの動力源として有効である。遠隔地では低電力の太陽光発電パネルを置けば、そこまで別の場所からユーティリティーのラインを延長する必要がなくなる。太陽光発電パネルは、洋上プラットホームにもエネルギー消費の少ない機器の駆動電源として設置されている。 太陽光の熱利用:熱によって温められたパイプの中を流れる油は熱交換器を介して、水蒸気発生用の水の予熱に使われる。 風力タービン発電機は平均風速が4m/s以上あると、発電できる。ShellのCutterプラットホームでは太陽光パネルと風力タービン発電機をプラットホームのトップデッキ上に併設している(後述)。 北海の水深45mに据え付けられたBeatrice Alphaプラットホーム近隣に据え付けられた5MWの風力タービン発電タワー2基によって発電された電気が、海底ケーブルを通りBeatrice Alphaプラットホームまで、送電されプラットホームで必要なエネルギーの3分の1が賄われている(図24)。・坑井内や海底における産出流体の分離や処理 坑井内に据え付ける油水セパレーター(Downhole Oil Water Separation:DOWS)には、遠心力を利用したハイドロサイクロン式と重力分離方式がある。 坑井内ポンプには、電動サブマージブルポンプ(ESP)、プログレッシブキャビティポンプ(PCP)、サッカーロッドビームポンプが挙げられる。 油水セパレーター、坑井内ポンプともに、所要エネルギーやメタン排出の削減を目指したものだ。 海底セパレーターは、海底生産システムにおいて、まだ一般的とは言えない新しい技術である(坑井からの産出流体を油・水・ガス・砂に分離)。海底セパレーターは重力式(重力分離)とサイクロン式(各相がサイクロン内で加速され分離)に大別される。例えば、海底でガスが分離できると貯留層へのガス圧入という、貯留層圧の維持を通して採油増進につながる。砂の分離は、砂によるパイプライン・チョーク・バルブの侵食の防止や軽減につながる。また、洋上施設のセパレーター配管が砂により詰まるのを防ぐ。水の分離は、配管内のハイドレート防止、小径パイプラインの適用、腐食の低減、貯留層への水圧入ほかに有効である。結果として所要エネルギーの削減になる。(3)エネルギー保存・ガスタービンの燃料多様化 Wobbe指数(kcal/N立方メートル/1,000):単位時間に、一定の圧力とノズル口径の下で供給されるガスの発熱量。 都市ガスの品質13A(13はWobbe指数、Aは燃焼速度が遅く、このため指数値は小さくなる):1万1,000kcal/N立方メートル(46.05MJ/N立方メートル)メタン91.7%、プロパン8.3%。 坑口での天然ガスのWobbe指数:図25参照。Low Calorific Value(LCV)のWobbe指数は3.5~15の範囲。90%-60%の不活性ガス(CO2、N2)。Medium Calorific Value (MCV)のWobbe指数は15~37の範囲。60%-25%の不活性ガス(CO2、N2)。不活性ガスを多く含むBeatrice Offshore WindfarmSimplified Field SchematicTurbine Unit ATalisman Beatrice APlatform Complexvreko3hg 3o stinxisble taECvk3m 30291Turbine Unit B970m 33kv出所:http://www.jdrcables.com/SubseaPowerCables/RenewableEnergySolutions/BeatriceOffshoreWindfarm/default.aspx図24北海Beatrice油田における風力発電53石油・天然ガスレビューNGのWobbe指数は25~37の範囲。NormalなWobbe指数は37~49の範囲、パイプライン仕様の天然ガス。High Calorific Value(HCV)のWobbe指数は49~65の範囲、高発熱量成分と低不活性ガス。 ガスタービンの設計基準:運転要件、環境規制、性能要件、耐久性 Dry Low Emission(DLE)燃焼システム:燃焼温度2,260℃→1,593℃、NOx 10ppm以下、CO2排出量の削減、不燃焼の炭化水素削減、Rich-Catalytic/Lean-burn catalytic combustion systems(RCL):空気と燃料の混合を触媒の力で最適にする。 マイクロタービン:Honeywell社とCapstone社。30kW~1MW。燃料に天然ガス、バイオガス、フレアガス、軽油、プロパン、灯油を使用する。フレアガス削減にベースロード電力およびバックアップ電力源として活用される。Hess社がノースダコタのフィールドで実施した2005年のパイロット施設:Capstone社の30kWマイクロタービン。サワーな排ガス(1%~1.5%のH2S)利用。CAPEX $4万5,000、OPEX $0.01~$0.07/kWh。排ガス75%減、低温、小型、エネルギー効率28%、排熱利用ほかに効果があった。・熱交換器 用途:ガス圧縮、排水処理、原料水の予熱、貯蔵タンクの保温、ガスの脱硫、原油からの砂除去、ガスの脱湿、閉鎖ループの冷却。 型:プレート型、シェル型、チューブ型に大別される。 選定基準:過度の安全仕様を避ける、熱伝導率、チューブの小径化、耐用年数と保守頻度。水がない場合は空冷の熱交換器(空気の循環、器内のフィン式放熱板の汚れ、アナリシス熱交換の効率維持にはチューブの束の中を通る空気の流れを増やすこと)。・配電 用途:ガス圧縮、排水処理、原料水の予熱、貯蔵タンクの保温、ガスの脱硫、原油からの砂除去、ガスの脱湿、閉鎖ループの冷却。 標準発電所:ガスやスチームのタービンが燃焼エネルギーを機械的エネルギー(電力)に変える。エネルギー効率<50%(排熱)、燃焼排気ガス(CO2, NOx、SOx、水蒸気ほか)。 エネルギー効率の高い発電所:排熱を回収し熱力学サイクルに組み入れる。Combined Cycle Plant(CCP)、Combined Heat and Power Plant(CHP)、Integrated Gasification Combined Cycle(IGCC)。 CCP:コジェネ、Waste Heat Recovery Unit - Steam Generator(WHRU-SG)、エネルギー効率13%向上、排気ガス25%減、燃料消費25%減を実現した(図26)。*Compared with single-cycle combustion出所:OTM Consulting社図26排熱を回収し熱力学サイクルに組み入れた発電プロセスの効率計算例出所:OTM Consulting社出所: Norwegian Petroleum Directorate. Power from land to the Norwegian shelf.2008図25坑口での天然ガスのWobbe指数図27指定発電所とCCS、市場からの電力調達の場合のCO2処理コストとCO2排出削減量2010.9 Vol.44 No.554SE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化DONG Energy - Mongstad re?nery energy projectTroll AKollsnespower gridpower gridpower to Troll via gridpower to Troll via grid(approx.180MW)(approx.180MW)Mongstadrefinerypower to refinerypower to refinery(approx.60MW)(approx.60MW)power to power to Gjoa platformGjoa platform(approx.40MW)(approx.40MW)280MW280MWelectricityelectricityCombinedCombinedheat andheat andpower plantpower plantterminalnew gas pipelinenew gas pipelineturbineselectricityelectricitygasgasapprox.350MWheatsurplus gassurplus gasgas to Europegas to Europeenergy efficiency CHP station at 70-80%energy efficiency CHP station at 70-80%出所:SEP111937, Saving energy in the oil and gas industry,2008図28ノルウェーのMongstad製油所における省エネプロジェクト(イメージ) 陸上から洋上への電力供給スタディー:Norwegian Petroleum Directorate、4エリア(北海南部、北海中部、北海北部、ノルウェー海)、シナリオ2ケース(指定発電所とCCS、市場からの電力調達)、シナリオ1のほうがトンあたりのCO2処理コストが安く、CO2排出削減量が多い結果となっている(図27)。 CHP:(図28)電力と熱をMongstad製油所へ供給する。電力を洋上の2プラットホーム(Troll A、Gjoa)へ供給する。電力を陸上のKollsnesガス処理プラントへ供給する。主要機器は、ガスタービン・スチームタービン・熱交換器。発電量はガスタービンから280MW、排熱から350MW。エネルギー効率は70~80%と高くなり、CO2の排出削減につながっている。(4) オイルサンドの生産と改質プロセスにおける省エネ技術(図29) 「炭化水素の排出削減」「エネルギー消費の削減」「エネルギー保存」のすべてに取り組んでいる。 オイルサンドの回収法は露天掘りと地中からの回収法(CHOPS、CSS、SAGD)に大別できる。 水蒸気圧入用の天然ガスは油1バレルの生産に1,000cf必要である。コジェネ(熱回収スチーム発生器)の併設は電力の調達や販売に有効(表1)。生産現場での改質も使用する天然ガスの削減に結びつく(Long Lakeプロジェクト)。 回収技術の進歩:ES-SAGD、VAPEX, THAI(加熱EOR)。THAIは水蒸気を用いず、50%の温室効果ガス削減が期待される(図30)。出所:JOGMEC調査部資料図29カナダのオイルサンド開発の概要表1地中からの回収法(CSS, SAGD)別にコジェネを併設した場合の電力の調達や販売計算例Electricity(MWh/d)PurchasedGeneratedDemandedSold030004,1953,895003,8303,5303000CSSSAGDNo CogenerationCogenerationNo CogenerationCogeneration300300300300出所:CERI55石油・天然ガスレビューAナリシスVAPEX(Vapor Extraction)加熱EOR法・火攻法・地下改質溶剤ケミカル圧入法1次回収法(Cold Production)・人工採油・CHOPS(Cold Heavy Oil Production with Sand)・水平坑井・マルチラテラル坑井非加熱EOR法(Cold Production)・水攻法・炭酸ガス圧入法ポリマー/アルカリ攻法水蒸気圧入法・水蒸気攻法・CSS(Cyclic Steam Stimulation)・SAGD(Steam Assisted Gravity Drainage)電気加熱法(事前加熱)出所:JOGMEC技術調査部Steam/foamES(Expanding Solvent)- SAGD図30重質油の回収技術の体系2010.9 Vol.44 No.556 この油田からの随伴ガスを回収し、Gazprom社のパイプラインシステムに供給する。 随伴ガスやフレアの排気物の大気排出を減らし、大気汚染の程度を和らげる。 排出権の取引は2010年第1四半期よりスタートし、随伴ガス利用プログラムは22年間続く。プログラム費用は約54億3,000万ルーブル(23億ドル)である。bcm(10億立方メートル)201510502008出所:Rosneft,20082012年Supply to Gas processingplantSupply to GazpromSupply to other usersOwn consumption and power generationFlaring5. ゼロフレアのケーススタディー(1)ロシアのKomsomolskoye(コムソモルスク)油田 Rosneft社の随伴ガス利用プログラム:2011年に95%まで利用する計画を図31に、随伴ガスの利用形態の変化を図32に示す。 自己消費(クリーム色):発電への使用増加、ガス燃焼型の油予熱器の設置、油処理に随伴ガス使用、現場オフィスや居住棟の暖房。 Komsomolskoye油田(図33、図34)。 Rosneft社の随伴ガス利用プログラムに従い、随伴ガスの利用率を95%に高める(図35)。200720082009201020112012年%100806040200 associated gas% age utilization of出所:Rosneft図31Rosneft社の随伴ガス利用プログラム図32Rosneft社の随伴ガスの利用形態の変化SE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化KomsomolskBCS with gasconditioning unitExternal gas pipelineKomsomolskoyeoil?eldGubkinsky GPPNew supply arrangementsOriginal supply arrangementsUrengoi-Chelyabinsktrunk gas pipeline出所:OTM Consulting社出所:OTM Consulting社図33 Komsomolskoye油田の位置図35 Komsomolskoye油田における随伴ガスの利用イメージ2,645,3492,404,4362,171,674201020102012年8,000,0007,000,0006,000,0005,000,0004,000,0003,000,0002,000,0001,000,000Emissions reduction (T of CO2)出所:NOAA、Google Earth出所:IGES JI Project Database図34 Komsomolskoye油田におけるガスフレアの様子図36Komsomolskoye油田における京都プロトコルのJIメカニズムの実践例(CO2換算で約720万トンの温室効果ガスを削減)[AlShaheen油田の随伴ガス削減の目的] 随伴ガスの回収、随伴ガスのパイプラインへの移送、Mesaieedガス処理プラントでの利用(図38)。[CDM] Qatar Petroleum社が望むオプション5の実現には、CDMの活用が不可欠である(図39)。したがって、図40のような体制においてCDMプロジェクトの組成が検討された。 Al Shaheen油田におけるガスフレア量をゼロにするメリットを、環境・経済性・技術・地域社会の観点から図41にまとめた。 CDMプロジェクトの実行前後におけるガス随伴ガスのフレア量の削減(180MMcf/d → 40MMcf/d)については図42を参照されたい。 年平均850万トン相当のCO2削減CDMプロジェクトは2028年まで続く(図43)。ふつ設せ 回収された随伴ガスは自己消費以外では、ドライガスとLPGに分けられ、それぞれ、Gazprom社のガスパイプラインやPurneftegaz社のパイプラインで移送される。 インフラ整備では、新しいパイプライン敷、Booster Compressor Station (BCS)の建設を行う。BCSでは随伴ガスよりLPGを回収し、ドライガスのみをパイプラインで移送する。 Rosneft社の随伴ガス利用プログラムのメリットは、地域の持続可能社会開発への貢献、大気汚染・騒音公害の軽減となっている。京都プロトコルのJIメカニズムの実践例として、2010~2012年までにCO2換算で約720万トンの温室効果ガスの削減が期待されている(図36)。(2)カタールのAl Shaheen油田 Qatar Petroleum社の操業油田(ブロック5)図37参照。Al Shaheen油田のガスフレア量はカタール全体のフレア量の20%に相当する。57石油・天然ガスレビューAナリシス出所:Al Shaheen PDD図38Al Shaheen油田における随伴ガスの処理フロー(概略) 出所:Al Shaheen PDD図39Qatar Petroleum社にとっての随伴ガス処理オプション5ケースQatar Petroleum CDMCommittee structure for AIShaheen CDM Project:UNFCCCCDM ExecutiveBoardPDD,LoA, ValidationReportDesignated OperationalEntity(DOE)LoAState of Qatar(DNA)PDDorsementGuidanceEndQpSeniorManagementCDM project TaskTeamsQPCDM COMMITTEEPDDs出所:Qatar Petroleum出所:Al Shaheen PDD図37カタールのAl Shaheen油田の位置と油田生産施設のイメージ図40Qatar Petroleum社におけるCDMプロジェクトの組成フロー2010.9 Vol.44 No.558SE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化[経済効果] 2億6,000万ドルの投資(コンプレッサー1億7,900万ドル、パイプライン3,100万ドル、ガス処理プラント増強5,000万ドル)に対して、収入は年250万ドルの排出権と年4,120万ドルのガス販売となる。キャッシュフローの試算を図44に示す。年202720252023202120192017201520132011200920076050403020100(Million tons CO2)Cumulative Emissions ReductionsCumulative cash outCumulative cash in1234567891011127006005004003002001000Million US$Use of associated gas prior toproject activityUse of associated gas aftercompletion of project activity出所:OTM Consulting社図41Al Shaheen油田におけるガスフレア量をゼロにするメリット出所:Al Shaheen PDD図43Al Shaheen油田における随伴ガスからのCO2削減予測出所:Al Shaheen PDD出所:Al Shaheen PDD図42Al Shaheen油田におけるCDMプロジェクトの実行前後での随伴ガスの利用形態図44Al Shaheen油田における随伴ガス利用のキャッシュフロー試算6. 省エネのケーススタディー(1) 北海のCutter洋上プラットホーム(モノタワー) Shell社、モノタワーのトップデッキに太陽光パネルと風力タービンを設置し、発電する省エネプロジェクトである(図45)。 北海南部の小規模なタイトガス開発:必要最小限な設備(生産、計測、近隣施設までのフローライン)、無人(居住区なし)、陸上から遠隔操作、トップデッキにヘリデッキなし、モノタワー(ジャケット構造なし)、トップデッキに太陽光パネルと風力タービンを設置し発電(1.2kWの連続発電、CO2の排出なし、海底電力ケーブル不要)、2年ごとのメンテナンス、作業船やジャッキアップによる据え付け(写4)。建造費1億4,300万ドル(従来型プラットホームの約40%)、操業費の削減、15年間の生産予定。 出荷用フローラインには緊急時用の閉止弁(ESDV: Emergency Shut Down Valve)、腐食やハイドレート生成防止用の圧入装置、海底面下に打ち込まれた4.2m径59石油・天然ガスレビューAナリシス出所: NAM Shell, K17-FA Tight Gas Development, EBN/TNO Tight Gas workshop.Utrecht. 19 Sept 2006出所:Shell社資料図45北海のCutter洋上プラットホーム(モノタワー)写4ジャッキアップによるCutterモノタワー(右)への機器据え付けのHollowパイル(赤色)、タワー(黄色、海底面でのタワーの径は2.5m)、5段のデッキ構造は水面から16mに位置する(図45)。 再生可能エネルギーの活用:Proven社の風力タービンを改良(2年間のメンテナンスフリー、2.5kWの能力)。太陽光パネルの耐用年数10年(6.12 kWのピーク発電能力、パネル2面、1面のコストは50万ユーロ)。電力の連続供給のため、7,000A/hのバッテリー2系例(6年の耐用年数)を設置し、5日分の電力を確保する。発電の運転データは計測・管理される。(2)カナダのオイルサンドプロジェクト「Long Lake」 SAGD、改質、ガス化、コジェネ発電を一体プロセスとして実施する(図46、図47)。可採埋蔵量20億バレル。[SAGD] 水平長2,550~3,500フィート(約777~1,067m)の水蒸気圧入井とビチューメンの生産井がペアで300~650フィート(約91~198m)間隔で配置される。生産井1坑あたり1,000~1,500バレル/日のビチューメンを生産する。SOR(Steam Oil Ratio, 水蒸気ビチューメン比)は約3である。2003年に3ペアの水蒸気圧入井とビチューメンの生産井でパイロット生産を開始した(図48)。[改質] 2段階の改質プロセス(OrCrude、Chevron社のイソクラッキングと中間留分ハイドロクラッキング)から成る(図49)。 PSC: Premium Sweet Crude oil出所:OTM Consulting社図46オイルサンドプロジェクト「Long Lake」の位置とプロセス概念図2010.9 Vol.44 No.560mガス化] Shell社のガス化プロセス。生産されたビチューメンを第1段階の改質後に出たアスファルテンを水蒸気と合成ガスにする。合成ガスはコジェネ発電にも使われる(図50)。開発のフェーズとコストは図51のようになっている。環境対策 ・ 天然ガス使用量の削減:1バレルのPSC(Premium Sweet Crude oil)生産に500cfの天然ガス必要(通常のSAGDと改質では1,900cfの天然ガス使用) ・閉鎖型の水循環 ・ CO2の排出削減:ライフサイクルで1バレルのPSC生産で0.15トンのCO2排出と少ないの処理:鉛、水銀、ヒ素、ニッケル、バナジウム、渣さざん ・ 残出所:OTM Consulting社図47オイルサンドプロジェクト「Long Lake」の航空写真HSE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化クロム、セレン出所:OTM Consulting社図48SAGDによるビチューメンの生産イメージ出所:OTM Consulting社図50Shell社のガス化プロセスイメージ出所:OTM Consulting社図492段階の改質プロセスイメージ出所:OTM Consulting社図51オイルサンドプロジェクト「Long Lake」の開発フェーズとコスト61石油・天然ガスレビューAナリシス7. 「ゼロフレアと省エネ化」への取り組み方(インタビュー) 39名(オペレーター18名、サービス会社10名、政府・NGO6名、コンサルタント3名、大学2名)へのインタビューをまとめた。1. 「石油生産現場におけるゼロフレアと省エネ化」の重要度 80%以上が重要と回答。 ExxonMobilのフレア削減と省エネ・コジェネ効果(温室効果ガスCO2換算):2006年192万トン(フレア48、省エネ144)、2007年528万トン(フレア232、省エネ296)、2008年736万トン(フレア368、省エネ368)と増加傾向にあると報告されている。同社は2002年から2012年までに製油所や化学プラントの省エネ効果を10%向上させるとする計画がある。上流のフレア量は50%減を目指す。2. 環境規制・戦略のトレンド 55%がより厳しくなっていると回答。27%が規制は現状不十分と回答し、あとの18%は世界の地域ごとにまちまちと回答。 欧州や北米の規制は厳しい。カーボン市場での排出権取引あり。 規制が厳しくない国ではフレア量が多い。フレア量の多いナイジェリアやロシアでは規制強化と随伴ガスの現金化に向けて活動中。実行面での課題あり。 中東ではフレア規制の考え方に幅(アブダビやカタール;ゼロフレア、サウジ;少量[2m3/バレル]は認める)がある。 IEAはナイジェリアやメキシコのフレア規制は不十分と発言している。 NOCとIOCの間には温度差(IOCの86%はより厳しくなっていると回答、一方NOCは33%の回答)がある。BPは、規制強化と経済的メリットが両立しなければ事態の好転はないと発言している。ノルウェー領北海は規制と炭素税等の経済的インセンティブが存在し、他の地域に比べ石油生産に係るエネルギー投入率が60%に抑えられている(Statoilの発言)。方がある(カタール、サウジ)。 しかし、石油天然ガス業界で登録されたCDMプロジェクトの数は2010年3月時点でまだ17件と少なく、JIプロジェクトもロシアを中心に見られるが多くないのが現状だ。 以下の事項がその理由として挙げられている。 ・CDMスキームは複雑 ・事務的サポートが不十分 ・ 小規模プロジェクトに適用できるような柔軟性に欠ける ・ガスの所有権や契約条項との絡み ・CDMのデモが投資分析に必要 ・ すべての書類がプロジェクトのスタート時点で必要 ・ Designated Operational Entity(DOE)に産業の専門家が含まれず、プロジェクトの中身がうまく理解されない4. 「石油生産現場におけるゼロフレアと省エネ化」へ向かうモチベーション 規制33%、経済性33%、規制と経済性15%、ガス利用7%、会社の方針7%、社会イメージ5%。 ・ IOCに対する規制強化 ・ NOCは経済性を求めアクション5. CO2ガスの排出源となる機器/要因 ガスフレア26%、ポンプ22%、コンプレッサー19%、ガスタービン15%、その他18%。6. CCS以外で排出削減に寄与する技術 既存機器のエネルギー効率向上52%、随伴ガスの現金化22%、炭化水素のロス削減14%、随伴ガスの現場利用12%。 ・ 既存機器のエネルギー効率向上:熱回収50%、電化15%、プラットホーム間での電力シェア8%、その他27% ・ 随伴ガスの現金化:LNG45%、小型LNG9%、CNG9%、ガスの油パイプラインへの圧入9%、GTL9%、すべての技術19%3. 京都プロトコルとCDMの重要性 70%が余り影響をうけないと回答。 中東ではガス価が安いため、CDMが機能するとの見 ・ 炭化水素のロス削減:弾道点火システム、圧縮空気によるバルブ操作、プロセス修正、点火システムの改良、蒸気回収、赤外線カメラ、リーク箇所の補修2010.9 Vol.44 No.562SE:石油生産現場におけるゼロフレアおよび省エネ化がそれぞれ14%ずつ ・ 随伴ガスの現場利用:地下圧入50%、電化33%、マイクロガスタービン17%7. 排出削減に寄与する技術の課題 既存インフラの整備コスト、排出削減の必要性、ガス価、ガス性状、ローカルなガス市場。8. 排出削減に貢献する会社 Shell23%、Statoil16%、BP16%、Chevron10%、ConocoPhillips10%、以下Total、Chesapeake、Petrobras、ExxonMobil、Eniがそれぞれ5%まとめ  世界の温室効果ガスの排出を短期間に半減するなどの非現実的な目標を立て、無理な対策を拙速で講じると、取り返しのつかない大きな副作用を引き起こすおそれ(例えば、無理なダイエットで体をこわすこと)がある。 数値目標をいたずらに競うのではなく、現実を正しく理解した上で、持続可能社会実現に向けた合理的解決策を冷静に模索し、準・低炭化水素社会を経て低炭素社会へ緩やかにソフトランディングする道筋を示すことが大事である。 温室効果ガスの排出削減対策には、省エネの推進やエネルギーシステムの高効率化、天然ガスなどの低炭素エネルギー源へのシフト、原子力や風力・太陽光などの再生可能エネルギー、森林のCO2固定化といった技術的方策と、炭素/環境税や排出権取引など市場原理を機能させる経済的かつ政策的方策が検討されている。 温室効果ガスの排出削減という問題解決に有用なコンセプトとツールとして、石油の生産現場では、「ゼロフレア」と「生産操業の省エネ化」が挙げられる。この調査報告では、そのツール適用に関して中心的な課題のいくつかの本質を考察し、解決の方向性を実例とともに解説しようと試みた。 「石油生産現場におけるゼロフレアと省エネ化」への取り組み方をインタビュー結果からまとめると、①「石油生産現場におけるゼロフレアと省エネ化」は80%以上が重要と回答した。②環境規制・戦略のトレンドは55%がより厳しくなっている、との回答であった。③京都プロトコルとCDMの重要性は70%が余り影響を受けないと回答している。複雑なCDMスキームがその背景にあるようである。④「ゼロフレアと省エネ化」へのモチベーションは規制と経済性で80%以上を占める結果であった。⑤CCS(CO2地下貯留)以外で排出削減に寄与する技術の対象としては、既存機器のエネルギー効率向上52%、随伴ガスの現金化22%が挙げられる。⑥排出削減に寄与する技術の課題は、既存インフラの整備コスト、排出削減の必要性、ガス価、ガス性状、ローカルなガス市場になる。⑦排出削減に貢献する会社としてはIOCが中心的役割を担っている。 報告者は石油工学者の一人としては、今回の調査で得た知見や経験を基に、石油生産現場におけるゼロフレアと省エネ化を通じて、CO2を中心とした温室効果ガスを削減するという環境保全への慎重な対処を実現するために、当該技術の進歩に貢献する責務があると思った。<注・解説>*1: 地球温暖化問題に対する国際的な枠組みを設定した条約。国連気候変動枠組み条約、地球温暖化防止条約、温暖化防止条約ともいう。事務局はドイツのボンにある。*2: JIの事例として、2010年7月に本邦企業も参画した。JX日鉱日石エネルギーと三菱商事がロシアのガスプロムとヤマルネネツ自治区のイエティプーロフスコエ油田の随伴ガス回収を共同実施。2009年8月~2012年12月までの間、JIに対しCO2換算で約310万トンのERUが発行される見込み。63石油・天然ガスレビューAナリシス【参考文献】1.JOGMEC石油・天然ガス資源情報ホームページ「CO2による採油増進法とCO2地下貯留の実践的側面」、2009年12月11日、伊原賢2.JOGMEC技術調査部/OTM Consulting「石油生産現場におけるゼロフレアと省エネ化に関する動向調査」、2010年3月(www.otmnet.com)3.JOGMEC石油・天然ガス資源情報ホームページ「HSE:石油生産現場におけるゼロフレア及び省エネ化」、2010年4月16日、伊原賢執筆者紹介伊原 賢(いはら まさる)1983年、東京大学工学部資源開発工学科卒業。1991年、米国タルサ大学大学院石油工学修士課程修了。1994年、東京大学博士号(工学)取得。石油学会奨励賞受賞。1983年、石油公団(当時)入団。技術部、石油開発技術センター、アラブ首長国連邦(UAE)ザクム油田操業、生産技術研究室長、天然ガス有効利用研究プロジェクトチームリーダー、JOGMECヒューストン事務所長ほかの勤務を経て、2008年7月より石油・天然ガスの上流技術の調査・分析業務に従事。専門は石油工学とC1化学。趣味はへぼゴルフ、ホットヨガ、グルメ(和食中心)。故郷の博多に加え、現在横浜の住環境も堪能中。2010.9 Vol.44 No.564
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2010/09/17 [ 2010年09月号 ] 伊原 賢
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