ページ番号1006025 更新日 平成30年2月16日

水圧破砕技術を用いた可採埋蔵量の増加 ―南長岡ガス田における水圧破砕実証実験の成功例―

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レポートID 1006025
作成日 2002-09-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 技術
著者
著者直接入力 石油工学研究室
年度 2002
Vol 35
No 5
ページ数
抽出データ 水圧破砕技術を用いた可採埋蔵量の増加―南長岡ガス田における水圧破砕実証試験の成功例―石油工学研究室*近年では新規に経済的に開発可能な油・ガス田の発見が難しくなった。このような状況を考えると,既存の油・ガス田をいかに有効に開発・生産していくか,つまり,可採埋蔵量および回収速度をいかに向上させるかが重要なポイントになる。その手段の1つとして,水圧破砕法があり,1940年代から実施されていることからも,手法としては古い部類に入り,一般的に実施されているといって良い。しかしながら,1990年代に米国GRI(Gas Research Institute)が中心となり,生産性の悪いガス田の開発について,水圧破砕キャンペーンを実施したことからも,技術的な重要性・ニーズが高いことがわかる。米国の例を持ち出すまでもなく,生産性の悪い油ガス田が世界中に存在すると考えられ,他の手法(水平坑井等)との経済性の比較検討が必要であるが,水圧破砕を適用することにより可採埋蔵量の増加が期待される。また,国内に目を向けると,火山岩貯留層からの天然ガスが主なエネルギー供給源になっているため,このような貯留層から天然ガスの有効な開発・生産が国内のエネルギー供給に影響を与えるものと考えられる。石油開発技術センター(TRC)では1997年より5ヵ年計画で帝国石油株式会社と共同で,「大深度火山岩貯留層生産性向上技術」の研究を進めてきた。これは,本邦の大深度火山岩貯留層を対象に生産性向上を設計・実証するもので,実証フィールドとしては火山岩貯留層である南長岡ガス田が選定された。南長岡ガス田は,新潟県長岡市の南に位置し,国内でも最大級のガス田であるが,貯留層は火山岩であるため,岩質の変化が著しく,ガスの流れやすさ(浸透率)の違いにより生産能力が地域により大きく異なる。本実証試験は,生産性の低い本ガス田北部地域を対象に,水圧破砕法を適用し,生産性を向上させることを目的にしている。過去に同ガス田で実施された水圧破砕法の経験を踏まえて,新たなフラクチャー理論を適用し,改良を加えた水圧破砕方法を検討した。新たな理論では,掘削時に発生するもしくは天然に存在する坑井近傍の複雑な亀裂(トーチュオシティ)とトーチュオシティに起因する複数の狭いフラクチャー(マルチプルフラクチャー)の発生を抑制することが水圧破砕法の成功の鍵となる。2001年7月?8月にかけて,6回の多段階水圧破砕が実施され,ステージ3および5ではスクリーンアウト(プロパントの目詰まり)を起こしたが,ステージ4では今回の水圧破砕の中で最大量である90,000lbs/ステージのプロパントの圧入に成功し,トータルでは311,000lbsのプロパントを圧入することができた。生産能力評価の結果,300千Nm3/dレートにおいて90日間生産時点で坑底圧が400ksc以上を示し,当初の目標(200千Nm3/dレートで90日間生産した時点で坑底圧400ksc以上)を大幅に上回る生産性改善を確認できた。今回採用した理論で実際の水圧破砕の現象を説明できた。したがって,今後も基本的に,本手法を踏襲すれば良いと考えられる。本手法は本ガス田北部地域の有効な開発手法となり,大きな経済価値を生むことが見込まれる。また,火山岩貯留層に限らず他の生産性の悪い油ガス*本稿は石油開発技術センター石油工学研究室高橋悟(E-mail:takhsi-s@jnoc.go.jp)が担当した。石油/天然ガス レビュー ’02・9―42―wについても同様に適用可能であり,様々な油ガス田での回収率向上技術の有力なオプションとなるものと期待される。1.はじめにTRCでは1997年より5ヵ年計画で帝国石油株式会社と共同で,「大深度火山岩貯留層生産性向上技術」の研究を進めてきた。これは,本邦の大深度火山岩貯留層を対象に生産性向上を設計・実証するもので,実証フィールドとしては南長岡ガス田が選定された。南長岡ガス田は,新潟県長岡市の南に位置(図1)し,国内でも最大級のガス田であるが,貯留層は火山岩であるため,岩質の変化が著しく,ガスの流れやすさ(浸透率)の違いにより生産能力が地域により大きく異なる。本ガス田の構造は,南北に長く広がっていると見られており,南部地域は比較的浸透率が高く生産能力が高い。一方,北部地域は,天然ガスの存在は確認されているものの,浸透率が低く長期連続生産が困難なことが課題となっている。実際に,試掘井が数本掘削されたが,いずれも生産能力が低く,生産井になっていないのが現状である。本研究は,この北部地域の経済的な開発を目的とし,いままでに例の少ない大深度火山岩を対象に水圧破砕(フラクチャリング)を実施し,本手法の計画,実作業,テスト解析,評価に至る総合的な技術の習得を確立するものである。2.水圧破砕法とは地層流体(油・ガス)の生産は坑井を通じて行われ,その流動は貯留層の浸透率と貯留層圧力と坑井圧力の差(ドローダウン)に依存する。図1 南長岡ガス田―43―石油/天然ガス レビュー ’02・9ハ常,坑井近傍の貯留岩は坑井を掘削してから仕上げられるまでに,掘削泥水,セメント,パーフォレーション等にさらされ,生産の障害となるダメージ(貯留層障害)を受け,場合によっては経済的に生産が不可能といった事態になる。これに対処する方法は坑井刺激技術といわれ,貯留岩本来の能力を回復しさらに改善する技術で,坑井仕上げ技術の一部として位置付けられている。主たる手法として,塩酸等による地層洗浄または溶解を促しダメージを回復させる酸処理と地層に亀裂を生成させる水圧破砕法がある。水圧破砕法は,坑井内に高圧の流体(フラクチャリング流体)を圧入することで人工的に坑井近傍の地層を破壊するもので,生成した亀裂により坑井近傍の浸透率を改善し,生産能力を向上させるものである。一度開いた亀裂が再び閉じないように,プロパントと言われる粒状の物体を注入することが行われる(図2)。水圧破砕は1940年代から実施されている手法で,現在では一般的に実施されているが,そのメカニズムは十分に解明されたとは言えず,その設計は難しい。特に,今回の対象となっている大深度の火山岩は,その生成過程で複雑な地層応力を経ているため地層内の応力分布の正確な予想が困難であることが,水圧破砕法を困難にさせている。3.水圧破砕法実証フィールドテストの計画同ガス田北部地域はその貯留層性状から経済的に開発することが困難であるので,何らかの手段を用いて,回収速度を上げる必要がある。生産性向上の手段として様々あるが,本貯留層にはその性状,深度等を考慮して水圧破砕法が最も適していると考えられた。しかしながら,火山岩貯留層に対する水圧破砕は技術的に克服するべきいくつかの点がある。実際に,10年ほど前に同ガス田北部地域で水圧破砕を2坑井実施したところ,生産能力の改善は認められたが,残念ながら経済的に成功したとはいえない結果に終わっている。今回再び水圧破砕法を検討するにあたり,過去の方法を再検討することからはじめた。3?1 水圧破砕法の改善点同ガス田北部地域において,以前実施された水圧破砕では,計画したプロパント量の20%を圧入した時点で,スクリーンアウト(プロパントの目詰まり)が起こり十分な量のプロパントを圧入することができなかった。このときの有効圧力(伸展圧力?閉合圧力)は予想外に高く,当時の理論(図3左)では,厚さ5cm程度の幅広のフラクチャ?が形成されたことになる。石油/天然ガス レビュー ’02・9―44―図2 水圧破砕モデルオかしながら,実際はスクリーンアウトをしており,幅広のフラクチャーが形成されたとは考えにくく,当時の理論では十分に説明することができなかった。近年では,新たな理論として,掘削時に発生するもしくは天然に存在する坑井近傍の複雑な亀裂(トーチュオシティ)が十分な幅とならないため一定濃度以上のプロパントが通過できず,スクリーンアウトが発生したと考えられている(図3右)。さらに,トーチュオシティに起因する複数の狭いフラクチャー(マルチプルフラクチャー)が発生することにより,それぞれのフラクチャーが開こうとして互いに押し合うため,有効圧力が上昇すると考えられるようになった。この理論によると,水圧破砕を成功させるためには,トーチュオシティの除去,マルチプルフラクチャーの伸展を避けることが重要となる。そこで,今回水圧破砕を実施するにあたり,主にトーチュオシティおよびマルチプルフラクチャーの抑制といった点を考慮して,以下に挙げられる対処方法を抽出し,新たな水圧破砕方法を検討・計画した。(1)高粘度流体・高ポンプレートトーチュオシティを抑制し,マルチプルフラクチャーの発生を抑制する効果が期待される。(2)多段階水圧破砕(ステージフラクチャリング)水圧破砕の対象となる区間を短くすることにより,圧入流体を集中させ,マルチプルフラクチャーの発生を低減させる。また,貯留層の厚さに対応するために数回の水圧破砕を実施し,区間対象が短くなることによる生産能力の低減を抑える(図4)。(3)プロパントスラグ法適切な濃度のプロパントスラグを送り込むことにより,小さな亀裂を目詰まりさせてトーチュオシティを軽減させる(図5)。プロパント濃度が低い場合は,トーチュオシティの目潰しが行われず,反対に,プロパント濃度が高い場合は,スクリーンアウトする懸念があり,プロパント濃度の調節が重要となる。(4)レートステップダウンテストメインの水圧破砕に必要な種々のデータを取得するデータフラック終了時に,段階状にシャットダウンし,フリクション解析をすることで,トーチュオシティの程度を把握する。(5)小径プロパントの使用最低限,初期の段階では小径のプロパント(30/60メッシュ)を使用し,早期スクリーンアウトの危険性を回避する。前回の水圧破砕では20/40メッシュを使用した。(6)プロパント濃度の調整プロパント濃度の調整を適切に行い,突発的なスクリーンアウトの危険性を回避させる。(7)坑井傾斜の制限図3 フラクチャー伸展のモデル―45―石油/天然ガス レビュー ’02・9B井の傾斜を垂直にすることで,マルチプルフラクチャーの発生を抑える。(8)パーフォレーションの方法フラクチャーの形成には貯留層の最大・最小水平応力とその方向が大きな影響を与える。本ガス田の地下応力の正確な把握が困難なので,穿孔方向が60度づつ変化する60度フェージングの穿孔とした。パーフォレーションを実施する時,最小水平応力よりも大きな圧力を加えるExtreamOverBalance perforation(EOB)を採用した。いずれも,坑井近傍のトーチュオシティの軽減を図4 多段階水圧破砕法の概要図5 プロパントスラグの効果石油/天然ガス レビュー ’02・9―46―レ的としている。(9)リアルタイムモニタリング常にフレキシブルなプロパント濃度の調整が可能な体制をとることとした。3?2 水圧破砕法のデザインと目標生産量生産性改善の目標として,経済的に採算がとれるレベルとして,200千Nm3/dにて90日間連続生産した後,流動坑底圧400kscg以上を維持できる能力と設定した。多段階水圧破砕法のデザインで重要な点は,何回の水圧破砕を実施し,どのくらいの大きさのフラクチャーを作る必要があるかという点である。そこで,過去同ガス田北部地域で実施された水圧破砕を参考にし,北部地域の平均的能力の坑井を仮想し,多段階水圧破砕を施した場合,どの程度の生産性向上が見込まれるかを予測した。仮想坑井で通常に行われる仕上げ方法をとった時の生産能力は,200千Nm3/dのレートを維持できる期間は10日間程度であると予測される。このような生産能力の坑井に水圧破砕を実施した場合,1段階の水圧破砕を実施するごとに生産性が向上し,目標の生産量を達成するためには少なくても6段階の水圧破砕を実施する必要がある結果が得られた。さらに,トーチュオシティの抑制効果を考慮して,フラクチャー長さを2倍にフラクチャー内浸透率が4倍になったと仮定すると,南部地域の優良坑井に匹敵するまで生産性が改善する結果が得られた。本検討を受けて,フィールドテストでは6段階の多段階水圧破砕を実施することにした。また,フラクチャーの長さや大きさに直結する水圧破砕の作業規模については,10枚のマルチプルフラクチャーが形成されたと仮定すると,平均0.2lb/ft2/fractureのプロパント濃度で21m(70ft)のフラクチャーを形成する必要があり,このときの必要なプロパント量は40,000lbsと計算された。0.2lb/ft2/fractureのプロパント濃度は,30/60メッシュのプロパントがモノレイヤー状態(プロパント単層)で充填されている状態であるが,一般的にプロパント濃度がモノレイヤー以下(パーシャルモノレイヤー)のフラクチャーでは長期的な生産性に寄与しないと言われている。図6に示すとおり,実際のフラクチャーのプロパント濃度は,坑井近傍では高濃度であり,フラクチャーの先端で図6 作業規模―47―石油/天然ガス レビュー ’02・9ヘ低濃度と予想される。高濃度部分のみ生産に寄与すると考えると,40,000lbsの作業規模では,有効なフラクチャー長さは21m以下になると考えられる。モノレイヤー以上の濃度で21mのフラクチャーを確保すれば,目標の生産量を達成できることになり,このときの必要なプロパント量は80,000lbsとなる。さらに,プロパント量80,000lbsの作業規模は,作業中の圧力挙動を見ながら,適切なプロパント濃度をフレキシブルに変えることができる。しかしながら,40,000lbsの作業規模では,途中からプロパント濃度を変更することができないというオペレーションサイドからの制限が加わることが懸念された。以上のことから,生産性向上の程度および作業のフレキシビリティを考慮し,基本的な作業規模はプロパント量80,000lbs/ステージとすることに決定した。4.フィールド実証テスト4?1 実証坑井の掘削前述で検討された水圧破砕を実施するにあたり,既存坑井の利用も考えられたが,そのためには,加圧作業をするため穿孔部を塞がなければならない。方法としては,スクイズセメンチング等が考えられるが,高圧・高温・大深度という環境での作業となることから現実的な方法ではないと考えられた。実証坑井であるので,確実な作業の実施および水圧破砕の評価を実施するために新規の実証坑井を掘削することになった。実証坑井「南長岡MHF-1号井」は,1999年11月から2000年8月にかけて掘削された。このときのドリリングチャートを図7に示す。掘削深度は5,150mで,トータルの作業日数は283日を要した。1700m付近で逸泥が発生し,作業に遅れが生じたが,それ以外がほぼ計画どおりに掘削された。ケーシングプログラムは,水圧破砕対象層付近をみると,火山岩貯留層の直前で9-5/8”ケーシングをセットし,その後8-1/2”坑を掘削するところまでは本ガス田では標準的に行われているが,水圧破砕対象層で5-1/2”ケーシングがセットされるように7”+5-1/2”ケーシングをセットした。これは,水圧破砕区間を遮断するためにサンドプラグ法(後述)を用いるが,水圧破砕後はサンドを除去する必要がある。ガ図7 実証項井「南長岡MHF-1」のドリリングチャート石油/天然ガス レビュー ’02・9―48―Xを生産する,もしくはコイルドチュービングによる浚さい作業をすることでサンドの除去を行うが,いずれの場合もガスの流速を上げることにより,サンドの除去効率を上げることができる。よって,通常7”ケーシングを使用するところを,水圧破砕用に直径が小さい5-1/2”ケーシングを使用した。さらに,サンドプラグのとき使用するプロパントの量を減らすことができるという利点も考慮した。掘削途中,胎ガス層の把握および水圧破砕デザインの基礎的データを取得することを目的として物理検層を実施し,さらに水圧破砕に必要な種々の岩石特性値(ヤング率,ポアソン比,ビオ数,フラクチャータフネス)および貯留岩特性値(浸透率・孔隙率)の測定を目的としてコアリングを実施した。コアリングは6回の定方位コアリングを含む計11回行い,累計で113.8mのコアを取得した。4?2 貯留層評価物理検層およびコアから得られたデータをもとに貯留層の評価を実施した。その結果,本坑井の貯留層能力は,近隣の北部地域坑井の貯留層と比較して,同等かあるいはやや劣ると評価された。これは,通常の仕上げ方法では,長期間にわたってガスの生産を維持することは困難であるので,何らかの方法で生産性を向上させない限り生産井とならないことを意味している。本坑井の仕上げインターバルは,その中でも相対的に良好なインターバルを選定する方針にした(表1)。特に,主な生産層であるユニッ表1 パフォレーション区間ト3全域をフラクチャーでカバーできるように仕上げ位置を選定した。4?3 水圧破砕作業の準備高レート圧入・高圧作業に備え,耐圧強化対策を施した4-1/2”チュービングを使用し,最大圧入圧力13,500psiを可能とした。水圧破砕作業に必要な機材として,フラクチャリング用タンク,高吐出力の圧入ポンプおよびその周辺機器等(ハリバートン社提供),フラクチャリング流体をつくるケミカルがある。フラクチャリング用タンクは,ブライン用も含めて50klタンク11基,40klタンク5基,30klタンク4基,計20基を用意した。フラクチャリング用ポンプには,新設計のHQ-2000 (1,750hhp)を6台,HT-2000(2,000hhp)を1台,HT-400(550hhp)を1台準備した。機材の配置および一覧をそれぞれ図8および表2に示す。また,フラクチャリング流体として,高温状態での使用に耐えられ,かつ地層にダメージを与えない流体を選定し,パーフォレーション部に入る直前で流体粘度を上昇させる添加剤には温度および時間で活性化させるものを併用した(表3)。4?4 水圧破砕作業2001年7月から8月にかけて,南長岡MHF?1号井において6段階の水圧破砕を実施した。水圧破砕作業は,図9に示すように,水圧破砕用の坑井仕上げ,フラクチャリング,クリーンアップフローに大別される。その中のフラクチャリング作業は,(1)EOB穿孔→(2)データフラック→(3)フラクチャリング→(4)フローバック→(5)サンドプラグの手順で行われ,この一連の作業を6回実施した。以下,それらの作業の概要を述べる。(1)EOB穿孔穿孔時に貯留層の破壊圧力以上の圧力をかけながら,パーフォレーションを実施する。パーフォレーションは,作業効率および地層へのダメージを最小限に抑えることを考慮し,スルーチュービングパーフォレーションを選択した。ステージ1のみは,気体(窒素)で加圧したが,それ以外のステージは液体(ブライン)で加圧した。加圧時は約13,000psiまで加圧する高―49―石油/天然ガス レビュー ’02・9}8 機材配置表2 ハリバートン社提供機材石油/天然ガス レビュー ’02・9―50―\3 ケミカル一覧図9 フラクチャリング作業手順―51―石油/天然ガス レビュー ’02・9ウ作業となるため,加圧中は部外者が立ち入らないよう作業所の門を閉めるだけでなく,現場作業者に対しても立ち入り禁止区域を設け,作業の安全に細心の注意を払った。(2)データフラックメインのフラクチャリング作業の最終的な圧入条件を設定するために必要なフラクチャー閉合圧力,トーチュオシティの程度,リークオフ係数等を把握することを目的にして行った。図10にステージ1のデータフラックの結果を示す。ブレイクダウンインジェクション(BDinj.)では可能な限り圧入流体のレートアップを図り,初期段階のフラクチャーを形成し,レートステップダウンテストを実施しながらポンプを停止し,圧力挙動を観察する。その後のミニフラック(Mini Frac)で,プロパントスラグを送ることで,トーチュオシティの減少を図った。(3)フラクチャリング基本的な作業手順は,スラリーを送入し,プロパント濃度を徐々にまたは段階的に高くし,所定のプロパント量を圧入する。坑口圧力でチュービングの耐圧である13,500psiを超えないようにポンプオペレーションを実施した。図11にプロパントの圧入に成功したステージ1の圧力挙動を示す。メインのフラクチャリングを実施する前に3回異なる濃度のプロパントスラグを送入した。2.0ppaのプロパントスラグが地層に到達した時に,坑口圧力が許容最大坑口圧力に近づいたので,ポンプの圧入レートを下げた。その後,坑口圧力の挙動を確認しながら,0.5ppaの濃度のプロパントから徐々に濃度を上げてメインのフラクチャリングを実施した。圧力挙動からプロパント濃度を上げても圧力の上昇が観測されず,フラクチャーが順調に伸展している様子が見てとれる。このときの最大圧入レートは20bbl/minで,最大プロパント濃度は4.0ppaであった。一方,スクリーンアウトしたステージ5の結果を図12に示すが,1.5ppaのプロパント濃度のスラグが地層にヒットしたときに,坑口圧力の制限に到達し,それ以上のプロパントを圧入することができなくなった。(4)フローバック図10 データフラックの圧力挙動石油/天然ガス レビュー ’02・9―52―tラクチャリング実施後,貯留層ダメージを避けるためにフローバックを1?2日間実施した。(5)サンドプラグ効果的な水圧破砕を実施するため,既に水圧破砕を実施している区間と次に実施する区間と遮断するために実施する。方法は様々あるが,作業性,コスト等を考慮して,本ガス田のような高圧・高温な貯留層でも実施可能なプロパントを坑内に充填するサンドプラグ法を用いた図11STAGE#1のフラクチャリング時の圧力挙動図12STAGE#5のフラクチャリング時の圧力挙動―53―石油/天然ガス レビュー ’02・9i図13)。水圧破砕作業の予実績を表4に示す。計画では全工程で64日を予定していたが,実績では75日要した。ステージ1および2で予定よりも作業日数を必要としたが,その原因はフローテストを実施したこと,フラクチャリング流体を作成するのに時間を要したためである。有効圧力は坑底圧力とフラクチャー閉合圧力の差である。坑底圧力は,坑口圧力,流体の液柱圧力および摩擦圧力損失から推測することができ,摩擦圧力損失は管内圧力損失,パーフォレーション部の圧力損失および坑井近傍のトーチュオシティによる圧力損失に支配される。重要なパラメータであるトーチュオシティによる4?5 圧力挙動解析と水圧破砕の評価フラクチャーの形状を評価するためには,フラクチャー閉合圧力,有効圧力等を正確に測定または算定する必要がある。はじめに,フラクチャー閉合圧力,有効圧力について述べ,その後にフラクチャーの圧力挙動解析結果について述べる。デザイン時のフラクチャー閉合圧力は,物理検層解析とコア分析および周辺坑井の実績からフラクチャーグラディエントをラバ相に対して,0.77psi/ftと決定した。これは,10,000ftの深さのフラクチャー閉合圧力は7,700psiということを意味している。実際のフラクチャー閉合圧力は,データフラック時の流体圧入後の圧力減退曲線から求められる。今回の作業で得られたフラクチャー閉合圧力は,デザイン時の予想に反して,岩相の違いによりステージ毎に異なる値を示した(図14)。表4 水圧破砕作業予実績図13 サンドプラグ石油/天然ガス レビュー ’02・9―54―ウ力損失は,管内摩擦圧力損失およびパーフォレーション部の圧力損失と比較して,流体圧入レートに依存性がないことを利用し算出する。上述のように求められたフラクチャー閉合圧力,有効圧力をもと水圧破砕時の圧力挙動解析を実施した。その結果を表5にまとめた。いずれのステージも有効圧力が3,000psi程度と高く,かつ流体効率が30%程度と低かったが,各ステージにおけるデータフラック後の最終デザインのプロパント量と比較すると,ステージ3および5以外はデザインどおりにプロパントが圧入できた(図15)。ステージ4では今回の水圧破図14 フラクチャー閉合圧力の予測と実測図15 プロパントの圧入量―55―石油/天然ガス レビュー ’02・9モの中で最大量である90,000lbs/ステージのプロパントの圧入に成功し,トータルでは311,000lbsのプロパントを圧入することができた。水圧破砕の有効圧力マッチから得られたモデル上のフラクチャー内プロパント濃度を図16に示す。ステージ2?5のプロパント濃度は,大部分がモノレイヤー以下となっているが,フローテストで十分な生産性の改善が確認されている。これは,本フラクチャーモデルでは,坑井近傍から同形状のフラクチャーが伸展すると仮定しているが,現実には様々な形状のものが坑井近傍から伸展し,しかも,フラクチャーの途中から枝分かれした複雑なフラクチャーシステムを構築しているものと考えられることから,現実のプロパント濃度を反映していない可能性がある。フローテスト解析からは,生産に寄与するフラクチャー長さは,圧力挙動解析から得られたモノレーヤーを含めた30mに達するものと推定され,デザインどおりのフラクチャーの形成ができたと解釈される。フラクチャーの形状は,平均長さ29m,平均高さ57m,累計平均幅0.19in.でマルチプルフラクチャ?の数が13.5枚であった。図17に示すとおり,どのステージもほぼ半円状で,物理検層解析から最も高い生産性を示すと考えられる区間をステージ1?3でカバーしており,当初の狙いどおりのフラクチャーを形成することができた。それと同時に,スクリーンアウトしたステージ3および5においても,フラクチャーの形成が確認でき,プロダクションロギング(PLT)の結果からも生産性に寄与していることがわかった。本水圧破砕法はマルチプルフラクチャーの抑制と坑井近傍のトーチュオシティを軽減する様々な手法がとられていることに特徴がある。次に,圧力挙動とこれらの要素との関係について述べる。図18にステージ1の坑井近傍のトーチュオシティによる圧力損失と,有効圧力およびマルチプルフラクチャー発生数を示す。圧入を繰り返表5 圧力挙動解析の結果石油/天然ガス レビュー ’02・9―56―}16 フラクチャー内プロパント濃度4450図17 フラクチャ?の形状―57―石油/天然ガス レビュー ’02・9キことにより,徐々にトーチュオシティが減少していることがわかる。一方,有効圧力,マルチプルフラクチャーの枚数は増加傾向にあり,プロパントスラグ圧入後は,有効圧力,マルチプルフラクチャーが減少傾向に転じていることが確認された。他のステージにおいても,トーチュオシティは圧入ステージが進むにしたがい減少傾向を示すが,ステージ3?6の有効圧力は,ステージ1と異なり上昇傾向を示した(図19)。有効圧力が上昇傾向にあるステージ3?6の有効圧力とマルチプルフラクチャーの発生数の関係(図20)から,ステージ6以外はマルチプルフラクチャーの数が徐々に増加していることがわかる。これは,有効圧力の上昇はマルチプルフラクチャーの数が増加することにより,各フラクチャーの幅が減少することによるフラクチャー図18 ステージ1のトーチュオシティ、有効圧力、フラクチャー枚数図19 ステージ3?6の有効圧力変化石油/天然ガス レビュー ’02・9―58―烽フ摩擦圧力損失の増加が原因であることが考えられる。このことから,坑井近傍のトーチュオシティの減少は可能であるが,坑井から離れたところで発生するフラクチャーを完全に制御することが困難と推測される。4?6 生産能力評価水圧破砕終了後,クリーンアップフロー,坑井能力を把握するためアイソクロナルテスト,坑底圧測定,PLTおよび長期フローテストを実施した。図21に長期フローテスト(300千Nm3/dレート)の結果を示す。90日経った時点で坑底圧が400ksc以上を示し,当初の目標を大幅に上回る生産性改善を確認できた。この理由として,物理検層解析,圧力解析,PLTの結果等から得られる本ガス貯留層の生産メカニズムとして,低浸透性の貯留層に有限の広がりをもつ比較的浸透率の良い部分(離散岩体)が分布し,低浸透性の層からガスの供給を受けながら生産すると想像されている。つまり,坑井の生産性は離散岩体を多く貫くことに依存するが,有限であるため低浸透性の層からガスの供給を受けなければならない。この場合,坑井から離れたところでは,離散岩体の存在が流動障害となり,通常の坑井で確認されるような貯留層ダメージとパーシャルペネトレーションによるスキンと異なる潜在的なスキンの影響があると考えられる。このような貯留層に水圧破砕を施すことにより,図22に示すように潜在的なスキンを除去する効果が得られ,生産性が向上したと考えられる。5.今後の改善点本水圧破砕は6ステージの内4ステージが計画どおりプロパントの圧入に成功し,生産性も大幅に改善できた。その技術的要因は前述のように,・フラクチャリング対象ゾーンを垂直に掘削・耐圧強化された4-1/2”チュービングを使用することによる高圧入レートの実現・パーフォレーション区間を6mに制限・小径のプロパントの使用・高粘度流体の使用・プロパントスラグの使用・リアルタイムのプロパント圧入方法の改善が挙げられる。これらはすべて,坑井近傍のトーチュオシティを減らし,プロパントの圧入量を増やすことに効果があると考え,実際にそのように貢献したものと考えている。図20 ステージ3?6のマルチプルフラクチャーの増加―59―石油/天然ガス レビュー ’02・9}21 南長岡MHF-1の坑井能力図22 フラクチャリングの効果のイメージ石油/天然ガス レビュー ’02・9―60―オたがって,今後の手法についても,基本的に今回の方法を踏襲して対処すればよいが,さらに,効果的で経済的な水圧破砕を実施するために,今後の作業の改善点として以下の方法を検討する余地があると考える。(1)圧入流体を作成(コンティニアスミキシング)しながら圧入することで,作業規模を柔軟に変更する。コンティニアスミキシングは米国では一般的に行われている手法で,水圧破砕直前でフラクチャリング流体を作成する方法である。今回のバッチ式と異なり,LGC(Liquid GelConcentrate)ブレンダーを用いる必要があるが,フラクチャリング流体の作成時間の短縮やスクリーンアウトした場合フラクチャリング流体が無駄にならない等の利点があり,コストの低減が期待される。課題点としては,フラクチャリング流体のクオリティコントロールがバッチ式よりも難しいことが挙げられ,サンプリングの頻度を上げるようなことをして,クオリティを落とさない手段を講じる必要がある。(2)穿孔区間を前の水圧破砕結果を反映させてされた水圧破砕方法の経験を踏まえ,改良を加えた水圧破砕方法を実施した。その結果,ほぼ予定通りのプロパントが地層内に圧入され,当初目標以上の生産性改善が確認された。今回実証した水圧破砕法は,本ガス田北部地域の有効な開発手法となり,大きな経済価値を生むことが見込まれる。本研究を通して,あらためて水圧破砕法に代表される坑井刺激技術の重要性を再確認できた。さらに,本研究の成果は本ガス田北部地域に限らず,経済的に開発が困難な油ガス田への適用が期待され,回収率の向上に貢献できるものと思われる。最後に,本研究に関連する水圧破砕法は延べにして十年間実施されたものであり,長年にわたる多くの方々による努力の集大成として成功するに至った。本共同研究を推進するにあたり,多大なご支援,ご協力をして頂いた帝国石油株式会社ならびに関係者各位に感謝する。参考文献・石油の開発と備蓄‘92・4 特別研究「坑井決定する。刺激技術」コンティニアスミキシングが可能になれば,水圧破砕を実施中に規模の変更が可能になるだけでなく,穿孔区間を前の水圧破砕の結果を考慮して決定することが可能になる。たとえば,スクリーンアウトした場合その直上を仕上げ,水圧破砕を実施することも考えられる。6.おわりに本研究は本邦の大深度火山岩貯留層の経済的開発を目的として,1997?2001年度まで帝国石油株式会社と共同研究として実施された。本研究の対象地域は天然ガスの賦存は確認されているが,経済的に開発が困難である新潟県南長岡ガス田の北部地域を選定し,過去同地域で実施・石油技術協会誌 第66巻 第5号 「大深度における水圧破砕作業の実施について」・石油公団・帝国石油株式会社による以下の共同研究報告書(1)平成9年度「大深度火山岩貯留層生産性向上技術開発」に関する共同研究報告書(2)平成10年度「大深度火山岩貯留層生産性向上技術開発」に関する共同研究報告書(3)平成11年度「大深度火山岩貯留層生産性向上技術開発」に関する共同研究報告書(4)平成12年度「大深度火山岩貯留層生産性向上技術開発」に関する共同研究報告書(5)平成13年度「大深度火山岩貯留層生産性向上技術開発」に関する共同研究報告書―61―石油/天然ガス レビュー ’02・9
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2002/09/30 [ 2002年09月号 ] 石油工学研究室
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