ページ番号1007724 更新日 平成31年2月20日
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概要
- 北極海での油ガス田開発は油価が高くない中で大規模投資はないが、ローキーでの探鉱・評価作業は継続され、将来に備えている。
- Novatekは2018年夏にオビ湾北部でNorth Obskoye海洋ガス田を発見(埋蔵量11.3兆cf)。
- Gazpromもカラ海で既発見ガス田での評価井掘削を行ったが、結果は公表せず、成果は不明。
- Rosneftは、2014年のカラ海でのPobeda油田の発見の後、2019年に評価井を掘削の計画。
- Yamal半島、Gydan半島での鉱区付与は盛んで、NovatekとGazprom Neftが積極的に取得。
- Gazpromが操業するヤマル半島最初のBovanenkovガス田は、生産能力を900億から1,150億立方メートル/年に引き上げ。ロシアのガス輸出量の半分を賄う規模へ。
- 2019年にはKharasaveiガス田の生産井掘削が開始され、2023-24年の生産開始を目指す。
- Gazprom NeftのNovy Port油田は2018年に14.6万b/dとなり、順調に増産中。
- NovatekのヤマルLNGは第2、3トレーンが前倒しで稼働開始、能力は計画の1,650万トン/yに。
- このため砕氷タンカーが不足。Arc 7級タンカー建造の前倒し、Arc 4級タンカーの借り入れ、Murmansk、Kamchatkaでの積み替えターミナル建造により、砕氷タンカーの回転率を上げる。
- アルクチックLNG-2は2018年10月にFEEDが完了し、エンジニアリングで伊のSiapemと契約、2019年後半の最終投資決定を目指している。
- Novatekは2030年までに年産5,700万トンのLNGが目標だが、上乗せで7,000万トンも視野に。
1.2018年に行われた主な試掘作業と今後の展望
(1)ノバテック
Novatekは2018年7月から、オビ湾の北部一帯に位置するNorth Ob鉱区で掘削を行った[1]。事業に当ったのは100%子会社のArctic LNG-3社、リグはGazprom Flotの保有するAmazonを使用した。北極圏での3番目のLNG事業を強く意識したものと思われる。この結果、同年10月にガスおよびコンデンセートのフローを確認し、North Obskoyeガス田を発見した[2]。同社プレスリリースによれば、ロシア基準での埋蔵量分類では、3,200億立方メートル(11.3兆cf)、全体の資源量は9,000億立方メートル(31.8兆cf)以上と推定される。
Yamal LNG、Arctic LNG-2に続く事業としては、North-Ob、Shtormovoye、Gydanskoyeなどが考えられているが、North Ob鉱区がまず成功ガス田として名乗りを挙げた。鉱区位置(図1)から見て、Yamal LNGから約150キロメートル北方にあり、LNG事業を行うのであれば、当然第3の基地を置くことになる。また、海洋鉱区であることから、Arctic LNG 2のような着底式プラットフォーム(Gravity Based Structure, GBS)方式になると思われる。
Novatekは、ロシア北極圏でのLNGを、現状の年産1,650万トン(他にサハリン2の960万トンあり)から2030年までに、5,800万トンまで引き上げることを目標としており、今回の発見は目標に向けた大きな一歩と言える。
[1] IOD, 2018/7/31
[2] Novatek Press Release (2018/10/10)

Yamal半島北東沖にあるのがNorth Obsky鉱区。
(2)ガスプロム
- Leningradガス田(図2参照)
Leningradガス田は、ソ連時代の最末期の1991年にカラ海で発見されたが、その後のソ連崩壊の影響によりカラ海の海洋資源開発は、2014年のPobeda油田発見まで、完全に停止していた。
ガスプロムは2017年に、カラ海のLeningradskoyeガス田で掘削を行い4枚の炭化水素層を発見した[3]。また2018年3月、同ガス田のC1カテゴリーの埋蔵量を6,700億立方メートル(23.7兆cf)引き上げた[4]。ドンスコイ(Donskoi)天然資源環境相によれば、ガスプロムは国家埋蔵量委員会に埋蔵量を申請する予定である。
2018年5月31日には、ジャッキアップ型リグArcticheskaya号が、シンガポールから2か月の移送期間をかけてムルマンスクに到着した。改修作業を地元ヤードで終えた後、重量物曳航船Albatross号によってカラ海のLeningradガス田まで曳航され、Gazpromflotの手で探鉱井を掘削した。ただし、掘削結果については、Gazpromはプレスリリースを行っていない。
- Rusanovガス田(図2参照)
Rusanovも、ソ連時代にカラ海で発見されたガス田である。
2018年2月に、ガスプロム傘下のガスプロム地質調査(Gazprom Geologorazvedka)社は、半潜水型掘削装置南海(Nanhai)8の2018年の賃借契約を、中海油田服務(China Oilfield Services Limited, COSL)と結んだ。契約金額は5,682万4,000ドル。ガスプロムは2018年に同装置を使用して、カラ海のルサノフスキー(Rusanovsky)第6探査井を掘削した。坑井の設計上の深度は2,400メートル。掘削地点の水深は68メートルである[5]。
ただし、掘削結果については、Gazpromはプレスリリースを行っていない。
- 両構造での探鉱コンセプト
Gazpromが30年近くの間隔を経て再びカラ海での探鉱を始めた理由は特段述べられていないが、衆目の一致するところ、2014年のRosneft-ExxonMobilによる東プリノヴォゼメリスキー(Vostochno-Prinovozemelsky)第1鉱区(EPNZ-1)における試掘で推定埋蔵量10億バレルのPobeda油田を発見したことが切っ掛けと思われる(図2)。ここでは、西シベリア北部で良く発達している上部白亜系Cenomanianのガス層の下位に下部白亜系~ジュラ系の油層を発見している。即ち、それまでガス地帯と思われていた北部西シベリア一帯が石油地帯となり得るという期待が高まっていた。カラ海における2つの既発見ガス田であるLeningradとRusanovについても、そのガス層の下位に油層がある可能性を確かめるための試掘を求める声があったものと思われる。
今回、両構造に関して、その結果が公表されていない理由としては、試掘結果が十分満足行くものでなかった可能性が考えらえれる。

- Gazpromによるガス埋蔵量評価の引き揚げ
Gazpromの社内報によれば、Yamal半島のTambei及びMalyginskoyeからなるTambeiガス田群のC1+C2カテゴリー埋蔵量はガス7.7兆立方メートル、コンデンセート5億9,920万トン、2,970万トンの石油に、ガス6,700億立方メートル、コンデンセート1億トンが加わった。Tambeiガス田群に関しては、嘗てWest Tambei, North Tambei, Tasiyskoyeの3ガス田からなると考えられていたが、昨年の探鉱により下部ジュラ系層準では、共通の鉱床を有することが分かった。
北極海大陸棚においては、Gazpromは7.5兆立方メートル以上のガス埋蔵量を有するが、Kara海においては2018-21年の間に1兆立方メートルを追加したい考え。昨年、GazpromはLeningradskoyeガス田の埋蔵量を8,500億立方メートル増やして1.9兆立方メートルとした(前述の通り、C1だけでは6,700億立方メートル)。これだけの資源量があっても、本格開発への着手時期は2020年代半ばと見られている[6]。
[6] IOD, 2018/4/26
(3)ロスネフチのカラ海事業
2018年2月、ロスネフチはカラ海で、Pobeda油田が発見されたEPNZ-1鉱区、および未試掘のEPNZ-2鉱区において2カ所の掘削対象構造を選定した。掘削が計画されているのは、EPNZ-1鉱区のヴィクロフスキー(Vikulovsky)構造、およびEPNZ-2鉱区のラゴジンスキー(Ragozinsky)構造である[7]掘削は、2019年を予定している。
[7] Interfax, 2018/2/01
(4)掘削リグ体制
ロシア企業は、自国海域での掘削に、ロシアのリグと掘削船を呼び戻している。
2018年3月22日、掘削船Valentin Shashin号が再びロシア船籍となった。同船は、北極圏で最も埋蔵量の多いガス田の一つであるShtokmanガス田を発見した船である。Valentin Shashin号は今後ムルマンスクを拠点に、国営Zarubezhneftの子会社であるArktikmorneftegazrazvedka (AMNRG)社の掘削作業に用いられる。また、地質調査会社のRosgeoも、同社所有の掘削船Bavenit号を世界で最も設備の整った地質調査船にグレードアップし、北極海での活動に入ることとなった[8]。
[8] PAF, 2018/6/06
2.北極圏での新規ライセンスの取得
(1)陸域
Gazprom Neftは、ヤマル半島陸域のNovyPort油ガス田近隣にあるYuzhno-Novoportov鉱区およびSurovy鉱区を探査するライセンスを取得したと発表した。ガスプロムネフチは、Novy Port油ガス田の資源基盤を大幅に拡張し、石油、コンデンセート、ガスの収益化に向けて状況を整えていく意向だ。同社は約750億ルーブルを投資し、オビ湾からYamburgガス田まで、年間輸送量100億立方メートルのガスパイプラインを建設する予定で、NovyPort油ガス田および近隣のライセンス地区に5年間で総額4,000億ルーブルを投資する計画である。同油ガス田の経済的に回収可能なC1およびC2カテゴリーの石油・コンデンセート埋蔵量は2億5,000万トン、同じくガス埋蔵量は3,200億立方メートルである[9]。
同社はまた、Gydan半島にあるLeskinsky鉱区の探鉱・開発ライセンスを付与された。期間は27年。同鉱区は3,650平方キロメートルの範囲に及び、炭化水素の推定資源量は1億1,000万toe(8億600万boe)。同鉱区では、2020年に最初の坑井を掘削し、同時に、既に入手したデータの解析を行う予定。北極圏の鉱床としては、最近ではNovatekが、南Leskinsky鉱区(ロシアの分類法による推定資源量:35億boe)のライセンスを付与された[10]。
[9] Interfax,2018/ 6/14
[10] IOD, 2018/12/11

(2)海洋
Gazprom Neftは、海洋ではオークションによって、カラ海Ob湾の浅海に位置するYuzhno-Obskyライセンス鉱区を取得した。Yuzhno-Obskyライセンス鉱区は、Gazprom Neftの生産鉱床であるNovy Port油田の南15キロメートルのところに位置している。Gazprom Neftは、Novy Port鉱床の周辺に新たなクラスターを形成することを目指しており、同鉱床の近隣で、より規模が小さいライセンス鉱区を取得しようとしている。本鉱区は、水深20メートルの浅海に位置しているため、陸上にある生産設備を使用し、Yuzhno-Obskyライセンス鉱区で生産された原油を既存ルートを使って輸送することが可能である[11]。
[11] IOD, 2018/11/30
3.生産能力の拡大
(1)ガスプロム
Gazpromは2018年12月5日、Bovanenkovskoyeガス田(埋蔵量は4兆9,000億立方メートル)の第3ステージの稼動を開始した。これにより、同ガス田のガス生産能力は900億立方メートル/yから、2022年に向けて1,150億立方メートル/yへと増強する。Gazpromの2018年のパイプラインによるガス輸出量は2,250億立方メートル超(そのうちの1,944億立方メートルが欧州向け)であるから、輸出量の半分を一つのガス田で賄うことになる。同ガス田の生産開始は2012年10月、2017年のガス生産量は828億立方メートルだった[12]。
Gazpromによると、Yamal半島のガス資源量は26兆5,000億立方メートルで、3,600億立方メートル/yの生産能力がある。Gazpromは、Bovanenkovskoyeガス田の生産能力についてNeocomian-Jurassic層(下部白亜系-ジュラ系)を開発することによって、1,400億立方メートル/yにまで増やす計画があるが、最近、当該生産量の達成時期を当初計画の2025~2026年から2027~2028年へと先送りした。同社は当面は、開発し易い近隣のKharasaveiskoyeガス田2019年から着手し、従来型の白亜系Cenomanian-Aptian層の開発に注力する予定である。生産能力は320億立方メートル/y、生産開始は2023~2024年を予定している。
[12] IOD, 2018/12/06
(2)ガスプロムネフチ
Gazprom Neftの操業子会社Gazpromneft-Yamalは、この程ヤマル半島のNovy Port油田で、ロシア産機器が用いて4坑の水平坑井の枝掘り井を39日で仕上げた[13]。これは回収率の向上に資するものである。Novy Port鉱床の2018年の原油生産量は700万トン(14万600b/d)。同鉱区の埋蔵量(D1+D2)は、約4,880万トン(3億5,770万bbl)である。
[13] Itar-Tass, 2018/1/10
(3)ノバテック
- ヤマルLNGの第2、第3、第4トレーン
Novatekは、独自の液化技術の特許「北極の滝(Arctic Cascade)」を取得し、これを適用したYamal LNG事業のLNGプランの第4トレインの建設を、2018年8月から開始した。同トレインのLNG生産能力は、90万~95万トン/年で、使用される機器のほとんどがロシア製となる予定である[14]。
既に第2トレーンは2018年7月21日から稼働を開始し(ガスを送り込まれてから8.5日後)、このトレーンからの第1船が8月7日に出航した。これは、計画よりも4か月前倒しである[15]。
次いで、11月22日には、第3トレーンが生産を開始した。これは、計画よりも1年超前倒となった。これで、当初の計画能力である年産1,650万(550万トン×3)が達成された。
Novatekは、Arctic LNG-2事業(LNG生産能力:1,980万トン/年)と合わせて、2030年までに5,700万トン/年のLNG生産を目指す計画であるが、既にトレインをあと2基増やすことも検討している。そうすれば、LNG生産量は2030年までに7,000万トン/年となる。Novatekとしては、世界のLNG市場におけるシェアの15%の確保を目標としている[16]。
- アルクチックLNG-2
Novatekは2018年10月25日、Arctic LNG-2事業のFEEDを完了したことを公表した。同事業の最終投資決定(FID)は2019年下半期、稼動開始は2022~2023年に予定されている。同事業のCapexは200~210億ドルになるとの見通し。同じくNovatekが主導するYamal LNG事業の事業費270億ドルを下回っている主な理由として、Yamal LNG事業のLNGプラントが陸上にあるのに対して、Arctic LNG-2事業のプラントは、着底式(GBS)モジュールベースの液化トレインの使用を予定していることが挙げられる[17]。
FEEDの完了を受けて12月19日、Arctic LNG-2の3トレインの建設をSaipem(伊)およびRenaissance(土)が50%ずつ出資するJVが、22億ユーロ(25億ドル)で請け負うことが発表された。Saipemは、既に2016年に、Novatekとの間で「戦略的パートナーシップ・協力協定」を締結している。各トレインや貯蔵能力6億8,700万立方メートルのLNG貯蔵施設はコンクリート製のGBS上に建設される。GBSの高さは30メートルで、Novatekが保有するMurmansk造船所の2ヶ所のdry dockで建設された後、Gydan半島のOb湾沖合に設置される予定である。
Novatekにとっては、同事業にSaipemが係わることにより、イタリアの銀行からの資金調達が容易になることを目論んでいる。イタリアの輸出信用機関 Saceは12月19日、Novatekと戦略的協力に関するMOUを締結した。同MOUは、Arctic LNG-2事業および将来的なLNG事業において、イタリア企業とパートナーシップを築くことを目的としている[18]。
現状、Arctic LNG-2への参加が決まっているのは、仏Totalの10%で、他にSaudi Aramco、や中国、日本、韓国が関心を示している。
[14] Prime, 2018/8/31
[15] IOD, 2018/8/10
[16] IOD, 2018/11/23
[17] IOD, 2018/10/26
[18] IOD, 2018/12/20
4.北極海航路の活用状況
(1)ヤマルLNGの工期前倒しの影響
ヤマルLNGプロジェクトの第2・第3ラインの稼働が前倒しとなったことから、NovatekはさらなるLNG輸送用タンカーの確保の必要に迫られている。コメルサント紙によると、同社は既にGazpromの所有するタンカー「Pskov」や、日本郵船に対してもIce2級のタンカー「Grace Dahlia」を8か月間借り受けるための交渉をしている。Novatekは当初、Arc7級のLNG輸送船15隻を新規に建造し、ヤマルのプラントからLNGを出荷する計画だった。しかし第3ラインの稼働が早まり、輸送船の納入が間に合わなくなった。ヤマルLNGでは他にもArc4級のLNG輸送船「Dynagas」を6隻、2019年から借り受ける契約を結んでいる。北海の航海規則では、Arc 4、Arc 5級のタンカーはたとえ砕氷機能があっても12月~6月の間はカラ海南西部を航行することを禁じられている。そのためNovatekはロシア政府に規則の改定を掛け合っているが、もし改定されなかったとしても、積み替えポイントをZeebruggeから北東のMurmanskなどの不凍港へ移動させれば、LNGの出荷が可能と見られる(表1参照)[19]。
カナダのTeekay Corporationは、ヤマルLNG事業のために発注した砕氷タンカー6隻のうち、残り4隻のArc7アイスクラスLNGタンカーの就航を当初の当初期限よりも3~5ヶ月前倒しで行う予定と述べた[20]。Teekay、および中国の中国液化天然気合資企業(China Shipping LNG)が設立した合弁会社はDSME(大宇造船海洋、Daewoo Shipbuilding & Marine Engineering )に、6隻のArc7アイスクラスLNGタンカー(載貨重量17万立方メートル)を発注し、6隻のうちEduard Toll号およびRudolph Samoylovich号の2隻は、2018年1月および2月に、それぞれ就航している。
国際海事機関の極致氷海船階級 | ロシア船級協会アイスクラス | FSICRのアイスクラス | 備考 |
---|---|---|---|
PC1 | 通年で全ての極海域に対応 | ||
PC2 | Arc9 | 通年で中程度の厳しさの多年氷がある海域に対応 | |
PC3 | Arc8 | 通年で多年氷が一部混在した二年氷がある海域に対応 | |
PC4 | Arc7 | 通年で多年氷が一部混在した厚い一年氷がある海域に対応 | |
PC5 | Arc6 | 通年で多年氷が一部混在する中程度の厚さの一年氷がある海域に対応 | |
PC6 | Arc5 | 1A Super | 通年で多年氷が一部混在する中程度の厚さの一年氷がある海域に対応 |
PC7 | Arc4 | 1A | 夏秋で多年氷が一部混在する薄い一年氷がある海域に対応 |
Ice3 | 1B | ||
Ice2 | 1C | ||
Ice1 |
注:PC: Ploar Class, FSICR: Finnish Swedish Ice Class Rules
(2)ヤマルLNGのShip to Shipによる洋上積み替え
商船三井は、商船三井と中国遠洋海運集団(COSCO)の合弁会社が保有する砕氷LNG船Vladimir Rusanov号が、ノルウェーのホニングスヴォーグ(Honningsvag)湾において、砕氷LNG船では初となるShip to Ship方式(STS)による荷役を実施したと発表した。今航海では、サベッタ港のヤマルLNG出荷基地で積荷役を行い、ホニングスヴォーグまで航行した後、耐氷性能が低いLNG船Pskov号との間でSTSによる揚荷役を実施し、11月24日に無事完了した。ホニングスヴォーグ湾内は周囲が外洋から遮蔽された海象が穏やかな環境であり、両船は陸上の桟橋を介さず、横並びの状態で互いを直接係留する方式でSTSを行った[21]。
この船は、2018年3月からヤマルLNGプロジェクトでサベッタ港から出荷されるLNGの西欧州向けの輸送サービスに従事しており、2週間以上の航海日数を要していたが、ホニングスヴォーグ湾でSTSでの揚荷役を行うことで、積地と揚地間の往復航海時間を1週間程度短縮することができる。これにより、砕氷能力を持つこの船を、効率的に砕氷能力の求められる北極海航路のLNG輸送に専従させる事が出来、サベッタ港からのLNG出荷の回転率を上昇させる事ができる。
[21] LNEWS, 2018/11/27
(3)LNG積み替えターミナル
Novatekは、LNGの積み替えターミナルについて、浮体式の貯蔵・積み替えターミナルが最も効率的であると考えている。2018年10月には、ターミナルに2つの貯蔵施設を設置し貯蔵容量36万立方メートルとし、タンカーが両側から接近し、積み下ろし・積み出しを同時に行うことが出来るようにする計画を公表した。現在、Kola半島のMurmansk近くとKamchatka半島にLNG積み替えターミナルを建設することを計画している[22]。
アイスクラスタンカーは、上記(2)のVladimir Rusanov号と同様、NovatekのLNG生産施設とこれらターミナルとの間のシャトル運航を行う。アイスクラスタンカーがLNGをターミナルまで輸送し、ターミナルからは、通常のLNGタンカーが各市場へとガスを運ぶことにより、Novatekの輸送コストは大幅に削減される。計画されている貯蔵・積み替えターミナルの候補地の一つとして、Murmansk市の北西約50キロメートルのところに位置するUra湾が挙げられている。Ura湾は現在、Sierra-2号やVictor-3号など、数隻の原子力潜水艦の基地として使用されている。
Kamchatka半島でのLNG積み替えターミナル建設に関して、JBICは三井物産、丸紅と協力協定を2018年9月に締結した[23]。こんごの展開が注目される。
[22] PAF, 2018/10/22
[23] Interfax, 2018/10/29
以上
(この報告は2019年2月19日時点のものです)