ページ番号1007765 更新日 平成31年4月17日

エクアドル:生産分与契約への変更で鉱区入札に活気

レポート属性
レポートID 1007765
作成日 2019-04-17 00:00:00 +0900
更新日 2019-04-17 13:56:26 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2019
Vol
No
ページ数 7
抽出データ
地域1 中南米
国1 エクアドル
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,エクアドル
2019/04/17 舩木 弥和子
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概要

  1. エネルギー・非再生可能天然資源省は2019年3月12日、北東部の8鉱区を対象にIntracampos XII入札ラウンドを実施した。メジャー等大規模な石油会社が札を入れることはなかったが、契約形態がサービス契約から生産分与契約に変更されたことにより、合計で16件の札が入り、8鉱区中7鉱区が落札され、良好な落札結果が得られたと評価されている。
  2. Moreno政権は、ITT (Ishipingo Tambococha Tiputini)油田やSacha油田の生産拡大により2021年までに原油生産量を70万b/dまで引き上げることを計画しているが、一方で、OPEC及び一部非OPEC産油国の減産合意を尊重するとしている。現時点ではITT油田の生産増と既存油田の生産減退が相殺しあう形で、石油生産量が推移している。

1.Intracampos XII入札ラウンド

エクアドルのエネルギー・非再生可能天然資源省は2019年3月12日、北東部、Oriente Basin、Sucumbíos県の8鉱区を対象にIntracampos XII入札ラウンドを実施した。19社が入札資格を得たが、最終的にGran Tierra Energy(カナダ)、Frontera Energy(カナダ)、GeoPark(チリ)、Flamingo Oil(米国)、Petrolamerec(エクアドル)、Petrobell(ウルグアイ)、Zurubezhneft(ロシア)の7社がPañayacu Norte 以外の7鉱区に16件の札を入れ、Gran Tierra Energy、Frontera、GeoPark、Flamingo Oil、Petrolamerecの5社が7鉱区を落札した。最初の4年間に7鉱区合計で3.7億ドルが投じられ、探鉱井27坑が掘削されることとなった。政府は、開発段階に8億ドルが投じられ、2024年までに1.8万b/dが生産されるとみている。5月9日までに契約が締結される予定である。

図1.Intracampos XII入札ラウンド対象鉱区図

図2.エクアドル主要鉱区、油田、パイプライン図

表1.Intracampos XII入札ラウンド結果

鉱区

原始埋蔵量(100万bbl)

面積(㎢)

応札件数

落札企業

50 Charapa

30.16

243.52

2

Gran Tierra

51 Chanangue

21.2

202.76

2

Gran Tierra

88 Perico

180.33

71.7

4

Frontera/GeoPark

89 Iguana

121.86

149.24

1

Gran Tierra

90 Sahino

202.26

98.97

3

Flamingo

91 Arazá Este

101.69

55.07

3

Petrolamerec

92 Espejo

160.37

63.34

1

Frontera/GeoPark

93 Pañayacu Norte

36.26

92.28

0

-

(エクアドルエネルギー・非再生可能天然資源省website他を基に作成)

エクアドルでは、2007年に就任したCorrea前大統領の下、2010年に契約形態が生産分与契約からサービス契約に変更され、国営石油会社がオペレーターを務めることとなったことで、Petrobras、EDC(Noble Energy子会社)等6社がエクアドルから撤退した。そして、サービス会社はエクアドルの探鉱・開発に関心を示すものの、石油会社は興味を示さなくなっていった。2017年に就任したLenín Moreno大統領はCorrea前大統領の副大統領を務めていたことから、Correa前大統領の政策を引き継ぎ、石油政策に変更はないと見られていた。しかし、Moreno大統領は就任後、探鉱・開発を活発にし、石油埋蔵量・生産量を増加させる方針へと転換し、契約形態を生産分与契約に戻すことが検討されるようになった。そして、2018年7月12日に法令449号を交付、契約形態を元の生産分与契約に変更した。この法令は今回のIntracampos XII入札ラウンドから適用されることとなった。今回の入札で対象とされた鉱区は、既存油田の周辺鉱区のためリスクは低いものの、もともと国営石油会社Petroamazonasが保有していた鉱区の一部で、すでに探鉱・開発が行われており、メジャー等大規模な石油会社の応札はなかった。しかし、合計で16件の応札があり、8鉱区中7鉱区が落札されたことから、契約形態の変更により、良好な落札結果が得られたと評価されている。

エクアドルは、次回の入札をペルー国境付近の南部16鉱区を対象に実施するとされている(時期は未定)。また、Guayaquil湾に位置するエクアドル最大のガス田であるAmistadガス田についても民間企業にオペレーターを務めさせる計画だ。これらの鉱区、ガス田についても契約形態は生産分与契約とされることとなっており、Lénin Moreno政権下で、エクアドルの探鉱・開発が進展すると期待されている。

2.生産状況

エクアドルの石油生産量は、2003年に北東部Orienteの産油地帯と太平洋岸のBalao港を結ぶ重質油専用のパイプライン、OCP (送油能力45万b/d)が完成したことで、40万b/d前後から50万b/d超に増加した。

しかし、Correa前大統領就任後には、資源ナショナリズムを反映した石油政策がとられるとの懸念から、いったん石油生産量が減少した。ところが、中国等から石油で返済することを条件とした融資(Loan for Oil)を得、探鉱・開発に充てる資金を確保、国営石油会社が直接サービス会社と契約したこと、その一方で、融資返済のために石油を増産する必要があったことから、エクアドルは2011年以降、石油生産量を増加させていった。

2014年中ごろからは、原油価格下落を受けて、サービスフィーの支払いが滞るようになった。エクアドル政府は、原油価格がサービスフィーを下回った場合には、その差額はサービスを提供する企業に対するPetroamaozasの債務として計上され、油価が上昇した時に支払うとし、しかも、契約失効時に債務が残っていた場合は、国の債務は消滅することになるとした。2015年後半にはサービスフィーの支払い滞りにより操業に影響が生じるようになり、2016年1月以降、エクアドルはサービス契約の見直し交渉を行ない、一部のサービスフィーを引き下げるようなこともした。

2017年5月にMoreno政権が成立すると、Halliburtonの役員を務めていたCarlos Pérez氏が炭化水素大臣(当時)に就任、ITT (Ishipingo Tambococha Tiputini)油田やSacha油田の生産拡大により2021年までに原油生産量を70万b/dまで引き上げるとした。しかし、同時に、OPEC及び一部非OPEC産油国の減産合意を尊重するとしている。最近ではITT油田の生産増と既存油田の生産減退(毎年15~20%)が相殺しあう形で、石油生産量が推移している。

主な油田の開発・生産状況は以下の通りである。

図3.エクアドルの石油生産量、消費量(単位:1,000b/d)

(1)Tambococha油田の生産開始で生産量が増加するITT油田

ペルーと国境を接するBlock43に位置するITT油田は、1990年代初めに発見されたが、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)から生物圏保存地域の指定を受けているYasuní国立公園内にあるため、環境破壊への懸念等の理由で長らく開発が行われなかった。Correa前大統領の時代には、エクアドルがITT油田の開発を中止する代わりに、同油田を開発した場合に得られる見込みの収入72億ドルの半分にあたる総額36億ドルをエクアドルに寄付するよう国際社会に求めたが、寄付金は集まらず、2013年8月15日、同油田の開発が決定された。まず、Tiputini油田について、Sinopecと締結されたサービス契約に基づき掘削が行われ、2016年9月7日に生産が始まった。続いて、2017年6月にTambococha油田の生産が始まる計画だったが、遅延し、2017年11月より、CNPCの系列企業CCDC (Chuanqing Drilling Engineering Company Limited)とのサービス契約に基づき、ようやく同油田の開発が始まり、2018年1月に生産開始が報じられた。ITT油田の生産量はTiputini油田生産開始当初は約2万b/dであったが、2018年末には6.4万b/d、2018年通年では58,110b/dまで増加している。加えて、Ishpingo油田は2019年9月に生産開始が予定されている。Ishpingo油田の生産量は2.5万b/dと計画されており、2019年末までにはITT油田全体で12.5万b/dを生産できる見通しとなっている。しかし、Ishpingo油田は国立公園内に位置するため、公園の外から水平坑井を掘削しなければならない等環境面でもっとも課題が多く、パイプライン等のインフラからも遠いので、他2油田に比べ開発コストも高い。国営のPetrozmazonasが中心となって開発することは困難ではないかとの見方もなされている。

なお、Yasuní国立公園の多様な生態系や先住民の権利を守るため、Petroamazonas がYasuní国立公園内で石油開発を行ってもよいエリアの面積を制限するか否かについて、2018年2月に国民投票が行われ、開発エリアを制限することに賛成する票が過半数を占めた。これを受けて、環境省、法務局等を含めて審議、検討が行われ、7月にYasuni公園の不可侵地域を50,000 ha から60,000 haに拡大すること、Yasuni国立公園内で石油開発が可能な地域の面積を1,030haから300 haに縮小することで決着がついた。Petroamazonasは、石油開発が可能な地域の面積が300 haとなっても、ITT油田開発には影響がないとしている。

図4.Block43石油生産実績及び見通し

(2)Block20のPungarayaku油田、Gran Tierra Energy が参入か

Petroecuadorは2008年にカナダ企業IvanhoeとBlock20、Pungarayacu油田のサービス契約を締結、同油田の探鉱・開発に40億ドルを投じ、2009年に5,000b/dで生産を開始、ピーク時には12万b/dを生産することを計画した。しかし、2014年2月にIvanhoeは同社の技術では契約上の条件を満たすことは不可能とし、同鉱区から撤退すると発表、同年8月にサービス契約が解除された。その後、CNPCやRepsolが同鉱区に興味を示したものの、契約締結には至らなかった。しかし、2018年3月13 日に、Gran Tierra Energy が、政府とBlock20の評価レポートを提出する契約を締結、同社が同鉱区の開発に参入する可能性が出てきた。

(3)Sacha油田、PDVSA撤退で生産増

1969年にTexaco-Gulfが発見、1972年に生産を開始したBlock60、Sacha油田は、2009年11月よりRío Napo (国営石油会社Petroecuador 70%、PDVSA 30%)が操業を行なっていた。しかし、6万 b/dを上回っていた生産量が、2011年には49,520b/dに減少した。そこで、増産を図るためPDVSAに9,420万ドルの開発投資が課された。ところが、PDVSAが支払いを行わないため、Río Napoは2016年に清算手続きに入った。その後、同油田の操業はPetroamazonasが引き継ぎ、2017年10月には生産量が約66,000 b/dまで増加した。2018年6月には、Sacha油田にエクアドルの国営石油会社以外の企業を参入させようと入札が実施され、CCDC、Sinopec、Schlumberger等が応札、CCDCが落札した。Sacha油田では227坑より引き続き約66,000 b/dが生産されているが、CCDCは10坑を掘削し、生産量を約5,000 b/d増加させるとした。

(4)Block31の生産量増加

Block31では、2011年よりPetroamazonasが探鉱・開発を行っている。2013年からApaika−Nenke油田の生産を開始、2017年10月には生産量が11,000 b/dまで増加した。環境への配慮から開発面積を広げることなく2022年には30,000 b/dを生産することを目標としているという。同油田で生産される原油のAPI比重は14.5~16度となっている。

以上

(この報告は2019年4月16日時点のものです)

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