ページ番号1007810 更新日 令和1年7月23日
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1.政治・経済情勢
(1)国内
政治・経済
サンクトペテルブルク国際経済フォーラム2019の開催
- 今年のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムが6月6日~6月8日にかけて開催された。同フォーラムは1997年から開催されており、2006年からはロシア大統領の参加のもと、各国の政府首脳や企業のトップが参加をしている。今年は145カ国から、6名の首脳を含む、19,000人以上が参加した。
- プレナリーセッションでは、プーチン大統領の他、中国の習近平国家主席、ブルガリアのラデフ大統領、アルメニアのパシニャン首相、スロバキアのペレグリニ首相、グテーレス国連事務総長が登壇した。
- プーチン大統領は同セッションでのスピーチで、近年の世界の経済成長率が3%を超えているが、現在の経済モデルは危機に瀕している、と指摘した。同大統領は、2008年~2009年の経済危機は不均衡を明らかにしただけでなく、世界的な成長メカニズムが失敗し始めていることを示したが、量的緩和策やその他の方策は問題を解決することに失敗し、問題を未来に先延ばしした、と主張した。
- また、プーチン大統領は、最近の米国に対して、貿易戦争だけではなく、実際の戦争を引き起こす懸念を示し、例としてNord Stream 2への妨害をあげ、西側諸国が優位性を利用して、貿易戦争と制裁により支配体制を保持しようとしていることを批判した。

写真出典:http://en.kremlin.ru/events/president/news/60707
第17回プーチン大統領との「直接対話」
- 6月20日、プーチン大統領が国民からの質問に直接答えるテレビ番組が放映された。この直接対話は、2001年に第1回が開催されて以来、ほぼ毎年開催されており、今回で17回目となる。番組では4時間16分の間に、プーチン大統領が81の質問に回答したが、寄せられた質問は合計で100万を超えた。
- 寄せられた質問の多くは、国民生活に直結した生活水準や収入の向上、社会保障に関するものだった。プーチン大統領も、生活水準の低さ、賃金の低さ、医療の不備、ゴミの処理方法への不安が、ロシア人にとって今最も深刻な問題である、と述べた。しかし一方で、所得は再び成長を始めており、政府は世帯の収入を改善する対策をしている、と主張した。特に、政府全体で取り組んでいる国家プロジェクトは、ロシアの経済を新たな段階に引き上げ、技術の高度化、生産性の向上、市民の生活水準の改善を実現し、長期的な視点で国家の安全保障を確保することを目的としている、と述べた。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/60795
金融
ロシア中央銀行が金利を7.5%に引き下げ
- ロシア中央銀行は、6月14日、金利を0.25%引き下げ、7.5%とすることを発表した。インフレの減速が継続しており、2019年前半の経済成長がロシア中央銀行の予測よりも低かったことが要因。
- 2019年末での年間インフレ予測も、4.7%~5.2%から、4.2%~4.7%に引き下げられた。また、2019年のGDP成長率予測についても、1.2%~1.7%から、1.0%~1.5%に引き下げられた。一方で、今後の数年間では、国家プロジェクトが実施されている中で、より高い経済成長率となる可能性があると付け加え、2020年のGDP成長率は1.8%~2.3%、2021年は2~3%との見方を維持している。
(2)対外関係
1)米国
G20での米露首脳会談
- プーチン大統領は、6月28日、G20大阪サミットのために来日した米国のトランプ大統領と、1時間20分に及ぶ会談を行った。米露首脳会談は2018年7月にフィンランドで行われて以来、約1年ぶりとなる。
- 会談後、ロシアのPeskov大統領報道官は、両首脳は両国の貿易と経済交流を阻害している要因を確認することで合意し、両国のポテンシャルに見合わない現在の貿易と経済関係の規模について議論を行った、と述べた。同報道官によると、トランプ大統領はロシアがウクライナ艦船を拿捕した事件について触れ、プーチン大統領が必要な説明を行った。また、同報道官は、米国が制裁を課すことを検討しているNord Stream 2についての議論は行われなかった、と説明した。
- また、ロシアのLavrov外務大臣は、両首脳の会談は建設的だったとコメントした。同大臣は、会談で両首脳は国際貿易と政治について議論し、軍縮及び戦略的安定性についても十分な議論を行った、としている。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/60842
2)EU
ロシアに対する経済制裁をさらに6カ月延長
- EUは、6月20日21日に開催されたEU首脳会合で、ロシアとウクライナが武力衝突した2014年にロシアの企業と個人に対して導入した経済制裁について、ミンスク合意の履行がされていないことを理由に、さらに6カ月延長することで合意した。この延長により、制裁の期限は2020年1月までとなる。制裁は何度も延長を重ねてきており、一部のロシア人のEU渡航禁止や、資産の凍結などが課されている。
3)中国
露中首脳会談、露中エネルギービジネスフォーラムを開催
- プーチン大統領は、6月5日、中国の習近平国家主席とモスクワで会談を行った。ロシアと中国は今年で外交関係樹立70周年となる。両首脳は会談で、経済的及び人道的プロジェクトの実施を深化させる議論をおこない、包括的なパートナーシップと戦略的協力の発展に関する声明等に署名した。
- 会談後に行われた記者会見でプーチン大統領は、今年の12月には「シベリアの力」パイプラインが開通する予定であること、中国も出資するYamal LNGプロジェクトが生産を開始したこと、さらにArctic LNG 2に中国企業が出資することを決めたことにも触れ、様々な協力が進んでいることを歓迎した。
- 習国家主席はモスクワの滞在のあと、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムにも出席し、6月7日には両首脳の参加のもと、第2回ロシア・中国エネルギービジネスフォーラムを開催した。フォーラムでプーチン大統領は、インフラ建設、貿易、技術開発で、二国間のエネルギーが進んでいる、と述べた。習国家主席は二国間のエネルギー協力を深化させるため、商業団体がWin-Winの利益を生むために協力を主導していく必要がある、と述べた。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/60669
4)ウクライナ
ガス供給契約のウクライナとEUとの3社間協議は9月に開催の可能性
- ロシアのNovakエネルギー大臣は、欧州委員会のSefcovic副委員長と6月13日にモスクワで会談した後、ウクライナ経由でのEUへのガス供給契約について、ウクライナとEUとの3者間協議を9月後半に行う可能性があり、また、ウクライナへのガス供給も再開の準備がある、と述べた。現在のウクライナ経由でのEUへのガス供給契約は、2019年末で期限を迎える。契約延長のためのロシアウクライナ・EUの3者間協議は今年1月に閣僚会合を開いて以降、開催されていない。
- GazpromexportのBurmistrova社長は、6月18日に、Gazpromはウクライナ経由でのEUへのガス供給契約のウクライナとの交渉について、ウクライナの議会選挙後に開始することが可能だと述べた。また、ロシアはウクライナとの短期的または中期的契約、両方について議論する用意がある、と付け加えた。ウクライナの議会選挙は10月を予定していたが、7月に前倒しをすることで調整されている。
- ウクライナへの直接のガス供給について、GazpromのMiller社長は、6月7日にウクライナ政府との会合の後、ウクライナへのガス供給を再開する議論の用意があり、ウクライナには現在、EUから輸入されているガスよりも25%安くできる、と述べた。ロシアからウクライナのガス供給については、2015年11月から停止されている。
5)日本
G20での日露首脳会談
- 安倍首相は、6月29日、G20大阪サミットのために来日したプーチン大統領と会談し、両首脳は、2018年11月のシンガポールでの首脳会談以降に、交渉責任者と交渉担当者の間で頻繁に行われた交渉の経過や今後の展望を含め、率直に議論した。両首脳は、シンガポールにおいて共に表明した、1956年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるとの決意の下で、精力的に平和条約交渉が行われていることを歓迎し、引き続き交渉を進めていくことで一致した。
- また、両首脳は「ロシアにおける日本年」「日本におけるロシア年」(日露交流年)の閉会式に出席し、両首脳は、日露交流年が成功裡に行われたことを歓迎し、2020年から2021年にかけて日露地域交流年を実施することで一致した。
- この他、ロシア政府の発表によると、プーチン大統領の日本訪問中に、日本企業のArctic LNG 2プロジェクトの参画を含む、10の日露間の合意が交わされた。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/60859
2.石油ガス産業情勢
(1)原油・石油製品輸出税
- 2019年6月、原油輸出税はUSD15.1/バレルに引き上げられ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
- 6月の石油製品輸出税はUSD 33.1/トン、ガソリンについてはUSD 60.7/トンに設定された。
(2)原油生産・輸出量
- 6月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,565万トン(約3億3,325万バレル、平均日量1,115万バレル)で、前年同月比0.8%増。
- 6月、原油輸出量は2,129万トン(約1億5,540万バレル)。前年同月比5.6%増。
Druzhbaパイプライン原油汚染の石油市場への影響は大きくなかった
- IEAは6月の石油市場レポートで、4月にDruzhbaパイプラインに汚染された原油が混入された問題で、Druzhbaパイプラインによるロシアからベラルーシへの輸出は、通常輸送されていた3月時点では、100万バレル/日だったところ、5月には10万バレルに落ち込んだことで、当初は原油供給が不足すると考えられたが、実際には大きな影響はなかった、と報告した。
- その理由として、第一に、世界的な製油需要が約25万バレル/日減少したこと。第二に、5月にポーランド、ハンガリー、チェコで合わせて30万バレル/日の緊急備蓄が放出されたこと。また、影響を受けた製油所で在庫を利用することになり、これらは15万バレル/日となったと見込まれること。第三に、Druzhbaパイプラインが停止する一方、ロシアは5月に4月と比較して、40万バレル/日以上を海上輸送で増加させたこと。第四に、汚染の影響を受けた少なくとも1,500万バレルが大きな値引きをされて売りに出されたこと、さらに、パイプラインが回復すれば、すぐに1,000万~2,000万バレルが市場に供給される見込みだったこと、としている。
- Transneftは、6月27日、7月1日にはDruzhbaパイプラインでの輸送義務を回復させ、8月中旬までにパイプラインの正常化を計画しているとしている。また、汚染された原油量は、合計で300万トン(約2,200万バレル)であったと見積もっている。
(3)天然ガス生産量
- 6月、天然ガス生産量は544億立方メートル(約1.9TCF)で、前年同月比1.7%増。
(4)減産合意
OPEC+での減算合意を延長することでサウジアラビアと合意
- プーチン大統領は、6月29日、G20大阪サミットに来日したサウジアラビアのムハンマド皇太子と会談を行い、OPEC+の枠組みで合意している減産の取り組みを延長する意向を示した。プーチン大統領は、大阪での記者会見で減産の延長期間について質問され、期間については再考する必要があるが、最大で9カ月までの延長となる、と述べた。
- Novakエネルギー大臣も、29日、ロシアとサウジアラビアのOPEC+での減産合意の延長の意思は、原油市場安定の重要な要素である、と記者に語った。
- これまで、ロシアはOPEC+での減産合意延長について明確な立場を示してこなかったが、ロシアのSiluanov財務相大臣は、6月初旬、もしOPEC+が原油供給量を継続的に管理しなければ原油価格は30ドル/バレルにまで下落する可能性がある、と述べていた。米中貿易摩擦等により世界経済の成長が減速し、原油への需要が落ち込むとの懸念が背景にあると見られている。
(5)北極海航路
Total、ムルマンスク・カムチャッカのLNG積み替え基地事業への参画を検討
- NovatekのMikhelson社長は、6月7日、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムにおいて、「Total は2019年末までに、Novatekが主導するKamchatkaおよびMurmanskのLNG積み替え基地建設事業に参加する可能性がある。プロジェクトファイナンスに80~90%の目処が立てば、この件について協議する方針である」と述べた。両基地は、北極海で生産されるLNGをそれぞれ東回りと西回りで輸送する費用の削減を目的として、2020年代初めに建設される予定。それぞれ、建設費は約1,000億ルーブルの見込み。
- Totalは、Novatekが北極海で主導するYamal LNGの権益を20%保有している他、今年3月にArctic LNG 2の権益10%を取得することで合意した。両プロジェクトには中国企業も参画をしており、積み替え基地事業には中国企業も関心を示しているとみられるが、Mikhelson社長は、Total との交渉の方が進んでいるとしている。
(6)税制・法制
燃料の固定価格制度を6月で廃止
- 政府と石油企業は、2018年11月に合意された燃料価格を固定する政府と企業の取り決めを、6月30日以降は延長しないことを決めた。他方、両者は、燃料の卸売り、小売価格の上昇率はインフレ率を超えないよう、口頭で合意を行った。この決定をするための会議は、Siluanov第一副首相兼財務大臣、Kozak副首相、石油関係企業が参加し、6月17日に開催されたと報じられている。
- 2018年10月、政府と石油企業は燃料の卸売りと小売りについて、価格を安定させるため、価格の上限値を固定することで合意した。この合意は2019年4月が期限だったが、3月に、6月末まで延長することで合意していた。
- 固定価格制度の廃止により、国内燃料価格の上昇が懸念されているが、政府は非合理に国内燃料価格が上昇しないよう、マイナス物品税や国内燃料価格と輸出価格の差の一部を政府が補償するシステムを導入している。
3.ロシア石油ガス会社の主な動き
(1)Rosneft
ロシアの市場を守るために生産を拡大
- Rosneftは、6月4日、サンクトペテルブルクで株主総会を開催した。同社の株式91.39%分の株主が参加した。Sechin社長は、OPEC+での減産合意が延長されれば、米国がロシアの原油市場のシェアを奪うかもしれないと述べた。同社長は、特にDruzhbaパイプランの問題で欧州への原油供給に支障がでている状況下で、ロシアの原油市場を守る解決策が必要とされていると主張した。
- また、Rosneftは、いかなるプロジェクトも延期する予定はないと付け加え、2022年までに3億3,000万toeまで炭化水素の生産を増加させる、と説明した。2018年の生産量は、2億8,850万toeだった。目標のうち、新規プロジェクトによる生産は20%を占めると考えられ、今後の探査活動の結果が重要となるが、Sechin社長はM&Aも視野に入れている。
BPへのガス供給は政府の許可待ち
- RosneftのSechin社長は、6月4日、BPへガス供給については、政府とエネルギー大臣の許可を待っている、と述べた。同社長は、Gazpromの欧州向けのガスは全て割り当てされており、GazpromからBPへの供給をすることはできず、RosneftがBPにガスを供給することは、Gazpromの事業を侵害しない、と説明している。また、同社長は、Rosneftの資源基盤は、Gazpromが進める「シベリアの力」パイプラインのために、ガスをGazpromに供給することも可能であると付け加えた。ロシア政府は、パイプラインでのガスの輸出はGazprom以外には許可をしていない。
- RosneftとBPは2017年6月にガス分野での協力に関する合意をしている。この合意の一部として、BPの子会社であるBP Gas Marketingは、欧州市場に販売するため、Rosneftとガスの売買契約を結ぶ意向がある。BPのDudley社長は、ロシア政府からの必要な許可が得られれば、2019年中にもRosneftからガスを買う準備ができていると述べている。
(2)Gazprom
2019年前半のガス生産量は目標を76億立方メートル上回る
- GazpromのMarkelov副社長は、6月28日に開催された株主総会で、2019年初めから当日までに生産されたガスは2,529億立方メートルで、目標を76億立方メートル上回っていると発表した。2018年の生産量は4,976億立方メートルで、目標値は4,950億立方メートルだった。
- 今年のEUとトルコへの輸出については、Miller社長は、1,986~2,011億立方メートルになるだろうと述べた。EU市場のシェアは35.5%~37.5%となる見込み。欧州のガスの輸入量は、過去3年で670億立方メートル増加しており、ガスプロムは今後もガス需要が増加することを期待している。
- 同社長は、Nord Stream 2については、Nord Stream AGのWarnig社長がデンマーク政府の規制当局と議論している、とし、対話は現在のところ建設的だ、と説明した。また、同パイプラインの建設は64.4%、1,428キロメートルが完了しており、予定通り進められている、デンマークの建設部分は130キロメートルで、5週間以内に建設が可能であるため、デンマークの建設許可が遅れていることは、2019年末までの運用開始には致命的ではない、と加えた。また、Nord Stream経由でのロシアからEUへのガス供給は、カタール・アルゼンチンからのLNGよりも50%、豪州のLNGよりも75%、米国のLNGよりも73%、カーボンフットプリントが低いと説明し、最も環境負荷が少ないと主張した。
(3)Gazprom Neft
Shellとの2つの共同事業に合意
- Gazprom Neftは、 6月6日、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、Meretoyakhinskoye鉱区を保有するMeretoyakhaneftegazの50%をShellに売却することで合意した。この契約が成立した際には、Meretoyakhaneftegazはさらに4つの探鉱または生産ライセンスを取得する見込み。鉱区は Tazovsky、North Samburg、Zapadno-Yubelieny2鉱区。埋蔵量の合計は110憶toeとなる見込み。契約は、必要な許可が得られた後、2019年末または2020年初頭に成立する見込み。
- また、同日、Repsol及びShellの3社間でGydan半島のLeskinskyとPukhutsyayakhsky鉱区を開発するためのJVを設立するための覚書に署名した。 この覚書に基づき、3者は2019年末までに詳細条件を計画し、2020年にはすべての許認可を得た上で契約を締結し、Gazprom Neftは権益の50%、RepsolとShellは25%ずつを保有する予定。Leskinsky鉱区は、クラスノヤルスクに位置し、 面積は3,027平方メートル、D2埋蔵量は1億toe。Pukhutsyayakhsky鉱区はLeskinsky鉱区に隣接しており、ヤマロ・ネネツ自治管区に位置し、面積は825平方メートル、D1・D2埋蔵量は3億5,000万toe。両鉱区は、既存の石油・ガス輸送インフラからは距離がある。
(4)Novatek
中国企業とLNGの輸送・販売で協力
- 中国の習近平国家主席がモスクワを訪問した6月5日、Novatekは、Sinopec、Gazprombankの3社で、LNGと天然ガスをエンドユーザーに販売するためのジョイントベンチャーを中国に設立することで合意した。Novatekは、このジョイントベンチャーの設立は、LNG販売を促進するだけではなく、エンドユーザーへのガス販売事業の投資機会を開くことが可能となる、としており、同社が天然ガスの開発、液化だけではなく、天然ガス販売までのバリューチェーンへの参画するための一歩だと説明している。
- また、Novatekは、6月7日、Sovcomflot、Silk Road Fund、COSCO Shippingと4者間で、Maritime Arctic Transport社(MArT)を設立することで合意した。Sovcomflotと COSCO Shippingはそれぞれロシア、中国の運送企業。Silk Road Fund は中国の投資ファンドで、Yamal LNGの権益を9.9%保有している。合意によると、4者は、NOVATEKが天然ガス開発プロジェクトを手掛けている北極海から1年を通じてアジア大洋州地域に向けてLNG輸送するため、また、アジアと西ヨーロッパ間の北極海航路での貨物輸送を管理するため、共同で開発、ファイナンスをする長期的なパートナーシップの確立を意図している。NovatekのMikhelson社長は、この合意は、北極海航路沿いでのプロジェクトで生産されたLNGの輸送手段を開発するための重要なマイルストーンである、とプレスリリースで述べている。また、ロシアは2024年までに北極海航路の輸送量を8,000万トンにする目標を手助けすることができる、としている。
4.新規LNG・P/L事業
(1)Yamal LNG
Yamal LNGプロジェクトから日本にLNGを輸送
- Novatekは、6月26日、Yamal LNGプロジェクトから初めて、Totalの長期契約で引き取ったLNGが最終需要家の受取りスケジュールに従って九州の戸畑ターミナルに到着したと発表した。同社は、LNG販売戦略上の一つの優先地である日本へのLNG輸送の開始は、重要なマイルストーンだとしている。
- Novatek社は2018年12月、西部ガス社と覚書を締結し、九州のひびきターミナルを活用してアジア太平洋地域にLNGを供給する検討を行うことで合意している。また、Novatek社はカムチャツカにLNGの積み替えターミナルを建設し、日本やその他の国へのLNG供給を拡大する計画も検討している。
(2)Arctic LNG-2
中国企業(CNPC、CNOOC)と三井物産・JOGMEC、それぞれと権益の売買契約を締結
- Novatekは6月7日、CNPCとCNOOC、それぞれとArctic LNG-2の持分10%を売却する契約を締結した。 この持分の売却については、4月末に北京で開催された一帯一路国際協力フォーラムで合意されていた。売買の履行は、ロシアと中国の規制当局の承認を得られることが条件とされている。
- また、6月29日、Novatekは、三井物産とJOGMECが共同出資するJapan Arctic LNG B.V.にArctic LNG 2の10%の持分を売却する契約を締結した。当該売買については、規制当局の承認を得て、近い将来に終えるとされている。
- これらの契約により、Arctic LNG 2の権益は60%をNovatekが保有し、Total、CNPC、CNOOC、Japan Arctic LNG B.V.の4社がそれぞれ10%ずつ保有することになる。
(3)Nord Stream 2
制裁法案が米国下院外務委員会で承認
- 6月27日、ロシアからエネルギー輸出のためのパイプライン建設に関わる船舶にパイプを供給等する者に制裁を課する法案が、米国の下院外務委員会において全会一致で承認され、下院本会議に送られた。Nord Stream 2の他、Turk Streamも対象になるとみられる。この法案の成立には、米国議会下院上院の本会議での審議、米国大統領の署名が必要となる。
- 5月には米国のPerryエネルギー庁長官が、Nord Stream 2への制裁を課すことに言及している。また、6月6日には、Perry長官は、スロベニアの国際会議の場において、欧州への米国のLNGはロシアからのパイプラインのガスに対しても競争力がある、と述べ、欧州が一つのエネルギー源、Nord Stream 2だけに頼ろうとするのは良くない考えである、と指摘している。トランプ大統領も、6月12日、ポーランドのドゥダ大統領との会談での記者会見で、同パイプラインへの制裁を検討していると発言した。

出典:http://www.gazprom.com/f/posts/76/106965/presentation-press-conf-2019-06-18-en.pdf
以上
(この報告は2019年7月23日時点のものです)