ページ番号1007926 更新日 令和1年11月19日

ロシア情勢(2019年10月 モスクワ事務所)

レポート属性
レポートID 1007926
作成日 2019-11-19 00:00:00 +0900
更新日 2019-11-19 15:31:05 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 基礎情報
著者 黒須 利彦秋月 悠也
著者直接入力
年度 2019
Vol
No
ページ数 15
抽出データ
地域1 旧ソ連
国1 ロシア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,ロシア
2019/11/19 黒須 利彦 秋月 悠也
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1. 政治・経済情勢

(1) 国内

政治・経済

Russian Energy Week 2019を開催
  • 10月2日から10月5日まで、Russian Energy Week 2019がモスクワで開催された。同フォーラムはロシア政府の政令に基づいて2017年から毎年開催されており、今年で3回目となる。同フォーラムでは、主に産業のデジタル化、石炭市場の発展、原子力エネルギー、国際原油市場の新価格傾向、燃料エネルギー企業間の協力見通し、エネルギー市場の技術開発と環境保護などが議論された。
  • 4日間のフォーラムでは、合計115の国と地域から、1万人以上が参加した。特に、各セッションの登壇者として、イランのZanganeh石油大臣、サウジアラビアのAbdulazizネルギー大臣、ベネズエラのQuevedo石油大臣、石油輸出国機構(OPEC)事務局長、ガス輸出国フォーラム事務局長、国際エネルギーフォーラム事務局長、国際再生可能エネルギー機関事務局長、各エネルギー企業の社長などの参加があった。
  • プーチン大統領は、10月2日に行われた全体会議で講演し、世界のエネルギー部門は深刻で大きな課題に直面しており、フォーラムではこれらの実質的かつ専門的な議論が予定されているとRussian Energy Weekの意義を語った。また、ロシアは安定的で予測可能な共通の未来のために、エネルギー分野の建設的なパートナーシップを求めていると述べ、国際的な協力を訴えた。
Russian Energy Week 2019の様子
Russian Energy Week 2019の様子
写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/61704

(2) 対外関係

1) ウクライナ

ブリュッセルでロシア・EU・ウクライナの3者会合を開催
  • ロシアのNovakエネルギー大臣、EU委員会のShefchovich副委員長、ウクライナのOrzhelエネルギー環境大臣は、10月28日、ブリュッセルで2020年以降のロシアからウクライナ経由でEUにガスを供給する契約について議論する3者会合を開催した。会合では、欧州の法律に基づき、ウクライナがガス輸送を行うためのプロセスとロードマップについて議論が行われた。
  • Novak大臣は、会合後に、ロシアは欧州の法律に基づいてガス供給を行う準備があること、また、必要に応じて現在の契約を調整してガス供給を継続する準備もあることを強調した、と語った。また、同大臣は、会合の中でGazpromとウクライナの国営ガス企業Naftogasとの法的紛争の解決についても議論されたと加えた。
  • 同様の3者会合は2019年11月末に開催される予定。
Miller社長がウクライナとのガス契約についてメドベージェフ首相に進捗を報告
  • GazpromのMiller社長は、10月18日、メドベージェフ首相と面談し、ウクライナとの契約について説明した。同社長は、ウクライナはまずロシアのガスを買う意向があるのかどうか、もしガスを買う意向があれば、どの程度の量なのか、はっきりした返答が必要だと述べた。また、ロシアからの直接のガス供給は、欧州経由で購入している現在のガスよりも、最大20%安くなると説明した。
  • また、同社長は、2019年末で現在の契約が切れるガス輸送契約について、ウクライナは欧州の第3次エネルギーパッケージに基づいて2020年1月1日からの契約を締結しようとしているが、この規則ではウクライナで独立したガス輸送事業者を新たに設立する必要があり、手続きに時間がかかると説明し、ウクライナが2020年1月1日までに独立した事業者を設立できなければ、現在の契約を延長するしか選択肢はない、と述べた。
  • これに対し、メドベージェフ首相は、ウクライナの大統領選前からウクライナとの対話を進めてきたことに触れ、残念ながら今春にウクライナの大統領が変わった後も問題は残っている、と指摘した。また、Miller社長に対しては、逐次報告するように指示をした。

 

2) サウジアラビア

プーチン大統領が12年ぶりにサウジアラビアを訪問
  • プーチン大統領は、10月14日、サウジアラビアを訪問し、サルマン国王と会談を行った。プーチン大統領がサウジアラビアを訪問するのは2007年2月以来で、約12年ぶりとなる。
  • サルマン国王との会談の中では、石油価格安定のための取り組みの調整、シリアとペルシャ湾地域の状況、パレスチナとイスラエルの和解について議論された。さらに、エネルギー、農業、産業、軍事技術協力、文化及び人道交流の分野での多面的な協力の構築について議論された。
  • プーチン大統領は会談の中で、サウジアラビアの参加無くして特定の地域問題を公正かつ長期的に解決することはほぼ不可能だと確信していると述べ、ロシアとサウジアラビアの調整が、中東と北アフリカの安全を確保するために必要な要素であるとの考えを示した。
  • プーチン大統領の訪問中、ロシアとサウジアラビアの間で、OPEC+の枠組みの協力を深める憲章、省庁間のエネルギー協力、Saudi Aramcoのロシアの石油生産設備製造企業Novometの出資など、21の合意に署名された。
プーチン大統領とサルマン国王
プーチン大統領とサルマン国王
写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/61799

3) アラブ首長国連邦

アブダビのムハンマド皇太子との会談を実施
  • プーチン大統領は、10月15日、アラブ首長国連邦を訪問し、アブダビ首長国のムハンマド皇太子と会談を行った。プーチン大統領がアラブ首長国連邦を訪問するのは、2007年9月以来、約12年ぶり。
  • プーチン大統領は、ムハンマド皇太子との会談の中で、両国の投資と共同事業は、新興企業、エネルギー分野、原子力の平和利用の分野で継続されていると述べた。また、両国は2018年6月にムハンマド皇太子がロシアを訪問した際、戦略的パートナーシップに関する宣言に署名しており、この宣言に従って、友好的かつ建設的に、貿易、経済、文化、人道の分野で両国の関係が拡大していることを強調した。
  • プーチン大統領の訪問中、ロシアとアラブ首長国連邦の間で、省庁間のエネルギー協力、原子力の平和利用協力、LukoilのGhasha油田権益取得などを含む6件の合意に署名された。
プーチン大統領とムハンマド皇太子
プーチン大統領とムハンマド皇太子
写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/61804

4) アフリカ

初めてのロシア・アフリカサミットを開催
  • 10月23日から24日まで、ロシアで初めてのアフリカに関する大規模会議となるロシアアフリカサミット及びロシア・アフリカ経済フォーラムがソチで開催された。サミットにはアフリカ54ヶ国からの代表が参加し、うち45ヶ国からは国家元首が参加した。フォーラムの参加者は6,000名以上で、ロシアとアフリカ諸国間で92の合意が署名され、合意額は公表されているものだけで合計1兆ルーブル以上になる。
  • プーチン大統領は、サミットでのスピーチの中で、ロシアが一貫してアフリカの民族解放運動を支持し、若い国家の形成と経済の発展、軍隊の創設に大きく貢献したと、ロシアとアフリカ諸国の絆について語った。また、アフリカ大陸の国々との関係の発展は、ロシアの外交政策の優先事項の一つであると語った。同様のサミットは3年に1度開催することが提案されている。
  • フォーラムの組織委員会事務局長で、Anton Kobyakov大統領顧問によると、ロシアとアフリカの貿易は過去5年間で倍増し、200億ドルを超えた。このうち、77億ドルがエジプトとの貿易。プーチン大統領はフォーラムの全体会合のスピーチで、現在のアフリカ諸国との貿易は少なすぎると評価し、今後4~5年でさらに倍増させることが可能だと述べた。また、プーチン大統領は、アフリカ大陸自由貿易圏の設立を歓迎し、ユーラシア経済連合との緊密な協力関係を支援すると語った。フォーラムでは、ユーラシア経済連合とアフリカ連合との間で経済協力に関する覚書も締結された。
ロシア・アフリカサミットの様子
ロシア・アフリカサミットの様子
写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/61893

2. 石油ガス産業情勢

(1) 原油・石油製品輸出税

  • 2019年10月、原油輸出税はUSD12.1/バレルに引き下げられ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
  • 10月の石油製品輸出税はUSD26.7/トン、ガソリンについてはUSD48.9/トンに設定された。

<参考:原油及び石油製品輸出税の推移>


(2) 原油生産・輸出量

  • 10月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,749万トン(約3億4,668万バレル、平均日量1,123万バレル)で、前年同月比1.7%減。
  • 10月、原油輸出量は2,379万トン(約1億7,364万バレル)。前年同月比1.9%増。

(3) 天然ガス生産量

  • 10月、天然ガス生産量は620億立方メートル(約2.2TCF)で、前年同月比2.7%減。

(4) 減産合意

OPEC+は当面の原油生産制限の条件変更は検討していない

  • Novakエネルギー大臣は、10月14日、プーチン大統領のサウジアラビア訪問に合わせてリヤドで開催されたロシアサウジ投資フォーラムで、OPEC+の原油生産制限の条件変更は検討されていないとメディアに語った。これに先立ち、プーチン大統領はサウジアラビアの現地メディアに対し、原油価格のプレッシャーにさらされないために原油埋蔵量は合理的なレベルまで下げるべきだと発言していた。Novak大臣は、このプーチン大統領の発言について、OPEC+の市場バランスに関する成功経験と、必要に応じて特定の措置をとることを意味していると思うと述べ、プーチン大統領がOPEC+の原油生産制限の条件変更は検討していないとの考えを示した。
  • 現在のOPEC+の減産合意は2020年3月末まで有効。今年9月にアブダビで開催されたOPEC+の会合では、合意されている減産を達成できていない国に対し、合意の順守を呼びかけた。

(5) 税制・法制

Priobskoyeの減税措置は6,000億ルーブル(約1兆円規模)となる可能性

  • 財務省は、10月29日、RosneftとGazprom NeftのPriobskoye油田の鉱物抽出税を減税する税法改正のための法案のドラフトを作成した。対象となるのは、ハンティ マンシ自治管区で2018年1月1日以前にライセンスが発行されており、可採埋蔵量が10億トンまたは、2018年1月1日時点で4.5億~50億トンと指定されている。鉱物資源税の減税は2020年1月1日から2029年12月31日まで有効で、この措置により、当該鉱区から1億トンの増産が可能であると見積もられている。
  • この減税による連邦政府の歳入を埋め合わせるため、法案はロシアで生産される随伴ガスについて、1,000立方メートルあたり385ルーブルの鉱物抽出税を課すことを定めている。
  • 報道によると、この法案によるPriobskoye油田の減税で、Rosneftは4,600億ルーブル、Gazprom Neftは1,350億ルーブルを得ることになる。

北極圏鉱区の支援内容で合意

  • ロシア政府は、10月24日、Siluanov第一副首相以下で北極圏での減税措置を検討する会議を開き、措置内容で合意した。減税措置の詳細は明らかにされていないが、鉱物抽出税は、枯渇率が1%に達してから12年間免除、地方法人税免除、資産税免除、土地税免除などが提案されている。
  • Trutnev副首相によると、この減税措置はNeftegazholdingが保有するPayakhskoe、Rosneftが保有するWest-Irkinskoye等に適用される可能性がある。減税措置の合計は2.1兆ルーブルと見積もられている。

メドベージェフ首相が投資保護法の採択を指示

  • メドベージェフ首相は、10月29日、ロシアでの投資を保護促進するための法案を12月16日までに採択できるように、財務省と経済発展省に指示をした。
  • Siluanov財務大臣は、10月10日、この投資保護法の主な概要について、政府内で合意が得られたとして、2週間以内に最終法案を作成し、2020年に有効となるように計画をしていると、説明していた。同大臣によると、法案は、150億ルーブルを超えるプロジェクトについて、政府と企業が投資合意書に署名を行い、政府が税制、技術規制、建設規制を含む投資に影響を与える制度の主要なパラメーターを変更しないことを定める予定。もし、政府がビジネス環境を悪化させるパラメーターの変更を承認した場合、これらのプロジェクトには3年間はこのパラメーターを適用させない。また、政府が合意に反することがあれば、プロジェクトの財政的損失を政府が補償する。一方、企業側には合意に従って、投資を実行する義務を負わせる。

3. ロシア石油ガス会社の主な動き

(1) Rosneft

West-Irkinskyのライセンスを取得

  • Rosneftは、10月15日、クラスノヤルスクのWest-Irkinsky地区のライセンスをオークションで落札した。Rosneftは4億275万ルーブルの支払い後、27年間のライセンスを取得する。Rosnedraによると、同鉱区は2,194万トンの原油と、270BCMのガスを有している可能性がある。報道では、同鉱区の入札はRosneftが政府に要望したことで実施されたもので、入札に参加したのはRosneft1社だったと報じられている。
  • 同地区付近には、RosneftがBPとジョイントベンチャー(Yermak Neftegaz)で探査をしているBaikalovskoye、Rosneftがインド企業とのジョイントベンチャー(Vankorneft)で開発しているVenkorクラスター、Neftegazholdingが保有するPayakhaクラスターがあり、RosneftはVostok Oilプロジェクトとして、これらを一体で開発、北極海航路で石油を輸送する計画をしている。
Vostok Oilプロジェクト位置図
Vostok Oilプロジェクト位置図
出典:https://www.rosneft.com/upload/site2/document_cons_report/Q32019_Results_ENG.pdf

Rosneft、原油輸出契約を米ドルからユーロ建てに変更

  • RosneftはのSechin社長は、10月24日、イタリアのベローナで開かれたEurasian Economic Forumで、米国の制裁から取引を保護するため、契約で使用する通貨を米ドルからユーロに切り替えたと発表した。Rosneftは10月2日、初めてユーロ建てで原油を販売するオークションをウェブサイトに掲載した。石油製品については、8月からユーロ建てのオークションを行っている。

(2) Gazprom

天然ガス自動車普及に関する複数の合意に署名

  • GazpromのMarkerov副社長は、10月3日、サンクトペテルブルクで開催された第9回St. Petersburg International Gas Forumで、ロシアの地方政府及び関係企業と、天然ガス自動車に関する複数の文書に署名した。
  • サンクトペテルブルクでは、Gazpromは天然ガス供給基地を、2024年までに6箇所から25箇所に増加させる。サンクトペテルブルク政府は、道路保守ユーティリティや旅客輸送企業の天然ガス自動車の台数を増加させる努力をする。レニングラードでは、Gazpromは天然ガス供給基地を2024年までに4箇所から22箇所に増加させる。レニングラード政府は、あらゆる組織と個人が天然ガス自動車を使用できるよう、天然ガス自動車への転換を促進する措置を講じる。カリーニングラードでは、Gazpromは天然ガス供給基地を2024年までに5箇所から13箇所に増加させる。カリーニングラード政府は、産業、輸送、タクシー事業向けの天然ガス自動車の拡大を促進する。
  • また、韓国の自動車メーカーHyundai Motor Manufacturingとはロシアで生産する天然ガス自動車のモデル数を増やすための協力に合意した。

Linde社とエンジニアリング会社を設立

  • GazpromのMarkelov副社長は、10月3日、サンクトペテルブルクで開催された第9回St. Petersburg International Gas Forumで、Linde Engineering社のChristian Bruch社長及びJohn van der Velden副社長との間で、Gazprom 335とLinde AGのジョイントベンチャー契約に署名した。
  • この契約により、両社はロシアで天然ガス処理と液化施設の処理、設計及びエンジニアリング文書の開発を行うジョイントベンチャーを設立する。さらに、両社は液化天然ガスプラントの運転のためのサービスを提供する予定。
  • Linde AGは、エタン、プロパンなどの回収を伴う天然ガス処理及び分離のための技術に特化した企業で、アムールガス処理プラントにはガスからヘリウムなどの石油化学物質を極低温で回収するための処理機器を供給している。また、Gazpromが計画しているBaltic LNGプロジェクトでは、Linde社の天然ガス液化技術の利用を検討していると報じられている。

4. 東シベリア・極東・サハリン情勢

(1) 東シベリア

GazpromとINK(イルクーツク石油)がクラスノヤルスクの鉱床開発で協力

  • GazpromのAksyutin副社長と、INKのBuynov社長は、10月3日、サンクトペテルブルクで開催された第9回St. Petersburg International Gas Forumでクラスノヤルスクのプロジェクトにおける炭化水素の探鉱、生産、輸送、処理、販売で協力する合意文書に署名した。対象となるのはクラスノヤルスクでGazpromが保有するSobinskoyeと、INKが保有するPaiginskoye。両社は、鉱床の共同開発に向けてフィージビリティスタディの計画をしている。
  • Gazpromは9月にプーチン大統領から、モンゴル経由で中国にパイプラインを建設する検討を指示されてから、クラスノヤルスクとイルクーツクでの探鉱活動を強化することにしている。
Aksyutin副社長とBuynov社長
Aksyutin副社長とBuynov社長
写真出典:https://www.gazprom.com/press/news/2019/october/article488906/

5. 新規LNG・P/L事業

(1) Yamal LNG

砕氷LNG船の運航会社が米国の制裁対象から除外

  • Yamal LNGの砕氷LNG船によるLNG輸送に参画しているカナダのTeekayと中国のCOSCOの子会社のジョイントベンチャーが9月25日に米国の制裁対象から除外されることになった。
  • イランの原油取引に関わったとして制裁対象となったCOSCO Shipping Tanker(Dalian)社は、China LNG Shipping(Holdings)社(CLNG)の株式を50%保有しており、このCLNGはカナダのTeekay社と50%出資のジョイントベンチャーを設立してYamal LNGプロジェクトで利用される砕氷LNG船によるLNG輸送に参画していた。米国制裁のルールによると、制裁対象者の50%以上の子会社は同じく制裁の対象となるため、このジョイントベンチャーについても制裁の対象となっていた。しかし、10月21日付、COSCO Shipping Tanker(Dalian)CO., LTD.が保有していたCLNGの50%の株式をCOSCO Shipping Energy Transportation Co., Ltdに譲渡し、Yamal LNGの砕氷LNG船を運行管理するジョイントベンチャーは制裁対象から除外された。
<参考>SDN対象となったCOSCO2社との出資関係(想定)
出典:JOGMEC作成

(2) Arctic LNG 2

Novatek持分40%の売却益は約6,750億ルーブル(約1.1兆円)

  • Novatekは、10月30日に発表した2019年第3四半期の財務レポートのなかで、Arctic LNG 2の持分30%の売却益は3,663.9億ルーブル(所得税税引き前)だったと発表した。Totalに売却した10%分も含めると、合計持分40%の売却益は合計6,749.68億ルーブルとなった。
  • Novatekは今年、Arctic LNG 2の持分をフランスのTotal、中国のCNPC、CNOOC、日本のJapan Arctic LNG B.V.(三井物産とJOGMECが共同出資)にそれぞれ10%ずつ売却する契約を締結し、Novatekの持分は60%となっている。

(3) シベリアの力P/L

ロシア側パイプラインのガス充填を完了

  • Gazpromは中国へガスを輸送するシベリアの力パイプラインの天然ガスの充填を完了したと発表した。パイプラインのガスは、サハ共和国のChayandinskoye鉱区から、中国国境付近に位置するブラゴヴェシチェンスクのガス測定基地まで到達した。この後、アムール川を越え、中国側に続くパイプラインにガスを充填することになる。
  • GazpromとCNPCは2014年5月に、この東回りのシベリアの力パイプラインでの30年間のガス売買契約に署名している。パイプラインの最大容量は年間38BCM。Gazpromは中国へのガス供給開始を2019年12月2日からとしている。
シベリアの力パイプライン位置図
シベリアの力パイプライン位置図
出典:https://www.gazprom.com/press/news/2019/october/article490359/

(4) Nord Stream 2

デンマークがパイプラインの建設を許可

  • デンマークのエネルギー庁は、10月30日、デンマークの排他的経済水域内でのNord Stream 2パイプラインの建設を許可した。許可されたのは、環境影響が少ないとされるボーンホルム島の南東を通る短い方(147㎞)のルート。
  • ロシアからドイツまでのNord Stream 2パイプラインが通過する5ヶ国のうち、環境への影響等を理由に許可が得られていなかったのはデンマークのみで、2017年4月から許可が下りるまでに2年以上がかかった。建設許可の見通しが立たない中、10月初旬に開催されたRussian Energy Weekではプーチン大統領がデンマークを迂回するルート案にも言及していた。
  • Nord Stream 2 AGによると、10月30日時点でパイプラインの8割以上にあたる2,100km以上の建設が完了している。Gazpromはパイプラインの年内の完成を予定しているが、GazpromのMiller社長が以前伝えたところによると、デンマークの区域のパイプライン建設には約5週間がかかる。
Nord Stream 2の位置図
Nord Stream 2の位置図
出典:https://www.nord-stream2.com/media-info/maps/にJOGMEC加筆

(5) Turk Stream

ガスの充填開始

  • South Stream Transport B.V.は、10月18日、TurkStreamパイプラインの第1ラインへのガス充填を開始したと発表した。第2ラインへのガス充填は、第1ラインのガス充填後に行われ、ガスの販売開始は2019年末までに開始することが予定されている。
  • トルコ側のガス受入基地の建設は最終段階に入っており、トルコのガス輸送オペレーターのBOTASがTurkStreamとトルコのガスネットワークを接続する陸上のパイプラインの建設を行っている。また、GazpromとBOTASのジョイントベンチャーは、欧州に向けた陸上の第2ラインを建設している。
  • また、ロシアのNovakエネルギー大臣は、10月22日、TurkStreamからのブルガリアへのガス供給には何も支障がないと語り、2020年1月には供給が開始できるとの見込みをメディアに伝えた。
TurkStream位置図
TurkStream位置図
出典:https://www.gazprom.com/press/news/2019/october/article489485/

以上

(この報告は2019年11月18日時点のものです)

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