ページ番号1007434 更新日 平成30年4月10日
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概要
- 2017年のベネズエラの原油生産量は207万2,000 b/dと、2016年の237万3,000b/dから約30万b/d減少した。月別の原油生産量も、2016年12月の227万b/dから2017年12月には162万1,000 b/dに減少した。原油確認埋蔵量についても見直す必要があるとの見方が出ており、Rystad Energyはベネズエラの原油可採埋蔵量は750億bblであるとしている。サービス会社に対する支払いの遅延は合計で15億ドルに達し、サービス会社は操業を縮小、2017年10月のリグ稼動数は39基まで落ち込んだ。2017年11月には、石油業界での経験がない軍人のManuel Quevedo氏がPDVSA総裁兼石油相に就任し、同氏がPDVSA要職に軍幹部を登用するのではないかとの憶測や、汚職撲滅を試みPDVSA経営陣を刷新したことなどへの不満からPDVSA内で抗議行動が頻発、離職する者が増加、操業に支障が生じている。2017年7月30日に実施された制憲議会議員選挙を契機に、米国のベネズエラに対する制裁が強化され、8月25日には、米国の金融機関に対し、新たに発行されるベネズエラの国債やPDVSA債の取引を禁じる措置が盛り込まれた制裁が発動された。生産量減少に伴う原油の不足、火災、機材の故障、部品の不足等により、PDVSA保有の製油所の稼働率は2017年7月に50%、年末には15% と低い水準で推移している。また、資金不足による不十分なタンカーの掃除や点検、原油の品質低下、原油生産量の減少、米国の制裁等により石油の輸出入にも影響が生じている。これまでベネズエラを資金面で支援してきた中国だが、Sinopecが鋼鉄代金未払いを理由にPDVSAを提訴するという事態が発生しており、中国が今後も融資を行っていくのか否かは明らかではない。一方、ロシアはベネズエラとの関係を強化する姿勢を示している。
- PDVSAは2021年までに原油生産量を600万b/dに引き上げることを計画していたが、2016年に長期の投資計画を調整、原油生産量を2025年までに318万b/dに増加させることとした。PDVSAはこの生産目標を達成するのに必要な投資額を760億ドルと見積もっている。
- 炭化水素法が、大統領は国会の承認なしでPDVSAが保有する油田やプロジェクトの権益を売却できると変更された。PDVSA は外資石油企業に対し法律上の安全性を保障するとしているものの、石油企業は不安定な状況下で操業を続けている。PDVSA、IOCともに原油生産量を維持することも難しい状況にあり、さらに原油生産量が減少する可能性が高いと見られている。
1.原油生産量減少
OPECMonthly Oil Market Reportによると、2017年のベネズエラの原油生産量は、2016年の237万3,000b/dから約30万b/d減少し207万2,000 b/dとなった。これは1980年代半ば以降最低水準で、OPEC加盟国で最大の減少である。月別の原油生産量を見ても、2016年12月には227万b/dであったベネズエラの原油生産量が、2017年12月には162万1,000 b/dと65万b/d以上減少した。サウジアラビアやロシアがOPEC主導の協調減産により生産を削減しているのに対し、ベネズエラは生産量の減少を食い止めることができない状態となっている。
図1 ベネズエラの原油生産量(2016~2017年、単位:万b/d)
(OPEC Monthly Oil Marketを基に作成)
ベネズエラの原油生産量の減少の原因は、引き続き、政治、経済状況、投資不足、サービス会社への支払いの遅れ、リグ数の減少、人材の流出、希釈剤不足等と考えられるが、その状況は一段と悪化しており、2017年はこれに米国の経済制裁が加わった。したがって、2018年もベネズエラの原油生産量は回復が見込めず、西部を中心に生産減が加速するというのが大方の見方となっている。Maduro大統領は2018年に入ってから生産量を25万b/d増加させたと発言しているものの、2018年の原油生産量については、150万b/d、あるいは、それ以下に減少すると見る向きもある。
なお、3,000億bbl以上とされているベネズエラの原油確認埋蔵量についても、原油価格の動向、高い生産コスト、現在の政治、経済状況等から見直す必要があるとの見方が出ている。Rystad Energyは政府の公式発表の数字ではなく、SPE基準を採用し、ベネズエラの原油可採埋蔵量はブラジルを下回る750億bblであるとした。環境問題からも国際石油会社(IOC:International Oil Company)はコスト高な超重質原油を生産、開発する意欲を失っており、ベネズエラの石油の多くは開発されずに地中に残されたままになる可能性があるとしている。Rystad Energyは2015年にもベネズエラの石油の半分以上はBrentが60ドル/bbl以下では経済性がないと指摘し、同国の埋蔵量はサウジアラビアの10%に過ぎないとしていた[1]。
[1] PON,2017/7/10
2.サービス会社への支払い遅延、リグ数の減少
2017年は原油価格の回復がみられたが、売り上げ増の大半は債務の返済に回され、探鉱・開発に再投資されることはほとんどなく、サービス会社に遅滞なく支払いを行うこともできていない。サービス会社Schlumberger、Halliburton、GE Baker Hughes、Weatherfordに対する支払いの遅延は合計で15億ドルに達している[1]という。サービス会社は2016年4月以降、十分な支払いを受けられないことを理由にベネズエラでの操業を縮小した。その結果、Baker Hughesによるリグ稼動数は2016年半ば以降急減し、50基前後で推移していたが、2017年9月以降再び急減し10月には39基まで落ち込んだ。12月には50基まで回復したものの、元PDVSA従業員のアナリストEinstein Millan氏によると、ベネズエラが生産減少を食い止め増産に転じるには100~110基のリグが必要であるという[2]。資金不足から壊れたリグを修理するための部品を輸入することが難しく、他の壊れたリグを解体し、その部品を利用している状況と伝えられており、リグ数がさらに減少することが懸念されている。
[1] PIW,2017/11/27
[2] LatAmOil,2018/1/9、PON,2018/1/10
図2 ベネズエラのリグ稼動数
(出所:BakerHuges websiteを基に作成)
3.人材不足
ベネズエラでは2003年に、PDVSA従業員1万8,000人(その多くは上層部やエンジニア)がゼネストに参加したことを理由にChavez大統領により解雇された。近年では、政治、経済状況の悪化から、PDVSAの従業員が米国、カナダ、コロンビア等に移住するようになっている。2017年に入ってからは、5月に、Orinoco Belt、Petropiarプロジェクトのマネージャーが契約に不正があったとして逮捕されるなど、PDVSA幹部の逮捕が相次いでいる。特に、8月に人権擁護官だったTarek William Saab氏が検察長官に就任してからはPDVSA幹部60名以上が逮捕された。商品やサービスの価格が高いとの従業員の申し立てを受け、2015年より行われた捜査に基づき、2016年に議会がPDVSAの資金110億ドルが行方不明になっているとの報告を行っており、一連のPDVSA幹部逮捕はこの関連と考えられる。
さらに、2017年には頻繁にPDVSA総裁と石油相が交代した。Nicolás Maduro大統領は1月4日、内閣改造を実施し、石油大臣にPDVSAの米国精製・販売部門子会社Citgoのトップを務めていたNelson Martinez氏を任命した。Eulogio Antonio Del Pino Diaz氏は、石油相からは外れたものの、引き続きPDVSA総裁を務めることとなった。Del Pino氏はMaduro大統領と石油政策に関ししばしば衝突していたという。PDVSAは2016年9月にデフォルトを避けるため2017年4月及び11月に償還期限を迎える社債と2020年を償還期限とする新社債の交換を投資家に提案したが、応募者が集まらず、条件を変更、締め切りを延長し、10月21日までに28億ドル分について交換が成立した。Del Pino氏は、当初71億ドル分について交換を提案、50%以上の乗り換えを目標にしていたが、これに失敗、Maduro大統領はこの結果に失望したとも報じられていた。一方、Martinez氏はMaduro大統領に近い存在で、Martinez氏の起用はDel Pino氏を完全に引退させる前の最初のステップである可能性があるとの見方をする向きもあった[1]。その後8月には、Maduro大統領が、Nelson Martinez石油相をPDVSAのCEOに、PDVSAのEulogio del Pino CEOを石油相に任命した。そして、11月26日、Maduro大統領は再び内閣の部分改造を行い、軍人で住宅相を務めたことのあるManuel Quevedo氏をPDVSA総裁兼石油相に任命した。Maduro大統領は経済危機や治安の悪化を受け支持率が急落する中、主要産業や内閣のポストに軍人を多く任命しており、Quevedo氏の起用もその一環と見られている。Maduro大統領は、Quevedo氏任命にあたりPDVSAの変革と汚職取締りを命じたと伝えられており、Quevedo氏指揮下、汚職疑惑で同社上層部が一掃されたという。11月30日にはEulogio Del Pino氏とNelson Martínez氏も汚職容疑でSabin(国家ボリバル主義情報局)により逮捕されたことが明らかにされた。また、Quevedo氏がPDVSAの主要ポストにさらに軍幹部を登用するのではないかとの憶測や、PDVSA経営陣刷新や給与への不満からPDVSA内で抗議行動が頻発、離職する者も増加しているという。しかし、逮捕されたり、離職したりした者の後任者は着任していないという。Maduro大統領は汚職撲滅を試みたが、かえってPDVSAの状況を悪化、混乱させることになった。なお、Quevedo氏は、就任後、ベネズエラの原油生産量を100万b/d引き上げる長期計画を有していると発言した。しかし、同相は石油業界での経験がなく、生産回復の具体策は提示されていない。
石油産業労働組合によると、2015年末~2017年に石油産業に従事する11万2,000人の55%にあたる6万1,600人が職を離れ、人材流失により操業に支障が生じ、事故の危険性が高まっているという。労働力確保のために雇用規則にこだわらず、未熟練の若年者を雇用したり、辞職を禁止したりする措置が講じられる場合もある[2]という。
従業員のベネズエラからの撤退はPDVSAに限らない。8月には、不安定な社会情勢を受けて、Repsol、Statoil、Total、Chevronが安全のために従業員を油田から退避させた[3]と報じられた。
[1] IOD,2017/1/6
[2] El Nacional,2018/1/14
[3] BNA,2017/8/11
4.米国の対ベネズエラ制裁
2017年7月30日に実施された制憲議会議員選挙を契機に、米国のベネズエラに対する制裁が強まった。米国は、選挙前の7月26日にPDVSAの役員を含むベネズエラ当局者13人に制裁を発動、7月31日に米領内にあるMaduro大統領の資産凍結を含む制裁を発動、8月9日、制憲議会メンバー6名等に制裁を発動した。さらに8月25日には、米国の金融機関に対し、新たに発行されるベネズエラの国債やPDVSA債の取引を禁じる措置が盛り込まれた追加制裁を科す大統領令にTrump米大統領が署名した。大半の既発ベネズエラ国債、PDVSA債保有者を保護する内容ではあるが、新発債の取引が禁止されたことによりPDVSAは債務借り換えが困難になった。2018年に入っても、1月5日に米国財務省が、ベネズエラ政府、軍の高官や元高官の4人を制裁対象に指定すると発表、2月7日には、Tillerson米国国務長官が、ベネズエラの石油の貿易を規制する制裁に向け最終段階の検討をしていることを明らかにした。
米国は2013~16年に原油(重質油中心)約75万b/dをベネズエラから輸入し、主にメキシコ湾岸の製油所で精製、処理している。米国がベネズエラ産石油の輸入を禁止する制裁を課せば、PDVSAは重質原油の輸出先をアジア等に変更せざるを得なくなるが、全量の輸出先を探すには時間がかかり、輸送コストの追加とともに、大幅な値引きを要求されることになると考えられる。また、PDVSAはアジアへ輸出するためのタンカーに必要となる十分なターミナルのキャパシティを有していない。アジアへ輸出しても、PDVSAの利益は大きく失われ、石油収入に依存するベネズエラ経済も大きな影響を受けると考えられる。米国の精製企業にとっても、カナダからメキシコ湾岸への既存の原油輸送能力には限界があり、必要な重質原油のいくらかは中東からより高コストで輸入することとなり、これらの企業の利益が減少し、米国のガソリン価格が上昇する可能性もある。ベネズエラは20万b/dの石油製品と軽質原油を輸入、うち11~12万b/dを米国から輸入し、国内消費と超重質原油の希釈に使っている。米国からの輸入が禁止されれば、ベネズエラは米国以外からの輸入に切り替えることとなり、輸入コストが増大する。米国にとってはベネズエラに輸出する軽質原油の量は少なく、石油製品も他のマーケットを探すことができるので、影響は小さいと考えられる[1]。
[1] http://www.publications.atlanticcouncil.org/spotlight-venezuela/
5.製油所稼働状況
ベネズエラ国内の全ての製油所はPDVSAが保有しており、その精製能力は合計で約130万b/dである。しかし、生産量減少に伴う原油の不足、火災、機材の故障、部品の不足等により、これらの製油所の稼働率は2017年7月に50%、年末には15%[1]と低い水準で推移している。ベネズエラで最も規模の大きいAmuay製油所(精製能力64.5万b/d)、Cardon製油所(同31万b/d)からなるParaguana精製センター((Paraguaná Refining Centre:PRC)では84ユニット中76ユニットが故障[2]、12月4日にはCardon製油所で火災が発生したこともあり、稼働率が2017年8月には42%、10月には34%、12月はじめには13%と低下[3]を続けている。PRCに次ぐ規模のPuerto La Cruz製油所(同18.7万b/d)も2017年5月10日より操業を停止[4]、その後、稼動したが、原油不足から稼働率は低い[5]という。El Palito製油所(同14万b/d)は処理する原油がなく閉鎖されている。
ベネズエラのガソリン消費量20万b/dに対し、PDVSAが精製するガソリンは4万b/d程度となっており、抗議行動による輸送妨害も加わり、世界最大の石油確認埋蔵量を誇る国であるにもかかわらず、ガソリンが不足している。PDVSAは石油製品の輸入を増やすことでこの不足を解消しようとしているが、輸入も十分に行えていない。そのため、石油省は、12月24日、Apure、Barinas、Cojedes、Lara、Portuguesa、Merida、Tachira、Zuliaの8州の住民に対し、サービスステーションで購入できるガソリンの量を1回あたり車30l、トラック35l、オートバイ5lに制限することとした。
[1] LatAmOil,2018/1/9
[2] LatAmOil,2018/1/9
[3] LatAmOil,2017/12/12
[4] PON、LatAmOil,2017/6/27
[5] LatAmOil,2018/1/9、PON,2018/1/10
6.石油輸出入をめぐる状況
資金不足から、PDVSAがタンカーの掃除や点検、港湾サービスの代金を支払えなくなり、石油の輸出入に影響が生じているとの情報が2017年初より伝えられるようになった。PDVSAが保有、あるいは、リースしているタンカーの船体が原油で汚れ、Bajo GrandeやJose等主要な港で原油流出を引き起こし、荷積みや荷降ろしの遅れの原因となったり、ベネズエラ以外の海域を航行するのを数週間遅らせなくてはならなくなったりしている[1]。さらに、原油、石油製品を搭載したタンカーが寄港できず、St. Eustatius島沖合に係留されたままとなり、船主10社がPDVSAをSt. Maarten島の第一審裁判所に提訴する[2]という事態も発生した。
また、PDVSAから供給される原油の品質が問題とされるようになっている。従来、PDVSAは塩分や重金属を取り除いて原油を出荷していたが、米国、インド、中国等の製油所に水、塩分、金属を含む低品質の原油が供給されるようになり、キャンセルや値引きの要求が出るようになった。Phillips 66は上半期にベネズエラから供給された原油の質が悪かったため、少なくとも8カーゴ(440万bbl、2億ドル)をキャンセル、その他については値引きを要求した。Relianceは原油の質について、CNPCは水分含有量の多さについて苦情を申し立てているという。PDVSAの生産インフラのメインテナンスが悪いことが原因とされており、同社従業員によると、質の低下は2年前からで、原油処理に用いる化学品が輸入できない等の理由から、最近急激に低下した[3]という。
原油生産量の低下によっても、国内製油所向けのみならず輸出用原油も影響を受け減少しているとみられる。PDVSAが輸出用の原油や石油製品を確保できないため、12月11日時点でParaguana周辺でタンカー4隻、Joseでタンカー8隻が待機することになった[4]。
さらに、米国が7月26日にPDVSA財務担当役員、Simon Zerpa氏を制裁対象としたことで、信用状が発行できず、一部の米国向け石油輸出が影響を受けているという[5]。そのため、EIAによると、米国向けのベネズエラ原油輸出量は2016年の74.1万b/dから2017年1~11月は63.3万b/dに13%減少した。特に、8月以降は50万b/d台で推移している。なお、Maduro大統領は2018年2月9日、PDVSAの財務担当役員をSimon Zerpa氏からIliana Josefa Ruzza Teran氏に交代させた。Ruzza氏は2017年12月に財務副大臣に任命されており、財務副大臣とPDVSAの財務担当役員を兼務することとなる。
Maduro大統領は9月7日、ドルに替わる新たな国際決済システムとして、中国元、日本円、ユーロなどの国際通貨を含む「通貨バスケット」制を導入すると発表、石油取引会社に対しドルでの支払いを停止すると通告した。しかし、9月中旬には、石油価格を示すために中国元を単位として用いると伝えた。
なお、中国やロシアからの融資の返済に充てられる石油の量が増加し、PDVSAは 原油約160万b/dを輸出しているが、このうち70~75万b/d についてのみ現金を受領していると見られている[6]。
[1] Reuters,2017/1/26、Financial Express,2017/1/30
[2] LatAmOil,2017/3/14
[3] Reuters,2017/10/19
[4] LatAmOil,2017/12/12
[5] LatAmOil,2017/9/5
[6] PIW,2017/11/6
図3.米国のベネズエラ原油輸入量(2016~2017年11月、単位:万b/d)
(出所:EIAを基に作成)
図4 米国のベネズエラ原油輸入量(単位:万b/d)
(出所:EIAを基に作成)
7.中国、ロシアとの関係
ベネズエラは2007年以降、原油や石油製品を供給することで返済することを条件に600億ドル以上の融資を中国から得てきた。ところが、原油価格下落により、ベネズエラが中国向けに輸出する原油等の量が当初予定よりもはるかに多くなってしまった。そこで、ベネズエラは当初合意の見直しを要求したが、中国がこれを拒否した。そこで、PDVSAは2016年11月に中国から22億ドルの融資を受けることで合意し、デフォルトを回避した。さらに、2017年2月にはベネズエラ、中国両政府が、出資総額27億ドル(24億ドルとするものも)に及ぶエネルギー、金融、貿易、科学、テクノロジー、文化等22件の協定書に署名した。PDVSA が60%、CNPCが40%を保有するジョイントベンチャー、Sinovensa、Petrourica、Petrozumano の生産増(生産目標は不明)やベネズエラの超重質油を精製処理可能な中国Nahai製油所(精製能力40万b/d)への投資が含まれる。石油・ガスプロジェクトに関しては中国国家開発銀行が融資を行なうという。
しかし、11月には、SinopecがHoustonの米国連邦地方裁判所にPDVSAを提訴した。PDVSA 子会社Barivenが2012年に鋼鉄45,000tを購入、代金4,350万ドルのうち半分は15日以内に支払うことになっていたが、SinopecによるとPDVSAは1年以上たった後にこれを支払い、残りの2,170万ドルについては支払っていない。Sinopecは、2,370万ドルの補償を求め提訴した。12月に、PDVSAがSinopecに2,150万ドルを支払うことで合意、Houston連邦地裁によると、PDVSA は12月14日と2018年1月15日の2回に分けて支払いを行うという。これまで、ベネズエラの支払いの遅れに対し中国側が提訴したとの事例はなく、中国側がベネズエラからの支払い、原油供給がさらに滞るのではないかと懸念していることの表れとも考えられ、今後も融資を行っていくのか否かは明らかではない。
一方、ロシアはベネズエラとの関係を強化する姿勢を示している。
Rosneftは すでにPetromiranda、Petrovictoria、Petromonagas、Petroperija、Boqueronの5プロジェクトでPDVSAとジョイントベンチャーを組んでいるが、2016年11月にはCitgo株式の49.9%を担保にPDVSAに15億ドルを融資、PDVSAはRosneft に2017年は70,000 b/dの石油を供給するとした。
2017年8月にはRosneftのSechin社長が、「燃料・エネルギー分野でベネズエラとの関係を拡大していく」と述べ、今後もベネズエラで石油開発を続ける意向を示した。Rosneft によると、PDVSAとRosneftのジョイントベンチャー、PetrovictoriaはOrinocoベルトCarabobo-2 パイロットプロジェクトの生産を6月に開始、CHV-02号井から800 b/dを生産しており、2020年以降に本格的な開発を実施する計画である。また、Rosneft とPDVSA はMariscal SucreプロジェクトのPatao、Mejillonesガス田を共同で開発する可能性を検討しているとしていたが、12月、RosneftがPatao、Mejillonesガス田の権益100%を取得、両ガス田のオペレーターを務めるとともに、LNG輸出を行う権利も取得したことが明らかになった。Rosneftは15年以上にわたり両ガス田から65億m3を生産する計画である。
8.PDVSA、原油生産目標を引き下げ
PDVSAは2021年までに原油生産量を600万b/dに引き上げることを計画していたが、2014年半ば以降の油価低迷等から2016年に長期の投資計画を再調整した。その結果、2017年の原油生産量251万b/dを2025年までに67万b/d増やし、318万b/dとする計画とした。オリノコベルトの超重質油の2025年の生産量は190万b/dと全体の60%を占めると見込まれている。2017年初のオリノコ超重質油の生産量は120万b/dで、今後9年間で70万b/d増産しなくてはならない。PDVSAはこの生産目標を達成するのに必要な投資額を760億ドル(年84億ドル)と見積もっている。以前の計画では必要な投資額は2,570億ドルとされていた。新たな計画では投資額のどの程度をパートナーの負担とするのかは明らかにされていない。また、アップグレーダー6基やオリノコ川の輸出ターミナルの建設は新計画に含まれない。2025年の精製能力は現在の130万b/dより20万b/d多い、150万b/dとする計画となっている。105億ドルを投じPuerto La Cruz製油所の精製能力を18.7万b/dから2018年までに21万b/dに引き上げるとしているが、Batalla de Santa製油所(精製能力10万b/d)とPetro Bicentenario製油所(同30万b/d、Eniと共同で建設を計画)の建設は棚上げされた[1]。
生産目標は引き下げられたものの、これを達成するにもベネズエラは100万b/d以上の増産を行う必要があり、現在の状況からは実現は難しいと考えられる。
[1] Petroleum Argus,2017/3/10
9.終わりに
2017年4月に支払い期限を控えたPDVSAの債務返済問題に対処するため、ベネズエラ政府はOrinoco BeltのPetropiarプロジェクトの権益10%をRosneftに譲渡し資金を得ようとした。しかし、炭化水素法で、重要な国家利益に関する国の契約には国会の承認が必要とされている。野党が主導権を握る国会がこれを承認するとは考えられない。そこで、3月29日、国会の承認を得なければならないと定めた炭化水素法の手続き部分を変更する判決を最高裁判所が下した。ところが、判決の中に「国会の権限を停止し、以後最高裁が立法権を行使する」という文面が含まれていたため、南米諸国やEU等がベネズエラを非難する声明を発表、政府内部からも反対の声が上がる等、収拾がつかない事態になった。そこで、Maduro大統領は4月1日、最高裁に判決見直しを勧告し、最高裁は、立法権を最高裁が行使するという点について判決を取り消したが、大統領が国会の承認なしでPDVSAが保有する油田やプロジェクトの権益を売却できるとする部分はそのままとされた。PDVSA はベネズエラで活動中の外資石油企業に対し法律上の安全性を保障するとした。
配当支払いが十分に行われないことから、すでに多くのIOCがベネズエラから撤退しているものの、このような不安定な状況の中、経済状況の悪化もあり、ベネズエラで活動中のIOCはさらに苦境に立たされている。Orinoco Belt、Petropiarプロジェクトの権益30%を保有するChevronは、2017年第4四半期の合成原油生産量は前年同期比20%、6,000 b/d減の23,000 b/dとなったとしている。Orinoco Belt、Petrocedenoプロジェクトの権益9.67%を保有するStatoilは、財務報告書からPetrocedenoの生産量と埋蔵量の数字を削除した。Repsolと沖合Perlaガス田を操業中のEniは、Perla ガス田の確認埋蔵量を3.15億bbl下方修正した。さらに、同ガス田で生産されたガスはベネズエラ国内向けに供給されているが、その代金の支払いが1年以上遅れており、Eniは、いつどのように支払いが行われるのかが明らかになるまでは、同ガス田の生産量を550MMcf/dから倍増させる計画を進めないとした[1]。
PDVSA、IOCともに原油生産量を増やすことはもちろん、維持することも難しい状況にあり、さらに原油生産量が減少する可能性が高いとの見方がなされており、今後の動向が注目される。
[1] PON2018/2/19
以上
(この報告は2018年2月23日時点のものです)