ページ番号1007620 更新日 平成30年10月10日
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1.政治・経済情勢
(1)国内
経済・財政
- 8月22日、経済発展省は、大統領の5月指令の目標達成に必要な国家インフラ事業200件を選定した。2024年までの6年間の総事業費は6兆9,000億ルーブルで、このうち、3兆1,000億ルーブルが連邦予算から拠出される見込み。省庁や地域から提案のあったインフラ事業は690件。経済発展省は2024年までに完工するプロジェクトを選定対象とし、5月指令の達成への寄与度を基準に200件を選定した。現在、当該案について、省庁間ですり合わせを行っているところ。プロジェクトは発展事業と基幹インフラ整備事業の2つに分けられ、経済発展省は、後者に優先的に予算を充てたいと考えているが、予算拠出額の30%程度になる見込み。最も連邦予算からの拠出額が多い事業は、欧州と中国西部を結ぶ道路の建設および改修であり、3,610億ルーブルを拠出予定(総工費5,600億ルーブル)。その他、国道Mボルガの改修に3,450億ルーブル(同3,750億ルーブル)、高速道路事業では、モスクワ~カザン間、エカテリンブルグ~チェリャビンスク間の両事業費1兆5,000億ルーブルのうち、3,500億ルーブルの拠出が提案されている。サハリン~大陸間の橋梁建設(事業費見積6,375億ルーブル)およびジュブガ~ソチ(クラスノダール地方)の2大プロジェクトは選ばれなかったが、政治的に重要なプロジェクトであるため、プーチン大統領自身が実施の是非を決定するとのこと。(2018/08/21, Vedomosti)
税制改革
- 8月29日、プーチン大統領は、年金制度改革についてテレビ演説し、改革に伴う悪影響の緩和策を発表した。具体的には、政府は、女性の受給開始年齢を55歳から63歳に、男性を60歳から65歳に引き上げることを提案していたが、大統領は、女性の開始年齢を63歳ではなく60歳に引き下げるよう提案した(男性は変更なし。女性は仕事だけでなく、家事や子育て、孫の世話もしており、特別な配慮が必要。女性の年金受給開始年齢引き上げ幅が男性の5年を上回ってはならないとした)。更に、現在の制度において今後2年間で定年に達する国民に対しては、新しい制度において6ヶ月間早く定年に達する特権を与えることを提案。また、引退前の最後の5年間をプレリタイアメント年齢とすることを提案し、当該年齢の労働者の解雇、採用拒絶に対しては行政や刑事責任を設定する必要があると述べた。シルアノフ財相によれば、プーチン大統領の年金制度改革修正提案により、6年間で5,110億ルーブルが必要となる見込み。(Kremlin.ru, 2018/08/29)
(2)対外関係
(1)米国
- 8月2日、米国の上院議員6名が新たな制裁法案「Defending American Security from Kremlin Aggression Act」を議会に提出した。エネルギー分野に関しては、ロシア国内での石油資源開発や生産(生産拡大のためのインフラの建設・近代化・改修を含む)に関する支援を禁じる内容。ロシアの石油資源の開発等に資する物品・役務・技術・資金調達および支援を100万ドル以上、あるいは12ヶ月の累計で500万ドル以上の販売、リース、或いは提供した者に制裁が課される。但し、法案の制定時に既に進行中だった事業に対しては適用しないとする。グラハム共和党上院議員は声明で、「同法案に含まれる制裁やその他の措置は、今までに課された制裁措置の中で最も厳しいものであり、米国の民主主義の弱体化を願うプーチン大統領がもたらした結果である」と述べた。同法案には、米国市民によるロシア国債の取引禁止やロシア国営銀行7行による米ドルの取扱規制が含まれており、実現すれば、対象銀行の業務の約半分が麻痺する可能性があるという。一連の報道によりルーブルの為替相場やロシア関連企業の株価が下落した。(RIA Novosti,Vedomosti他、2018/08/02,8,14)
- 8月27日、米国務省は、今年3月の英国での元ロシア諜報員暗殺未遂事件で、ロシアが化学兵器を用いたと断定し、新たな制裁を発動した。27日から緊急人道支援を除き、ロシアに対する外国支援法(1961年)の停止、兵器輸出管理法に基づくロシアへの販売の終了、武器輸出管理法に基づくロシアに対する全ての外国軍事資金融資の終了、米国輸出入銀行を含む政府系機関によるロシアへの財政支援の拒否、および米国の安全保障上重要な製品・技術のロシアへの輸出禁止(例外あり)が課される。
(https://www.federalregister.gov/documents/2018/08/27/2018-18503/determinations-regarding-use-of-chemical-weapons-by-russia-under-the-chemical-and-biological-weapons(外部リンク), 2018/08/27)
(2)カスピ海沿岸5カ国
- 8月12日、カザフスタンの港湾都市アクタウでカスピ海沿岸5カ国(ロシア、カザフスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、イラン)の首脳会議が開催され、カスピ海の資源の共有等について規定した「カスピ海の法的地域に関する協定」に署名した。20年以上の協議を経て締結された同協定について、プーチン大統領は「画期的な出来事」であり、カスピ海沿岸国にとって有益な法的基盤となると歓迎した。協定では、各国沿岸から15海里を領海とし、25海里の排他的漁業権を設定。海底資源の所有権を国際法に基づいて当事国同士の合意で確定させ、P/Lの建設に関しては、当事国の合意で可能となった。なお、沿岸国以外の軍がカスピ海に入るのは認めないと定められた。(Kremlin.ru,Vedomosti他, 2018/08/12)
(3)ドイツ
- 8月18日、ドイツを訪問したプーチン大統領は、メルケル首相と首脳会談を行った。会談前に行った共同記者会見で、プーチン大統領は、政治、経済およびその他の分野において、ドイツとの相互互恵協力の発展を非常に重要視しているとし、両国間の貿易取引高は22%増の500億ドルに達したことに言及した。ロシアは昨年、ドイツのガス需要量の30%にあたる538億立方メートルを輸出したが、今年は既に前年比を13%上回っていると発言。建設中のNord Stream 2 P/Lについては、増加を続ける欧州のガス需要に対して供給ルートの多角化によりリスクを低減させることが出来ると指摘した。同事業について、プーチン氏は、純然たる経済プロジェクトであり、ウクライナ経由でのガス供給の継続の可能性を奪うものではないと説明した。一方、メルケル首相は、ロシアが国連安全保障理事国であることも踏まえ、我々は諸問題への解決策を見つけて行くべきであるとし、ガス供給に関しては、P/L稼働後もウクライナは引き続き欧州向けロシア産ガスの経由国としての役割を果たすべきだと述べた。(Kremlin.ru他、2018/08/18)
(4)フィンランド
- 8月22日、プーチン大統領は、ソチの公邸でフィンランドのニーニスト大統領と会談を行った。会談後の共同記者会見で、プーチン大統領は両国関係について伝統的に良き隣人関係にあり、昨年の貿易取引高は、前年比37%増の120億ドル超となり、関係の発展に満足していると述べた。ニーニスト大統領は、北極圏における経済的活動と環境保全のバランスやLNGなどのクリーンエネルギーへの移行を議題とする北極同盟サミットの開催を提案しているが、プーチン氏も開催への協力の意向を表明した。(Kremlin.ru他、2018/08/22)
2.石油ガス産業情勢
(1)原油・石油製品輸出税
- 2018年8月、原油輸出税はUSD 18.5/バレルに引き下げ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
- 8月の石油製品輸出税はUSD 40.6トン、ガソリンについてはUSD 74.4トンに設定された。
(2)原油生産・輸出量
- 8月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,741.0万トン(約3憶4,803万バレル、平均日量1,121万バレル)で、前年同月比2.7%増。1~8月は3億6,606.6万トン(約26億8,729万バレル、平均日量1,104万バレル)で、前年同期とほぼ同じ。(Interfax, 2018/09/03)
- 8月、原油輸出量は2,196.6万トン(約1億6,125万バレル)。1~8月は1億6,810.4万トン(約12億3,407万バレル)。(エネルギー省HP)
(3)天然ガス生産・輸出量
- 8月、天然ガス生産量は546.2億立方メートル(約1.93TCF)で、前年同月比0.4%増。1~8月は、4737.9億立方メートル(約16.7TCF)で、前年同月比5.6%増。(Interfax, 2018/09/03)
(4)その他
- 8月7日付の連邦関税局の発表によれば、ロシアの2018年1~6月のCIS以外の諸国に対する原油輸出による収入は、前年同期比31.3%増の603億3,300万ドル、原油の輸出量は1%減の1億2,625万トン。石油製品の輸出量は、3.1%減の7,772万9,000トン、石油製品の輸出額は前年同期比24.2%増の382億5,300万ドル。(Prime, 2018/08/07)
- 8月24日付IOD紙によれば、RosneftのセチンCEOは、プーチン大統領に「ロシアの原油埋蔵量の60%を擁する西シベリアの成熟鉱床の生産量減退に歯止めをかけ、世界市場におけるロシアのシェアを維持するために優遇税制が必要である」と訴える書簡を送ったとのこと。同社の代表は、「現在の西シベリアでの原油生産に対する税率は75~80%と最も高い。投資刺激策により西シベリアで増産を促すことが出来れば、1兆ルーブルの増収効果を見込める」と述べた。
- 8月27日、ケメロボ州で開催されたエネルギー産業の発展と環境保全の戦略に関する委員会の会合で、プーチン大統領は、「世界のエネルギー産業の競争はこの数年間で著しく激しくなっている」と述べ、ロシアは高い競争力を効果的に利用し、供給先を多様化させるとともに新規市場に参入するよう促した。また、石炭に関しては、ロシア企業は昨年1億9,000万トン以上を輸出し、世界第3位の石炭輸出国としての地位を築いたと指摘。「世界石炭市場でロシアの存在感を増す機会となり、ポジションを強化し、ロシアの占有割合を拡大することができる」と発言した。一方で、大統領はこの機会を活かすためには、「伝統的な石炭産地であるクズバス、ハカス共和国、サハ共和国、および新産地の東シベリアと極東における石炭採掘施設の収益性と安全性の向上、および近代化、鉄道輸送能力の拡大によるロジスティクスの改善を行う必要がある」と指摘した。ノヴァク・エネルギー相は、石炭産業の投資プロジェクトに国家支援を行う用意があると発言。投資プロジェクトのために社会・経済先進発展地区、ウラジオストク自由港、および(特定産業に対する)特別投資契約の仕組みを利用する必要があると述べた。その他の主な発言は以下のとおり。(Prime,RIA Novosti他, 2018/08/27)
- 燃料エネルギー部門はGDPの22%、輸出の6割、連邦財政収入の約4割を占める最も重要なセクター。
- 2018年の石炭輸出は2億トン超となる見込みであり、出荷量は西向けと東向けが約半々。西向けについては、欧州の石炭消費を抑制していく政策方針から今後の伸びは限定的であるが、アジア太平洋地域は今後も継続して長期的に需要が伸びていく地域であり、2025年までに石炭輸出を倍増させる可能性を持つ(現在の欧州におけるロシア産石炭の占有率は40%、アジア太平洋地域は同9.3%)。そのためロジスティクスの改善が必要であり、ロシア鉄道の発展プログラムやロシアの港湾整備が石炭の生産増加とリンクする。
- アジア太平洋地域は需要が伸びていく最も魅力的な地域の一つであり、ロシアの企業にとっても多大な可能性があるもの。本年11月29日に北京で開催予定の第一回ロ中エネギービジネスフォーラムには、ロシアと中国からそれぞれ40社程度が参加し、石油ガス、電力、石炭、金融に関する協力に焦点を当てて議論する予定
- 地方のガス化進捗が満足いく水準ではない。連邦政府、ガスプロム、独立ガス供給者、地方政府が連携して対応することが必要(2017年初頭にガスプロムが報告した数字では、ロシアのガス化の割合はロシア全体で67.2%、都市部が71%、地方部が57%)。
3.ロシア石油ガス会社の主な動き
(1)Rosneft
- Rosneftの取締役会は、8月6日、2020年12月31日までの自社株買い計画に20億ドルを上限として行うことを承認した。同社が4月25日に発表した戦略的イニシアチブに基づき、自社の株式を市場から購入する。同社は、市場価格や市況に応じて、海外株式預託証書(GDR)を含む3億4,000万株を超過しない範囲で自社株を買戻す計画。高い透明性を確保し厳格な法令順守を行うため、国際的な大手金融機関に本業務を委託する。(Rosneft Press release, Prime, 2018/8/06)
- 8月7日付プレスリリースで、Rosneftは2018年上半期の決算(IFRS基準)を発表。概要は以下のとおり。
- 売上:前年同期比34.8%増の3兆7,870億ルーブル
- EBITDA: 前年同期比48.7%増の9,500億ルーブル
- 純利益:前年同期比4.1倍の3,090億ルーブル
- 投資額:前年同期比11.1%増の4,520億ルーブル
- 生産:前年同期比0.7%減の571万バレル(石油は横ばいの112万トン、ガスは前年同期比2.5%減の333億立方メートル)
- 8月7日、Rosneftは2018年4~6月に、Exxon MobilとのJV(複)においてExxon Mobilが保有していた株式を全て買い取ったことを明らかにした。取得後の1年間で、JVにおける持分の価値と負債の評価の算出を完了する予定。Exxon Mobilは2018年3月、対ロ制裁を背景にRosneftとのJVからの撤退を発表。Rosneftは、今後は自力でこれらの事業を継続する方針と述べていた。(Prime, 2018/8/07)
- 8月7日、Rosneftのリロン第1副社長は、エネルギー省から原油増産の決定があれば、OPEC+との枠組み合意に基づいて、2018年末までに日量25万バレルまで増産することが可能であると述べた。2018年6月から7月にかけて、OPEC +との枠組み合意に基づいて、日量12万バレルの増産を行っており、2018年末までにさらに日量13万バレルの増産は可能であるとのこと。また、同社長は、OPEC+との協調減産において、制約が生じないのであれば、2018年11月末までにヤマロネネツ自治管区のRusskoye鉱床で生産を開始する方針であると述べた。同鉱床の炭化水素埋蔵量は(PRMSによるカテゴリー:3P)は、推定で28億7,400万boe(4億2,600万toe)。原油のプラトー生産量は年産650万トン超で、2022年以降に達する見通し。(Prime, 2018/8/07)
(2)Gazprom
- 8月10日、経済発展省は、ロシアが2014年に欧州のガス電力市場における競争促進を目的とする「第3次エネルギーパッケージ」が、第三国に対する差別条項を含んでおり、世界貿易機関(WTO)の原則に反しているとして提訴していた係争に関し、ロシアの立場を支持した裁定が下されたと述べた。EU加盟国は、同パッケージによって、自国領土内で、ガスを供給する権利と輸送のための資産に対する所有権とをそれぞれ分離するよう事業者に要求できるオプションを与えられている。複数国が同オプションを行使したことにより、Gazpromがロシアで生産したガスを欧州市場へと送るためのパイプラインをEU域内で所有することは効果的に阻止された。裁定では、GazpromがOpal ガスP/L(ロシアからドイツまでをバルト海の海底でつなぐNord StreamガスP/Lの陸上延長部分)を使用する際に、使用量を送ガス能力の最大50%までとし、公開市場で年間30億立方メートルのガスを販売しなくてはならないとする規制が適用されていることを不服とするロシア側の申し立てを支持した。WTOはまた、リトアニア、ハンガリー、およびクロアチアがロシアに外国のガス輸送網事業者に適用する認証要件を要求することによって、ロシアを差別していたとする、ロシア側の主張を支持した。経済発展省は、「WTO裁定によって、ロシアのガスがEUにアクセスする際の条件の改善、および競争条件の公平化に繋がると考えており、Gazpromの今後の事業がEUにおいて差別的待遇を受けることがなくなることを期待している」と歓迎し、Gazpromも「WTOの裁定に満足している」と述べた。(Prime他, 2018/08/10)
- 8月29日付プレスリリースで、Gazpromは2018年上半期の決算(IFRS基準)を発表。概要は以下のとおり。
- 売上:前年同期比23.7%増の3兆9,720億ルーブル・・・2017年は欧州へのガス輸出量の増加にもかかわらず、売上高の増加には結びつかなかったが、2018年は、欧州でのガス需要、ガス価格、およびガス販売量が増えたことにより、ガス販売による売上は、前年同期比28%増の2兆1,249億ルーブルとなった。
- 純利益:前年同期比62.6%の6,636億ルーブル
- 投資額:前年同期比26%増の6,813億ルーブル
(3)Lukoil
- 8月29日付プレスリリースで、Lukoil は2018年上半期の決算(IFRS基準)を発表。概要は以下のとおり。
- 売上:前年同期比32.1%増の3兆6,870億ルーブル
- EBITDA: 前年同期比33.1%増の5,147億ルーブル
- 純利益:前年同期比37.5%増の2,764億ルーブル
- 投資額:前年同期比11%減の2,268億ルーブル・・・ウズベキスタンにおける新規ガス施設などの主要な投資事業が完了したことが背景
- 生産:石油生産(イラクを除く)は前年同期比1.7%減の4,280万トン、ガス生産は同20%増の160億立方メートル
(4)Gazprom Neft
- 8月16日付プレスリリースで、Gazprom Neft は2018年上半期の決算(IFRS基準)を発表。概要は以下のとおり。
- 売上:前年同期比24.4%増の1兆1,377億ルーブル
- EBITDA: 前年同期比49.8%増の3,682億ルーブル
- 純利益:前年同期比49.6%増の1,665億ルーブル
- 投資額:前年同期比5.5%増の1,628億ルーブル
- 生産:炭化水素生産は前年同期比2.0%増の4,490万トン・・・Novoportovskoye鉱床、Vostochno-Messoyakhskoye鉱床の生産量増加に加え、NOVATEKとのJVであるArcticgasにおけるGazprom Neftの株式持分が46.6から50%に増加したことも要因
- 精製量:前年同期比9.8%の2,057万トン・・・製油所のメンテナンスの完了や精製効率の向上によって軽油の生産量が増えたことによるもの
(5)Surgutneftegaz
- 8月29日、Surgutneftegazは、2018年上半期の決算(IFRS基準)を発表。概要は以下のとおり。
- 売上:前年同期比31%増の8,568億ルーブル
- EBITDA: 前年同期比48%増の2,297億ルーブル
- 純利益:前年同期比4.3倍の3,900億ルーブル
(IOD, 2018/8/30)
(6)NOVATEK
- 8月20日にサベッタで開催されたアキモフ副首相が主催する北極海航路の開発に関する会議でArctic LNG 2事業のFEEDを2018年第4四半期に完了し、2019年半ばまでに、同事業のFIDを行う予定であると述べた。会議後、ミヘリソンCEOは記者団に、北極海航路のロシア領海内の航行をロシア船籍に限定している現行の商船輸送に関する規制がYamal LNG事業の輸送計画の阻害要因になっており、特例適用を要請したと述べた。同規則では、政府が外国船籍に航行の特別許可を与えることが可能であるとしており、NOVATEKはすでに運輸省に特例の適用を申請している。
ミヘリソン氏は、「この問題は間もなく解決する可能性がある」と述べた。また、カムチャッカ半島およびムールマンスク港に建設予定のLNG積替えターミナル建設計画については、1,080億ルーブルを投じる方針であると発言した。(Interfax, Prime,IOD, 2018/8/20,22)
4.東シベリア・極東・サハリン情勢
(1)サハリン
- Sakhalin 1コンソーシアム(Exxon Neftegaz、SODECO、ONGC、Rosneft Sakhalinmorneftegazshelf、RN-Astra)が2015年7月10日から2018年5月31日までの間に第3者の資金を利用して不当な利益を得たとして、Rosneftが同コンソーシアムを相手として891億ルーブルの支払いを求めて提訴した件について、当事者間の和解の方向に向けた交渉を行っていることをONGCがインド証券取引所からの質問に答える書簡の中で明らかにした。ONGCによると、Rosneftは、Sakhalin 1が生産を開始した2005年からNorth Chayvo油田(Rosneftが保有するが、2005年当時はまだライセンスを保有せず)からSakhalin 1が保有するChayvo油田に流出した原油量を根拠に主張しているとのこと。RosneftとSakhalin 1コンソーシアムは、2017年8月に流出入に関する事前合意書を締結したが、その後進展がないまま、本年4月24日に失効した。Exxon Neftegazはコンソーシアム側の利益を守るために、パリの国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てた。交渉の後に新しい協定を締結したが、5月25日に無効となり、その後は更新されず、Rosneftがサハリン州商事裁判所に提訴した。ONGCによれば、協議を行っている和解金額はコンソーシアムの平均年間予算の10%を下回る程度としている。(Interfax, Kommersan他、2018/08/03)
(2)極東
- 8月23日付Kommersant紙によると、Gazpromは「サハリン~ハバロフスク~ウラジオストク(SKV)」ガスP/Lを中国国境まで延伸する設計を業者に委託した。GazpromとCNPCは2017年12月に基本条件について合意したが、ガスの価格や輸出開始時期に関する取り決めはまだない。中国向け輸出量は、年間80億立方メートル以上とされ、Gazpromは2020年までにSKVの年間輸送能力を200億立方メートルまで拡張する計画である。しかし、今夏、鋼管調達に関する入札が発表された後に入札そのものが中止されたことに加え、同P/Lの原料基盤とされるYuzhno-Krinskoye鉱床は米国の制裁対象に指定されており、開発に問題があるため、中国との間で拘束力のある契約が早期に締結される可能性は低いものと見られている。本件が実現すれば、2019年に稼働開始予定の「シベリアの力」に続く、第2の中国向けラインとなる。
5.新規LNG・P/L事業
(1)Nord Stream 2
- 8月10日、デンマークのエネルギー庁は、「デンマークの領海を迂回するNord Stream 2ガスP/Lの代替ルートについての申請および環境影響評価に関する報告書を受理した」と発表した。代替ルートは総延長175kmとされ、デンマークの排他的経済水域(バルト海Bornholm島北部)を通過する予定。本来のルートは、現在稼働中のNord Stream P/L(Bornholm島南部/領海内)に並行して建設される予定だった。2017年末に安全保障に係るエネルギー事業を拒否することを可能にする権限を政府に付与する新しい法律が制定されて以来、デンマークは米国を中心とする各方面からNord Stream 2ガスP/Lが同国の領海を通過することを拒否するようとの働きかけを受けている。デンマーク政府は同事業に関する決定を下すことを躊躇しており、ラスムセン首相は、「欧州全体の合意によって決められるべきである」と発言している。Nord Stream2 AG社(Nord Stream 2ガスP/L事業の運営会社で、Gazprom100%出資法人)は、「今回の代替ルート申請は、2017年4月にデンマーク当局に申請した当初のルートによる建設計画に取って代わるものではなく、我が社はあくまで最初のルートの建設を優先的に考えている」と述べた。(IOD, 2018/8/13)
- 8月14日付プレスリリースで、Nord Stream 2 AGは、ロシア連邦自然利用分野監督局から領海における114kmの海底区間のパイプライン敷設に関する許認可取得を発表した。陸上区間に関しては、既に建設公共事業省から認可を取得済みであり、これによりロシア政府より必要な認可が全て下りたことになる。、Nord Stream 2 AG社によると、敷設作業は近い将来に始まる予定であるとのこと。ドイツ、スウェーデン、およびフィンランドは同事業に対して、既に全ての必要な認可を与えているが、デンマーク政府からの領海内敷設の認可はまだ下りていない。
(2)Yamal LNG
- 8月9日付プレスリリースでNOVATEKは、Yamal LNG事業のLNGプラントの第2トレインが始動し、タンカーによる初出荷を行ったと発表したYamal LNG社のコット社長によれば、「第2トレインは当初予定より6ヶ月早く稼働を開始。第2トレインでは、原料ガスを供給してから8.5日目の7月21日に最初のLNGが得られたとのこと。現在、既に設計生産能力の年間550万トンで稼動しており、これまでに25万トンのLNGを生産している。
- 8月9日付Prime紙のYamal LNG第4トレインに関するミヘルソンCEOの発言報道によれば、NOVATEKは既に第4トレインの建設に必要な承認全てを銀行(複)から得ている。第4トレイン(年間生産能力90~94万トン)の建設には、自社の技術であるArctic Cascade液化技術を使用する予定であり、稼動開始は2019年末よりも前となる見通しとのこと。
- Yamal LNG事業は2018年にLNGおよびコンデンセートの販売を開始したが、同年上半期の売上高(IFRS基準)は385億ルーブルとなった。内訳は炭化水素の販売による売上高:365億ルーブル(前年同期はゼロ)、その他の売上高:19億7,000万ルーブル(前年同期17億ルーブル)。同事業からのLNG輸出は128万トン、コンデンセート輸出は12万5,200トンとなっている。
また、今年上半期の営業利益は245億ルーブル(前年同期は2億2,100万ルーブル)となった。しかしながら、財務活動の業績で1,106億ルーブルの損失(前年同期は9,300万ルーブルの利益)を計上したことにより、731億ルーブルの損失となった(前年同期は2億2,100万ルーブルの利益)。(Interfax, 2018/08/14)
(3)Turk Stream
- 8月8日、トルコのドンメズ・エネルギー天然資源相は、「Turk StreamガスP/Lの第2ラインは2019年末までに稼動を開始する可能性がある。同P/Lの最初のパイプラインのオフショア部分(総延長930km)の敷設は既にGazpromが単独で完了している。現在、陸上部分の敷設作業が進められているところである。Gazpromは第2パイプラインのオフショア部分の敷設も進めており、既に約50%が完了している」と述べた。(Prime, 2018/08/07)
以上
(この報告は2018年10月3日時点のものです)
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