ページ番号1008932 更新日 令和3年1月12日
コロナ禍もプラス経済成長のベトナム2020:―FIDが期待される「Ca Voi Xanh(CVX)/Blue Whale」ガス田開発の動向―
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概要
- ベトナム社会主義共和国は、世界がコロナ禍に苦しむ2020年も国内総生産成長率を前年比1.5%~3.1%のプラス成長を維持すると予想されている。同国計画投資省は、2021年から2025年の成長率を2019年並みの6.8%~7%に設定し、2025年の1人あたりの名目GDPを4,700~5,000米ドルと2019年の3,416米ドルから短期間で約40%前後増加させる積極的な計画案を示している。
- この経済成長を牽引するのはアジアの生産拠点として注目を集める製造業であり、その課題として挙げられるのが、エネルギー、輸送交通、上下水道、灌漑などのインフラ整備の遅れとそれらの遅れに伴う、大気汚染である。
- BP統計2020にある2019年末時点の同国の石油確認埋蔵量は44億バレル、ガスは22.8tcfで、ASEAN諸国の中で石油は1位(2位マレーシアの約1.5倍)で、ガスは4位(1位のインドネシアの約半分)の規模である。一方、生産量は石油が日量約24万バレル、ガスが日量0.95bcfで、ASEAN諸国の中で、石油は4位(1位インドネシアの約1/3)、ガスは6位(1位のマレーシアの約1/8)と、同国の確認埋蔵量の大きさに比べ、開発生産が進んでいないことが伺える。
- 米国地質調査所のレポートでは、ベトナムの石油ガス資源は、主に5つの堆積盆地(Malay、Nam Con Son、Cuu Long、Phu Khanh、Song Hong)に賦存し、Cuu Long とNam Con Sonで石油とガスの、Phu KhanhとSong Hongでガスの資源を推定している。これまで、ベトナムではBach Ho油田やLan Tay/Lan Doガス田等南部の堆積盆地での開発生産が行われてきた。
- 2011年9月ExxonMobilは、中部ベトナムの沖合に推定埋蔵量約3tcfのCa Voi Xanh(CVX)ガス田をSong Hong堆積盆地で発見し、対岸にパイプラインを結び、ガス処理施設及びガス発電所を備える複合エネルギー化学プロジェクトとして計画中である。
- このプロジェクトには、幾つかの課題がある。1つ目はCVXガス田のCO2含有量が高いこと、2つ目は上流事業のポートフォリオを再評価中のExxonMobilがベトナムでの上流事業を「コア市場資産」と評価するか、3つ目は中国が領有権を主張する所謂九段線に近いといった点である。
- 2021年1月に開催されるベトナム共産党大会での書記長を含む主要人事、これと並行し行われる同国エネルギー基本計画と電力開発基本計画の見直し、更に同年1月に選任される米国大統領の環境、外交や安全保障戦略が、本プロジェクトの進退若しくは進捗へ大きな影響をあたえるだろう。
(出所:ベトナム政府、ExxonMobil、Eni、JCIF、IEEJ、IHS、Wood Mackenzie、他)
はじめに
世界がコロナ禍に苦しむ2020年であるが、主要国際金融機関はベトナム社会主義共和国が国内総生産のプラス成長(前年比1.5%~3.1%)を維持すると予測している(表1)。また、同国計画投資省は、2021年から2025年の同国経済成長率を2019年並みの6.8%~7%に設定し、2025年の1人あたりの名目GDPを4,700~5,000米ドルと2019年の3,416米ドルから短期間で約40%前後増加させる積極的な計画案を示している。
上述の経済成長を牽引するのは、外資系企業から中国以外でのアジアの生産拠点(いわゆる「チャイナプラスワン」)としてかねてから注目を集める製造業である。その課題として挙げられているのが、エネルギー、輸送交通、上下水道、灌漑などのインフラ整備の遅れとその遅れに伴う大気汚染である。その要因として資金不足と許認可手続きの遅延等が挙げられており、現在政府にて改革中とされている。
今回報告するCa Voi Xanh(CVX)(英語名:Blue Whale)プロジェクトは、米国石油メジャーExxonMobilが2011年にバクホー油田の発見以降36年ぶりに発見に成功した大型ガス田の開発に始まり、浮体式気体・液分分離設備、海底パイプライン、陸上ガス精製プラント、発電容量3百万kWのガス発電所を含む総合エネルギー・化学プロジェクトとして開発が進もうとしている。最終投資決定(FID)が待たれる本プロジェクトの現状と課題をまとめる。
本題に入る前に、ベトナムのエネルギー事情の概観を見るために1次エネルギー消費を2018年実績と2050年見通(IEEJ Outlook 2021レファレンスシナリオ)で確認しておきたい。
同国の1次エネルギー消費2018年実績は合計で83百万トン石油換算(Mtoe)である。内訳としては、石炭44%、石油27%、ガス9%、バイオマス・廃棄物11%、水力9%となっている。ASEANの他の産油・ガス国であるインドネシア、マレーシア、タイ等の石油とガス消費の割合が、各国の1次エネルギー消費の5割から7割を占めているのに対し同国では4割弱と割合が低く、その分石炭の割合が4割強となっている他、水力・バイオマス・廃棄物等の旧来の再生可能エネルギーの割合も2割強と多いことが理解できる。
IEEJ Outlook 2021レファレンスシナリオでは、2050年の1次エネルギー消費を233Mtoeと2018年の約3倍に増えると予測している。その内訳を見ると石炭43%、石油26%、ガス16%、バイオマス・廃棄物4%、水力5%、原子力4%、太陽光・風力2%となっており、旧来の再生可能エネルギーの消費が頭打ちとなり、石炭の比重が引き続き高く、石炭の自国生産量が成熟期に入っていることを考えると今後は輸入石炭への依存度が高まると予想される。
ベトナムが世界の生産センターとして持続的に発展するために必要なエネルギーの調達は、自国資源の有効活用による経済性と環境面でのメリットを両立する自国産のガスの開発は今後も優先されるものと考えられる。
1 ベトナムの石油・ガス上流事業の現状
1.1 ベトナムの石油・ガス上流事業の歴史
ベトナムの石油・ガス上流事業は、米モービル社(当時)が1975年2月に南部ベトナムのサイゴン市(当時)沖合のCuu Long堆積盆地で、バクホー(Bach Ho)油田(現地名:白虎油田)を発見したことに始まる。しかし、同年4月30日のサイゴン解放により、当時の米モービル社に権益を付与していた南ベトナム政府が崩壊し、同社は権益を失った。その後、Bach Ho油田は国営ペトロベトナムと旧ソ連で国外の石油・ガス田の探鉱・開発・運用を担当するザルベジネフチ(Zarubezhneft)との合弁会社ベトソフペトロ(Vietsovpetro)に引き継がれ、1986年から石油の生産を開始している。Wood Mackenzieによれば当初の発見埋蔵量は石油約16億バレルとガス約1tcfであり、その後も一貫して同国を代表する大油田であったが2001年の生産量日量26.7万バレルをピークに減退を続け、2020年現在日量2万バレル前後で推移しており、2020年代中頃には生産が終了すると見られている。1990年代に入ると、Bach Ho油田と同じCuu Long堆積盆地でRang Dong油田、また、その南に位置するNam Con Son堆積盆地でRong Doiガス田やLan Tay/ Lan Doガス田が発見され2000年に入り本格的に南東ベトナムへの供給が始まった。更に、マレーシアとの商業調整地域(発見埋蔵量:約1.8tcf)やタイとの国境近くのMalay堆積盆地で中規模のガス田の発見(発見埋蔵量:約1.3tcf)が相次ぎベトナム南西部へのPipelineによるガス供給も2007年から始まっている。
北部については、2000年代に入り隣国マレーシアのNOC Pertronas Carigaliがオペレーターとなって探鉱を開始して以降エンツー(Yen Tu)油田、ハンロン(Ham Rong)油田、タイビン(Thai Binh)ガス田等がSong Hong堆積盆地の北部に発見され、生産されているが規模は小さい。
その後、2010年代に入り中部ベトナム沖合のSong Hong堆積盆地で大きな発見が続いている。2011年にはExxonMobilが推定埋蔵量3.1tcfのカボション(Ca Voi Xanh)ガス田を発見した。また、2020年7月にはCVXの北方約150キロメートルのSong Hong堆積盆地では、Eniが推定埋蔵量7-9tcfのケンバウ(Ken Bau)ガス田を発見している。
参考として、ベトナム近傍の堆積盆地の分布を以下に示す。
1.2 確認埋蔵量と生産量
BP統計2020の2019年末の同国の石油確認埋蔵量は44億バレル、ガスは22.8tcfで、ASEAN諸国の中で石油は1位(2位マレーシアの約1.5倍)で、ガスは4位(1位のインドネシアの約半分)の規模である。一方、生産量は石油が日量約24万バレル、ガスが日量0.95bcfで、ASEAN諸国の中で石油は4位(1位インドネシアの約1/3)、ガスは6位(1位のマレーシアの約1/8)と、確認埋蔵量の大きさに比べ、開発・生産が進んでいないことが伺える。
2 FIDが期待されるCa Voi Xanhガス田開発プロジェクト
2.1 経緯
Ca Voi Xanh(英語名:Blue Whale、以下CVX)ガス田は、ベトナム公開鉱区のBlock118にある。CVXガス田の最初の発見はBPが1990年末から1991年にかけて掘削した試掘井118-CVX-1X(水深176メートル、堀止深度2,927メートル)によるもので、Miocene層でガスの胚胎が確認された。発見埋蔵量は2.6tscfと一定の規模に推定されたもののCO2含有量が75%以上と非常に高くBPは同鉱区から撤退した。
その後2009年に実施された鉱区公開入札でExxonMobilが同鉱区を落札、オペレーターとなり同国国営石油会社PetroVietnam(以下PVN)と共に生産分与(PSC)契約を締結し、同鉱区に参入した。ExxonMobilは2011年9月に試掘井118-CVX-2X(水深240メートル、堀止深度1,640メートル)で再びガスを発見した。ExxonMobilが発見したのはBPが発見したものとは別のCO2含有量が30%以下のものであった。その後、2012年(118/-CVX-3X)、2015年(118/-CVX-4X)の評価井掘削を(表2、図9参照)を経て、2015年8月商業化の可能性があるガス田であることを公表した。ExxonMobilは正式には埋蔵量を発表していないが、各種情報によると可採埋蔵量は約3tcfと推定されている。(図8のPVNの資料には、Volume:19tcfとある。)
また、その後のCVXガス田の開発に向けた経緯は、以下のとおりである。
2.2 プロジェクトの概要
CVXガス田開発プロジェクトの詳細は明らかになっていないが、各所データより概要を表3にまとめる。
2016年1月に東京で開催されたJCCP(国際石油・ガス協力機関)主催の国際シンポジウムでPetroVietnamのDr. Le Manh Hung現社長兼最高執行役員(当時副社長)が発表された資料が参考になる。
2.3 Ken Bauガス田の発見
CVX総合エネルギー・化学プロジェクトのFID準備が進む中、2020年7月欧州メジャーのEniは、過去20年で東南アジア最大と言われるKen Bauガス田の発見を発表した。オペレーターはEni(パートナーはインドのコングロマリットEssar)で、場所は中部ベトナムの沖合Song Hong堆積盆地でCVXガス田の北西約150キロメートルのBlock114 鉱区である。坑井114-KB-2X(水深95メートル、堀止深度3,658メートル)で発見されたガス層はMioceneの砂岩層にあり層厚も110メートルを超えるのもので、推定埋蔵量はガス7~9tcf、コンデンセート4~5億バレルとしている。
Eniがベトナム参入したのは2013年で大規模発見を7年で成し遂げたことになる。今後、ガスのマネタイズに要する時間を短縮するためにも、CVXとユニタイズして共同開発が検討されるかもしれない。
2.4 CVX開発に向けた課題
CVXガス田の開発に向けいくつかの課題を挙げておきたい。
1つ目は、CVXガス田のCO2含有量の多さへの対応である。ExxonMobilは2020年12月14日に今後5年間の排出削減計画を発表している。その中で上流分野での(温室効果ガス)排出量の15~20%削減、メタン依存率40~50%削減やフレア削減35~45%の目標を掲げている。豪州でCCSが義務付けられているGorgon LNGプロジェクトにはExxonMobilも参加しているが、その主要ガス田であるGorgonガス田やJanszガス田のCO2含有量は12%~16%であり、もしもボランタリーに上記の温室効果ガス対策をCVXガス田開発でも行うとなれば、その経済的影響は大きいのではないだろうか。一方、東南アジアではCO2含有量が多いガス田が多く、これらのガス田を抱える国のNOCはExxonMobilのベトナムでの対応を大いに注目するであろうし、逆にExxonMobilの立場からはこれらのCO2含有量が多い東南アジアのガス田開発に広く取り組む切欠にできるかもしれない。
2つ目は、同社のポートフォリオ戦略である。東南アジア諸国の油・ガス田は成熟が進み、新規油・ガス田も規模的な面で同社の上流部門にとってコア市場にはなりにくいとの見方が一般的になっている。実際に、ExxonMobilは長年に渡り保持してきたマレーシアでの権益を減らしている。そのような状況下で「ベトナムの探鉱開発は東南アジアの中では比較的探鉱余地がある」と評価し、同社がベトナムを「コア市場化・コア資産化」するような構想があるのかどうかに注視したい。
3つ目は、「南シナ海問題」への対応である。ExxonMobil評価井118/-CVX-4Xの掘削が行われた2015年4月には、中国のCNPCが西沙諸島付近で探鉱を行い、ベトナムと中国の間で一発触発の事態となり、それを回避するために両国政府が紛争の複雑化・拡大を防ぐための共同声明を出したこともあった。CVXガス田は中国がその権益を主張するいわゆる九段線からは十数キロメートル程はずれているが、両国の紛争に巻き込まれてプロジェクトが遅延するリスクや、洋上施設の建設が危険に晒されるリスクがある。
3 活況を呈するLNG受入プロジェクト
3.1 ベトナムのエネルギー・電力政策と状況
最後に、ベトナムのエネルギー・ガス・電力政策と状況を確認する。
2020年2月に「2030年までの国家エネルギー開発戦略及び2045年までの展望」(National Energy Development Strategy to 2030 and outlook 2045 No: 55-NQ/TW)(以下、基本方針)が発表された。その中で以下に示す10項目の目標が掲げられている。これは前回の2007年に発表されたものから13年ぶりの改正で、急速な経済成長とエネルギーの安全保障と経済性そして環境を意識した内容となっている。また、これらの内容を踏まえ2021年に「エネルギー基本計画2021年-2025年、ビジョン2050」と「電力開発計画2021年-2030年、ビジョン2045」(PDP8)が策定される予定である。
電力事情については、ベトナム政府が2019年11月に作成したVietnam Energy Outlook Report 2019(EOR2019)を参照する。ベトナムの2018年末の総発電容量は約49GWで、2018年の総発電量は約220TWhである。発電量の燃料別内訳を見ると石炭42%(ベースロード)、水力38%(ピークロード)、ガス19%(ミドルロード)その他-1%となっている。2016年3月に改訂された改訂版第7次国家電力開発計画2011年-2020年・ビジョン2030年(改訂PDP7)では、2020年の総発電量を265-278TWh燃料別内訳を石炭49%、水力25%、ガス17%、再エネ7%、その他2%と計画されているので、2018年末時点の達成率は総発電量が約79-83%となっている。燃料別の内訳では、石炭と再エネの未達分を主に水力とガスで補う形となっている。
更に、2030年の総発電量を572-632TWh、燃料別内訳を石炭53%、ガス17%、水力12%、再エネ11%、原子力6%、輸入1%と計画しており、石炭、原子力、再エネへの依存度が高くなっていることが分かる(表6参照)。しかしながら、計画されていた原子力(予定出力4,600MW)は2016年11月に廃案が決定しており、近年の石炭火力への融資が困難な状況を踏まえると、2021年に改正されるPDP8では再エネとガス発電の比重が高まると予想される。
3.2 ガスの需給状況・LNGプロジェクトの進捗状況
下の図はベトナム国内のガス中・下流事業を担当するPVNの子会社Petro Vietnam Gas Joint Stock Corporation(以下、PV Gas)が2020年12月の日米越LNGフォーラムで発表した2020年から2035年までの同国ガス需給見通しである。この資料から見て取れるように、旺盛な需要は持続的に増加するが、国内生産量は2026年以降減少に転じる見通しである。このギャップをLNGの調達で埋めるために、発電所を併設するLNG受入基地の建設が数多く計画されている。
PVNの子会社Petro Vietnam Power Corporation(以下PV Power)は現在2カ所の水力発電所(発電容量計:305MW)や1カ所の石炭火力発電所(発電容量:1200MW)と共にパイプラインガスや軽油を燃料とする2カ所のガス複合火力発電所(発電容量計:2700MW)の合計5カ所で発電量4205MWを運用中である。
PV Powerが現在計画中のLNGを燃料とするガスタービン複合火力発電所(以下LNG発電所)は、北部と南東部に建設予定である。
北部のQuang Ninh発電所は発電事業体自身でLNG受入基地を含めた発電所の開発・運営を行う計画である。2020年10月には、PV Power はLNG受入基地の開発・運営で世界的に実績豊富な東京ガスやIPP発電所の開発・運営で実績豊富な丸紅を発電事業体のメンバーに加え、地元機械組立業者のColavi社と4社で覚書を締結している。
南東部のNhon Trach 3・4号発電所は、2023年第4四半期にベトナム初のLNG発電所として商業運転開始予定であり、LNG受入基地はPV Gasが所有・運営する形式が採られている。
今後急増が予想されるLNG発電所の計画は、資金調達も考慮した事業形式が試されている。
3.3 日米越LNGフォーラム
現在日本政府は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けて、日米戦略エネルギーパートナーシップ(JUSEP)を推進中である。詳細は経済産業省資源エネルギー庁の以下サイトにて確認できる。https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/jusep/
2020年12月3日このパートナーシップの一環として日米企業によるベトナムにおける投資機会拡大及び3か国の官民連携強化を目的として「日米越LNGフォーラム」が開催された(オンライン会議形式)。
本フォーラムにおいては、日米越各国政府及びベトナムにおけるエネルギー事業(特にLNG分野)に関心を有する企業からのプレゼンテーションの他、同国におけるエネルギートランジションにおけるLNGの役割、LNG関連事業機会及び日米協力を進める上での課題や必要となる支援策について議論が行われ共同声明も発表された。共同声明の概要は以下のとおりである。共同声明の原文は経済産業省資源エネルギー庁の以下サイトにて確認できる。https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/jusep/pdf/20201204.pdf
日米越LNGフォーラム2020での日米越間共同声明概要
- COVID-19パンデミック後の経済回復及びGHG排出削減目標達成過程において現実的で実用的なエネルギー政策の重要性を認識
- エネルギー供給の安全性向上及び低炭素化転換支援におけるLNGの重要性を理解
- ベトナムのエネルギートランジションは化石燃料から再エネへの移行のみでなく、経済回復にも効果を有する手頃かつ信頼性・柔軟性のあるエネルギーに焦点
- JUSEP枠組におけるベトナムでの日米協力の重要性を認識
- 改訂PDP7及び策定中のPDP8に含まれるLNG案件がエネルギートランジションに果たす役割を認識
日米越LNGフォーラム2020での日米間共同声明概要
- 日米越が参加するベトナムLNG to Power案件及びLNGターミナル案件を支援
- LNGに係る重要政策(調達、供給、規制緩和、設備等)に係る情報交換
- 日米政府の知見・経験の共有及びベトナム民間投資の促進
- PDP8の目標実現に向けた支援
- ベトナムにおける人材育成支援
- 日米越の協力強化に資する投資課題・機会を反映した会合等の開催
おわりに
1975年4月、ベトナム戦争でサイゴンが陥落した際、ExxonMobilは自ら発見したベトナム最大の油田Bach Ho油田からの撤退を余儀なくされた。36年ぶりの同国でのディスカバリー(発見)は、同国最大のガス田Ca Voi Xanhガス田として開発計画の俎上にある。発見から約10年が経過する2020年、CVX統合エネルギー・化学プロジェクトの中心としてFIDに向け準備が進んでいる。CO2含有量の高い技術的挑戦を含むこの開発の推進は、Covid-19の世界的蔓延やマイナス油価、更にはEnergy Transitionで環境意識が高まるこの時代において、普通に考えれば困難な判断と思える。しかしながら、ベトナムにとっては国産資源を有効活用するために、また、CO2含有量が高い資源を有すると思われるExxonMobilのパートナーでもあるASEAN諸国にプラスのシナジー効果をもたらすためにも、経験の豊かな巨大メジャーの勇気ある判断と挑戦の行方が注目される。
以上
(この報告は2020年12月24日時点のものです)